新車試乗レポート
更新日:2019.05.24 / 掲載日:2018.12.28
EVレーシングカー、日産リーフニスモRCに試乗!
日産の電動技術をアピールするレーシングカー・リーフニスモRCが2代目に刷新。参戦するレースカテゴリーはないが、全6台が世界各地でデモランなどに活用される。その走りを富士スピードウェイのドリフトコースで体感した。
●文:山本シンヤ ●写真:奥隅圭之
LEAF NISMO RC_02[2018]

リーフのパワーユニットを流用し、ニスモのレーシングテクノロジーを注いで製作。ボディは新作のカーボン製モノコックで、リーフ譲りのEM57モーターを前後に搭載(前後出力配分=4:6~5:5)する。サスは前後ともにプッシュロッド式ダブルウィッシュボーンを採用。0-100km/h加速3.4秒、最高速度220km/hのパフォーマンスを誇る。
主要諸元●全長×全幅×全高(mm):4546×1942×1212●ホイールベース(mm):2750●車両重量(kg):1220●駆動方式:4WD●パワートレーン:交流同期モーター(120kW=163PS/320Nm=32.6kg・m)×2●タイヤサイズ:235/40ZR18
LEAF NISMO RC_01[2011]

バッテリー/モーター/インバーターをカーボン製モノコックボディにミッドシップ搭載し、後輪駆動化。市販車と同様の電池とモーターを搭載し、0‐100km/h加速6・9秒、最高速度150km/hをマーク。
主要諸元●全長×全幅×全高(mm):4446×1942×1212●ホイールベース(mm):2600●車両重量(kg):920●駆動方式:MR●パワートレーン:交流同期モーター(100kW=136PS/280Nm=28.6kg・m)●タイヤサイズ:225/40ZR18
2代目リーフニスモRCが登場
日産リーフの「電動化技術」とニスモの「レース技術」を融合させたテストカー「リーフニスモRC」の2代目(RC‐02)が登場。ルックスは量産車のリーフと共通性があるが、中身はカーボン=CFRP(炭素繊維強化プラスチック)製のレーシングモノコック&前後サブフレームを採用するレーシングカーだ。ドライブトレーンの主要パーツは量産車のリーフ用がベースとなっている。開発を担当したニスモの鈴木豊さんは「リーフの電動化技術をより厳しい条件でテストをするのもこのクルマのミッションの一つ」と語る。br> 初代(RC‐01)は1モーターをキャビン後方に配置して後輪を駆動していたが、RC‐02はシャシーの前後に2つのモーターをレイアウトするツインモーターAWD仕様。2つのモーターの合計出力は240kW/640Nmで0↓100km/h加速は3・4秒、最高速はリダクションギヤ付トランスファー採用で220km/hだ。
今回、4段階調整のスロットルレスポンスは最も穏やかなモードだったが、アクセルを踏んだ瞬間からドーンと立ち上がるトルクと強烈な加速感に思わずニンマリ。ハンドリングは車速が低いコース設定と市販ラジアル装着のため本来の領域では試せなかったが、見た目よりも乗りやすい操縦性とツインモーターを活かし駆動力で曲がる感覚の入口は体感できた。
個人的にはPRのためだけでなく、タイムアタックやジムカーナなどに実戦投入して、内燃機関とのガチンコ勝負で電動化技術を鍛えてほしいと思う。
灯火類の流用などで市販リーフの面影を残しながらフルカーボンボディに。車体寸法は初代RC_01から全長は100mm増、パワー・速度の向上に対応してホイールベースが150mm拡大。フロントの重量配分は2%増の43%に。

レーシングカーそのもののコックピット。タブレット端末やステアリングディスプレイを備え、車両-ピット間コミュニケーションやセッティング変更が可能となっている。

カーボンボディにカーボンで補強したロールケージを取り回し、レーシングバケットシートを装着。
フロント
前後共通のサブフレームもカーボン製で、重量はわずか26kg(先代はスチール製・35kg)。トレッドは先代の前後1750/1700mmから1723/1714mmとなっている。
リヤ

ブレーキキャリパーはブレンボ製。装着タイヤは公道走行可能なミシュランのパイロットスポーツカップ2だ。

カウリングは市販車の面影を残した造形ながら、CFRPで新作されたもの。

<鈴木豊氏>
リーフニスモRCを開発したのはニスモレース部ジェネラルマネジャー・チーム監督の鈴木豊氏。今回、試乗後のインタビューにも応じていただいた。
<BASE MODEL>NISSAN リーフ
●価格:315万360~403万2720円
航続距離や先進装備が向上
「ニスモ」もラインナップ
’17年9月発売の2代目は航続距離が400km(JC08)と倍増。アクセルペダルのみの操作で車速を制御できる「e-Pedal」や、操舵まで自動制御する「プロパイロットパーキング」を搭載。’18年7月に専用チューングレードの「リーフニスモ」(写真)が追加された。
<ガチEVレーサー>NISSAN フォーミュラE

日本メーカー初の参戦で技術アピール&開発促進
シーズン5からワークス参戦を行なう日産はフォーミュラEの歴史で最も成功をおさめた「e.dams」とタッグを組む。日本サイドは「ニスモ」がサポートするが、片桐隆夫CEOは参戦の意義をこのように語ってくれた。「マーケティングの部分で言うとレースというエキサイティングな場で『日産インテリジェントモビリティ』をアピールできるため、出ない理由はないです。技術的な部分で言えば、特にエネルギーマネージメントですね。バッテリーは全車同じなので、『いかに効率よく力を最大限に発揮できるのか?』を最もシビアな状態(=レース)で学べると思っています」。

規則上、バッテリーやシャシー等は統一だが、パワートレーンは開発が自由。2018-2019シーズンは新型のGen2シャシー(ダラーラ製)となる。

右から3番目がニスモの片桐社長。シーズン2/3を連覇したe.damsと組み、シーズン2のチャンピオンで元F1のS・ブエミ選手(左端)を擁する万全の体制で参戦する。