新車試乗レポート
更新日:2019.05.24 / 掲載日:2019.01.06
LEXUS UX 試乗速報&詳報
レクサスの最新プレミアムコンパクトSUV「UX」が、ついに日本の公道でデビュー! すでに海外では高い評価を受けているだけに、その実力はズバリ、期待以上。日本のプレミアムモデルの勢力図が塗り替わる、可能性大だ。
●文:川島 茂夫/山本シンヤ/編集部 ●写真:澤田和久/奥隅 圭之
LEXUS UX
●新型UX バリエーション&価格
●発売日:’18年11月27日
●価格帯:390万~535万円
●販売店:レクサス店
●問い合わせ先:0800-500-5577
UX250h “F SPORT”
■主要諸元(UX250h “F SPORT” AWD)
●全長×全幅×全高(mm):4495×1840×1540 ●ホイールベース(mm):2640 ●車両重量(kg):1630 ●パワーユニット:1993cc直4DOH(146PS/19.2kg・m)+モーター(80kW/188N・m) ●JC08モード燃費:25.2km/L ●燃料タンク容量(L):43[レギュラー] ●最小回転半径(m):5.2●最低地上高(mm):160
メリハリを利かせた出力特性 ハイブリッドでも走りは楽しめる
11月27日に開催された発表会では、「クリエイティブ・アーバン・エクスプローラー」というコンセプトをアピール。開発陣は、既存のSUVと異なる、新たな価値観を体感できるモデルであることを訴えていた。
LEXUS UX試乗インプレッション「SUVらしさは希薄だが上級コンパクトとしては、かなり優秀」
川島茂夫
レクサスの車種体系では、UXはCTの後継に位置するのだろう。CTはプリウスから発展したスポーツ色の濃いハッチバック。それゆえ、UXも相当スポーツへ偏ったクルマを想像していたのだが、予想外のウェルバランス型だった。ただし、SUVとしてバランスが良いという意味ではなく、乗用車として纏まりが良いという理由。実際、2Lのガソリン車はFFモデルのみの設定で、SUVモチーフのプレミアムコンパクトの印象が強い。ハイブリッド車に設定される4WDモデルは、プリウスと同じく後輪駆動に小出力の誘導モーターを用いた生活四駆型のE-Four仕様。最低地上高は160mmと雪路には十分だが、ラフロードを走るには物足りない。
それはキャビン設計にも現れている。基本プラットフォームはC-HRと共通。室内有効長もほぼ等しい。ただ、後席に座った印象はC-HRよりも快適である。レクサス基準の凝ったシートの恩恵もあるが、ピラーや天井の圧迫感が少ないことも大きい。頭上空間にも余裕があり、窮屈な印象は少ない。浅い荷室高は実用面のハンデにはなるが、後席まで含めたフル乗車時の適性もなかなか高い。
パワートレーンはハイブリッド、ガソリンとも新開発ユニット。ハイブリッド車は、C-HRに対してモーターを高出力型に変更。際立つ速さを感じさせる動力性能ではなく、全般的にはTHS-II車らしい運転感覚を示す。高速や登坂時の加速が向上した際はペダル操作と回転数を連動させたエンジン制御を行うため、上限の高回転に貼り付いた状況にならないため、余力感も高まっていた。
ガソリン車は低中回転域のトルク感が見所。浅い領域での踏み込み時の反応が良く、大きめのトルクを発生するので踏み込み量も少なくて済む。ダウンシフト時の急加速でも4500回転程度で済ませてしまい、5000回転を超えてもトルクの衰えはない。NA仕様にもかかわらずダウンサイジングターボを思わせる力感を示す。
フットワークは一言で済ませば「程よいスポーティ」。CTユーザーからは軟弱になったと言われそうだが、高速コーナリングでの安定性は高く、山岳路の操りやすさも同等以上である。さらに専用チューンとAVSが選べるFスポーツも無駄に荒っぽい硬さはなく、馴染める乗り心地で纏まっている。
SUVとして高く評価できる部分は少ないが、タウン&ツーリングを高水準でまとめたプレミアムコンパクトとしては十分な魅力を持つ。このクラスを検討しているユーザーにとっては、魅力的な選択肢になるだろう。
LEXUS UX試乗インプレッション「標準サスとは世界が違うAVS+Pダンパー仕様がUX選びの最適解だ」
山本 シンヤ
日本でも発売がスタートしたレクサスの末っ子クロスオーバーである「UX」。一応はクロスオーバーに属するが、実際は「個性的で機動性の高いハッチバック」と言ったほうが良いだろう。
まずパワートレーンだが、ガソリンはダウンサイジングターボ並みの実用域の豊かなトルク、NAならではの滑らかでレッドゾーンまでスッキリ回るフィーリングと、久々に「いいNAエンジン」に出会った印象だ。CVTもダイレクト感や応答性の良さ、変速追従性など「ここまで来たか」と言うレベルに来ている。ハイブリッドは十分な出力を持つエンジンにモーターが上乗せされた「電動ターボ」のような力強さを持っている。THS-II特有のラバーバンドフィールも抑えられ、日常走行のほとんどでハイブリッドを意識させない仕上がりだ。
フットワークは17/18インチ+コンベンショナルサス仕様は、バランスは悪くはないが「よりしなやかなC-HR」と言った印象で、明確な差は感じない。また、18インチのランフラットタイヤは、細かい振動吸収性の悪さも気になる。やはりオススメは、上級仕様のバージョンLにOP設定される18インチ(ランフラット)+AVS+リヤパフォーマンスダンパーの組み合わせ。ランフラットとは思えないアタリの柔らかさとストローク感が増したような足さばき、ヒラリと身をこなすフットワークの身軽さや動的質感の高さなど、ドイツのプレミアム御三家とは違うレクサス独自の”味“に仕上がっていると感じた。これがUXのベストだろう。
スポーティなFスポーツは、18インチが標準となり、AVS+リヤパフォーマンスダンパーはOP設定。ダンパーはバージョンLと同じ仕様だが、リヤバネとスタビが異なる。
その違いは「美味しい速度域」と「ロールの使い方」だ。バージョンLは街乗り領域からしなやか+ロールを活かして旋回するのに対し、Fスポーツは街乗り領域はやや硬めだが、速度が上がるにつれてフラット感が増し、ロールを抑えて曲がる印象が強い。個人的にはバージョンLはハイブリッドの4WD車、FスポーツはガソリンのFF車がベストマッチだと感じた。
仕様によって細かい差はあるが、走りに相当力を入れている。レクサスが目指す「スッキリと奥深い走り」を最も体現するモデルだ。ただ、一つ気になったのはロードノイズ。エンジンノイズや風切音がかなり抑えられているため、相対的に目立ってしまうのが残念だ。
久々に出会えた「いいNAエンジン」CVTの絶妙なマッチングも好印象
UX200
■主要諸元(UX200)
●全長×全幅×全高(mm):4495×1840×1540 ●ホイールベース(mm):2640 ●車両重量(kg):1470 ●パワーユニット:1986cc直4DOH(174PS/21.3kg・m) ●JC08モード燃費:17.2km/L ●燃料タンク容量(L):47[プレミアム] ●最小回転半径(m):5.2 ●最低地上高(mm):160
燃費も動力性能もハイブリッド車に分があるが、ガソリン車も同クラスではトップレベルの燃費。余力感とドライブフィール、加速感などを重視するドライバーならば、ガソリン車を選ぶ選択も悪くない。
パワートレーンは2タイプ設定 いずれもレクサス最新仕様を搭載
UXのパワーユニットは、いずれも甲乙つけがたい。どちらも燃費がいいのは当たり前で、「力強さ」と「気持ち良さ」を備える。なかなか悩ましい選択だ。
UX250hのパワートレーンは、新開発された2L直4DOHC+モーターのハイブリッド仕様。アクセル操作に俊敏に対応するリニアな加速特性を手に入れた最新仕様を搭載している。
ハイブリッド車(2L直4NA+モーター)
UX200には、174PS/21.3kg・mを発揮する2L直4NAエンジンを搭載。レクサス初採用となる発進ギヤ付きのダイレクトCVTが組み合わされ、力強い走りと低燃費を実現している。
ガソリン車(2L直4NA)
【エクステリア&パッケージ】
スタイリッシュなデザイン巧みなパッケージも見所
兄貴分となるRXとNXとの共通性を持ちながらも「小さなレクサスSUV」ではなく、UX独自の世界観を備えている。フェンダーのホイールアーチモールやボディの厚みでSUVらしさを演出しているが、コンパクトなキャビンに立体的なスピンドルグリルを含む、表情豊かなフロントマスク、引き締められ凝縮感の高いサイドビュー、そして塊感のある豊満なリヤビューと、スポーティハッチと言ってもいいくらいスタイリッシュに纏められている。さらにFスポーツは、専用バンパー(フロント&リヤ)、専用グリル、漆黒メッキアイテム、専用アルミホイールなどがプラスされる。加えて特徴的な形状のホイールアーチモールや左右一体型の翼形状のリヤコンビランプは、デザイン的なアイコンのみならず、実は操縦安定性にも寄与している。
ボディサイズは全長4495×全幅1840×全高1520mm、ホイールベース2640mmと、同クラスのライバルより小さめだが、最小回転半径5.2mの取り回しの良さ、そしてクロスオーバーSUVながら全高をタワーパーキング対応の1550mm以下の全高とし、コンパクトさをアピールしながらもサイズが肥大化しているモデルが多い中で、日本でも扱いやすいサイズを実現している。
F SPORT
全高は1540mmとタワーパーキングも考慮した設定。そのスタイルはSUVとハッチバックが融合した印象も強い。
Fスポーツ車は専用エアロパーツに加えて、グリルにも専用意匠が与えられる。
ホイール意匠は合計4タイプ設定される。Fスポーツ車には、LCの鍛造ホイールのスポーツイメージを継承する18インチを装着。
迫力感溢れる前後の意匠は、レクサスモデルらしいアプローチ。
全幅は1840mmとやや幅広に思えるかもしれないが、世界基準で考えれば、適正サイズだ。
version L
標準ボディ車も、力強さと躍動感を強調したデザインが踏襲されるが、フロントインテークやリヤディフューザーまわりの意匠は控えめ。
エアロスタイルでも、Fスポーツ車との差別化が図られる。
【キャビン&ラゲッジ】
小さな“プレミアム”を体現する上質感に満ち溢れたキャビン空間
インテリアはGS以降に登場したレクサスの特徴となる水平基調のインパネを採用。コクピット感覚は非常に強いものの、内と外の境界を曖昧にする造形手法を用いることで、視覚的な広さ感と見晴らしの良い視界性能を実現している。ドライビングポジションはアイポイントが高いが、着座姿勢は低め。何ともに不思議な感覚だ。
末っ子といいながらも各部の質感の高さはもちろんのこと、木目やアルミなど、いわゆる高級車の定番素材を使用せず、インパネには「和紙」、本革シートには「刺し子」をモチーフにした日本独自の美意識をイメージさせた加飾を採用。このあたりの塩梅は、世界でも勝負したいと願うジャパンプレミアムらしい演出だ。
居住性は運転席が特等席で、後席やラゲッジは必要十分なスペースに留まる。特にラゲッジはシュッと絞ったリヤデザインを優先したため、220Lの荷室容量は確保するものの、ゴルフバックはシートを倒さないと収納できない。これまでのレクサスであれば「あれもこれも」と欲張って中途半端になっていたが、「広さを求めるならNXやRXをどうぞ」と言う割り切り。最新レクサスらしい部分と言えるかもしれない。
F SPORT
Fスポーツ車にはステアリングやシフトなどにディンブル本革を用いるほか、アルミスポーツペダルなどで標準仕様系とは差別化。高級感と走りのイメージを巧みに融合している。
コンソール上部に配置されるモニターは、レクサスモデル共通の10・3インチの大型ワイドタイプを採用。Web連動機能を搭載する高性能ナビゲーションが標準装備される。
ドライバーの手が届きやすい位置にシフトレバーが配置される。ガソリン車はギア機構付きCVT、ハイブリッド車は電気式CVT(THS-II)と、いずれも最新仕様を搭載する。
欧州のプレミアムコンパクトを強く意識していることもあり、ソフトパッドやコンソール、ショルダーなどは丁寧な造り。レクサスらしい高級感を上手に演出している。
センターフロアコンソールに配置されるパッドコントロールの後方には、オーディオの操作スイッチが設けられる。直感的な操作もレクサスモデルに共通するコダワリだ。
シートはフロント優先の設計。Fスポーツ車のフロントシートは、ホールド性の高い一体発泡成型の専用スポーツシートを採用。
標準はL tex素材だが、OPで本革(写真)を選択可能だ。
ラゲッジスペースもSUVというよりもハッチバックに近い印象。通常時の荷室容量は220Lとなる。ただ、開口部は高さも横幅も十分な広さを持っている。
version L
上級グレードのバージョンLは、本革シートが標準装備。
写真は新規採用色のコバルト。
標準仕様系のシートも、背中と腰周りをしっかり包み込むサイドサポートが与えられている。
【メカニズム&装備】
最新シャシーは自信作 安全にも最先端が注がれる
パワートレーンは2種類が用意されるが、ガソリン車もハイブリッド車も、日本向けモデルとしては初導入となるユニット。ガソリン車は自然吸気の2LNAエンジン+ダイレクトシフトCVT、ハイブリッド車は、ガソリン車と同じ2L直噴エンジンにモーターを組み合わせるTHS-IIを搭載する。
プラットフォームはプリウスやCH-R、カローラ スポーツにも採用される「GA-C」がベース。ただし、高張力鋼板を最適配置したアンダーボディや左右ドア開口部とバックドア開口部の環状構造、レーザースクリューウェルディング、構造用接着剤の仕様部位の大幅アップなどが与えられたUX専用の設計が与えられている。
安全支援システムは第2世代となる「レクサスセーフティシステム+」を採用。単眼カメラ+ミリ波レーダーの構成は変更ないが、各センサーの性能が向上しており、プリクラッシュセーフティは夜間歩行者と自転車の検知が可能になった。機能もより充実しており、全車追従機能付のレーダークルーズコントロールと合わせてステアリング操作支援を行なう「レーントレシングアシスト(LTA)」や、道路標識を認識する「ロードサインアシスト(RSA)」などもプラスされている。
ハイブリッドシステム
高張力鋼板を主要骨格部に集中配置するほか、左右サイドドアとバックドアには環状構造、レーザースクリューウェルディングや構造用接着剤などを用いることで高剛性を実現。
THS-IIシステムは、モーターのアシスト量とエンジン回転数を最適化することでレスポンスと加速感を向上。トランスアクスルやバッテリー(ニッケル水素)なども刷新された最新仕様だ。
GA-Cプラットフォーム
サスペンションは、フロントはマクファーソンストラット式、リヤはダブルウィッシュボーン式を採用。共に新開発された最新の足回り設計を投入している。
フロント側にはサスペンションの付け根にボディ剛性を高めるパフォーマンスロッドを装着するほか、スプリングギアにもブレースを装着し、走行性能向上が図られている。
ダイナミックフォースエンジン
エンジンは、熱効率と環境性能を高めた、トヨタの次世代エンジン「ダイナミックフォースエンジン」を搭載。ハイブリッド車も専用チューンが施され、搭載されている。
Lexus Safety System +
ミリ波レーダー+単眼カメラで障害物を検知。夜間歩行者検知まで対応するプリクラッシュセーフティに加え、強力なステアリング制御機能のレーントレーシングアシスト(LTA)も標準設定。
走行中、ドアミラーでは確認しにくい後側方エリアに存在する車両を最大約60m後方までモニター。検知時はドアミラー内のインジケーターが点灯する。
道路とクルマ、あるいはクルマ同士が直接通信することで、運転を支援するITS Connect。バージョンL車には標準装備、他グレードはOP設定となる。
Direct Shift-CVT
ガソリン車のCVTは、プーリーとベルトに発進用ギヤを追加した最新型。従来のCVTのメリットである低燃費性も追求しながらも、力強い加速を楽しむことができる。
全貌が明らかになった レクサス その実力は如何に?
●新型UX グレード別 主要諸元&装備
丁寧に造りこまれた素性の良さが魅力 レクサス入門として万人にオススメできる
山本シンヤ
UXは分類上クロスオーバーに属してはいるものの、ユーザーの使い方やライフスタイルに合わせて様々な顔を見せる“マルチパフォーマンス”な一台に仕上がっている。レクサスの入口として扱いやすいボディサイズや取り回しの良さ、小さくても個性的でスポーティな内外装、そしてCT(=ハッチバック)が霞んでしまう素性の良い走りを含め、日本市場でも高い人気を集めるのは間違いない。レクサスはLC以降のモデルを「第3チャプター」と呼び、すでにLSやESが登場している。しかし、価格やキャラクターを踏まえると誰でも体感できるモデルではないのも事実だ。そういう意味では、UXは新世代レクサスを“身近”に体感できる初めてモデルだろう。
オススメグレードは?→ UX250h バージョンL
Fスポーツと悩むが、オススメはハイブリッドのバージョンLにOPの「NAVI・AI -AVS+パフォーマンスダンパー」と「マークレビンソン・プレミアムサウンドシステム」をプラスした仕様だ。UXの世界観を最も体現した一台と思う。
このクラスでは最上位に位置するが 価格が高めなことが、やや残念
川島茂夫
CTの後継であり、ハードウェアはC-HRとの共通点も多い。そうなればスペシャリティ志向コンパクトSUVを想像してしまうが、SUV性能を除けば予想以上にバランスのとれたモデル。荷物の積載性などの実用性から選ぶタイプのクルマでないにしても、日常もレジャーも過不足なく使いやすい実用性と走行性能にプレミアム&スポーティを上手にバランスさせている。C-HRがポストファミリー向けなら、UXはプレファミリー向け。2名乗車からの発展性や余裕を与えているのが特徴の一つだ。適応用途ではエクリプス クロスも被ってくるが、価格やプレミアム感も含めるとライバルとも言い難く、輸入プレミアムコンパクトがライバルになるだろう。
オススメグレードは?→UX200 バージョンC
予算に余裕があればハイブリッド車もいいが、UXの魅力は2Lガソリン車でも十分に味わえる。標準グレードから利便快適装備が充実しているが、安全装備の拡張性が制限されるので、バージョンC以上がオススメだ。