新車試乗レポート
更新日:2019.05.23 / 掲載日:2019.03.06
NISSAN INTELLIGENT MOBILITY 雪上試乗レポート
2月初頭に北海道・江別で開催された日産雪上試乗会。電動化パワートレーンを得意とする同社だけに、今回弊誌がとくに注目したのはリーフやノートe-POWER。電動だからこそ実現できた優れたドライブフィールの魅力をたっぷりとレポート!
パワートレーンの特徴が浮き彫りになるドライブフィール
雪道で際立つ電動の良さ 内燃機関車は楽しさが◎
冬季は雪道取材が増えるが、日産の主役はAWDではなくリーフやノート/セレナe‐POWERなどの「電動パワートレーン」だ。電動化と言うと、経済性や環境について注目されるが、実は走りにも大きく寄与する。その最大の長所が「低μ路に強い」ことだ。
実際に体感してみると目から鱗だった。低μ路発進時は「アクセルを踏む→タイヤがスリップ→VDCが作動」となるが、内燃機関車はVDCランプが点灯するだけでなかなか前に進まないのに対して、電動パワートレーン車はまるで路面が変わったかのようにスムーズに発進加速を行なう。
この差は何なのか? その秘密は「制御」の緻密さにある。モーターは流した電気の量に比例して駆動力を発生するので応答遅れがない。その特性を活かす1/10000秒単位でのトルク制御の効果が低μ路で威力を発揮するのだ。
また、話題のワンペダルも減速時に積極的に前荷重を利用してタイヤの接地性を上げる効果もある上に繊細なブレーキコントロール同等の制御を行なう。そのため、ドライバーはステアリング操作に集中でき、結果としてドライビングの安心感に繋がるのだ。
更にこの電動パワートレーンとAWDの組み合わせはまさに鬼に金棒だ。それがノートe‐POWERに設定されるAWDシステムだ。通常はFFで走行、車輪のスリップを検知するとAWDに切り替わる「オンデマンドAWD」だが、前/後輪は機械的に繋がっておらず後輪用モーターが駆動を行なう。ここでも電動化のメリットを活かした制御により、ドライバーが前輪の空転を感じるよりも早くAWDに切り替えが可能だ。実際に勾配のある坂道で体験してみたが、FFだと前輪が空転して登らない状況でもAWDはスリップひとつせずスルスルと登る。
ただ、日産のいい所は電動パワートレーンの優位性を訴えながらも、その一方で古典的な内燃機関モデルもシッカリ用意している点だ。今回はFRのフェアレディZと独立型トランスアクスルAWDのGT‐Rが用意されていたが、運転の楽しさや自分で挙動をコントロールする喜びは圧勝。どちらも車両重量は重いので無理は禁物だが、雪上での舵のききの良さや僅かな荷重変化に対するクルマの反応などコントロール性の高さを再確認することができた。
様々なモデルに乗った結論だが、各々のモデルがいい機能・システムを持っているが、それを集約させたモデルが存在しないのが残念である。もしかしたら、それが次期GT‐Rのヒントなのかも!?
リーフ
見た目よりも低重心な上にVDCの緻密な制御も相まって、まるで運転が上手くなったかのような安定した走りを実現する。NISMOは操舵時の正確性の高さとより安定したコーナリング姿勢を実感。個人的にはNISMOがノーマルだったら良いのにと思うくらい。
ノートe-POWER
モーターの特性を活かしたアクセル操作に対するレスポンスの良さを一度味わってしまうと、Zですらトロいと感じてしまうくらい(笑)。ただ、基本設計が古いシャシーは限界が来ているのも事実。せめてボディ補強を加えたNISMOがノーマルであって欲しい。
エクストレイル
シャシーの古さは感じるものの、奇をねらわずすべての操作に対して自然な挙動。低μ路であっても安心感が非常に高い。ただ、2L NA+CVTではパワー不足であり、ドライブフィール的にも時代遅れの感があるのも事実。e-POWERを搭載してほしい一台である。
フェアレディZ
すでに10年選手だがその実力の高さはいまだ健在。圧雪路では簡単にテールが流れるが、動きがおだやかな上にコントロール性も高いので、とにかく「楽しい!!」の一言。エンジン特性はピーキーだが、それをコントロールするのはドライバーの役目なのだ。
GT-R
車両重量の重さから無理は禁物だが、前後重量配分の良さも相まってコントロール性が非常に高い。余程の事をしなければスピンもしない安定性を備えている。マルチパフォーマンススーパーカーとしての実力は今でも世界トップレベルと言えるだろう。