新車試乗レポート
更新日:2019.08.15 / 掲載日:2019.08.15

遂に乗った!MAZDA渾身のSKYACTIV-X

MAZDA マツダ3 SKYACTIV-X搭載車(プロトタイプ・海外仕様)

走りを磨き、デザインを磨き抜いたアクセラ改めマツダ3。すでにその販売は開始されているが、唯一「10月発売予定」となっているのが注目のSKYACTIV-X搭載車だ。今回はそのプロトタイプ(パイロット生産車両)に乗ることができた。その走りを、しっかりとレポート。
●文:山本シンヤ●写真:マツダ

マツダ3 ファストバック:バリエーション&価格

他グレードとの価格差は、「究極の実用エンジン」に乗ることができる感動の対価

「究極の内燃機関」と呼ばれるガソリンの圧縮着火エンジンを、独自の燃焼方式「SPCcI(火花点火制御圧縮着火)」を用いて実用化に成功したマツダ。それが新型マツダ3に搭載される「スカイアクティブX」である。

日本仕様のスペックは発表されていないが、実は欧州仕様のスペックは公開済み。直列4気筒で排気量は1998cc、圧縮比はガソリン車世界最高レベルの16・3、最高出力は180PS/6000rpm、最大トルクは224N・m(約22・8kg・m)。燃費は5・8L(MT)<6・3L(AT)>/100km(WLTPモード・ファストバック)、CO2排出量は131(MT)<142(AT)>g/km(ファストバック)となっている。トランスミッションは6MT/6ATが選択可能だ。

日本ではすでに発売されているガソリン/ディーゼルに対して10月発売予定となっているが、今回一足お先にドイツ・フランクフルトでパイロット生産車両(量産同等仕様)に試乗してきた。

試乗前に内外装をチェック。基本的にはガソリン/ディーゼルと同じで、視覚的にスカイアクティブXだと分かるポイントは僅か。エクステリアはリヤの「SKYACTIV X」エンブレム、インテリアはセンターディスプレイに表示されるSPCcIのインフォメーション程度……。個人的にはスカイアクティブXを所有する喜びを視覚的にアピールする部分があってもいいと感じた。

スタータースイッチを押すと僅かなクランキングと共にエンジンが始動、静かにアイドリングを始めた。圧縮着火エンジンの第一印象は普通だ(笑)。走り始めると、全てにおいて自然で滑らかなフィーリングを感じた。具体的にはゼロ発進時にアクセル操作に対して素直にスッと前に出る応答性の良さは「ディーゼル」、常用域ではドーピング感が少ないフラットなトルク感は過給が控えめの「ライトプレッシャーターボ」、そしてレッドゾーン(6800rpm)までスッキリと綺麗に吹け上がるレスポンスの良さは「ガソリンNA」と、様々なエンジンの長所がシームレスに融合している。まさに「違和感のない違和感」である。

一般的に圧縮着火エンジンは音が厳しいが、スカイアクティブXはカプセル吸音などによる徹底的な遮音によりノイズ成分を大幅にカット、心地よいサウンドのみを残す。静粛性はガソリン/ディーゼルに対して高く、上級のマツダ6をも超えるレベルだ。

ちなみに走る/曲がる/止まる全ての領域でマツダは「究極の滑らかな走り」を目指しているが、スカイアクティブビークルアーキテクチャー採用のシャシーとのバランスはマツダ3ベストのパワートレーンと言っていいだろう。しかし、ライバルとなる小排気量ターボやハイブリッドと比べると、現時点では決定打に欠けるのも事実。

例えば、もう少し「力強さ」が欲しいと感じたし、走りと燃費のトレードオフの少なさは評価できるが、絶対的な数値ももう少し頑張って欲しい。またトランスミッションによって印象が異なるのも気になった。MTはスカイアクティブXの旨みを活かし小気味よく走らせることが可能だったが、ATはステップ比が広い上にビジーなシフト制御でスムーズさに欠け、「滑らかな走り」の実現に対して足を引っ張っている。やはり次のステップは多段化ではないか?結論、いくつか気になる部分はあるが、スカイアクティブXの全域でドーピング感のない力強さとフラットな特性は、例えるなら「究極の実用エンジン」だろう。

価格は314~362万円とガソリンより70万、ディーゼルより40万高め、単純なコストパフォーマンスでは不利なのは重々承知だが、筆者は「夢の扉を開けたエンジン」に乗れる感動にも価値があると思っている。皆さんはどのように考えるだろうか?

様々なエンジンの長所がシームレスに融合、「違和感のない違和感」だ

エンジンカバーには「SKYACTIV-X」の文字が輝く。遮音対策を徹底させ高い静粛性を実現。もう少し力強さがほしいと感じる場面もあったが、その「良さ」は十分に味わえた。

スパークプラグを圧縮着火のタイミングコントロールに使うというブレークスルー

ガソリンの圧縮着火の実用化の高いハードルは「燃焼可能な回転・負荷の狭さ」と「圧縮着火/火花着火の切り替え」の2点。マツダはこれまで火花着火の領域で仕方なく使っていたスパークプラグを、逆に圧縮着火のタイミングのコントロールに使うことで圧縮着火燃焼可能な回転・負荷を拡大させるとともに、燃焼の切り替えの完全な制御を可能にした。これがマツダ独自の燃焼方式「火花点火制御圧縮着火(SPCcI)」。まさにブレイクスルーの賜物だ。

マツダ3 SKYACTIV-X搭載車(プロトタイプ・海外仕様)主要諸元

  • 外観はリヤエンブレム程度、内装もセンターディスプレイに「SPCcI」の表示が出るくらいであり、基本的には他のマツダ3と変わらない。

マツダ3にベストマッチなパワーユニットは!?

  • 「コレがベスト!」SKYACTIV-X

  • 「ちょっと非力?」SKYACTIV-G 1.5

  • 「平均的すぎるかも」SKYACTIV-G 2.0

  • 「実用域のトルクが……」SKYACTIV-D

マツダ3のSKYACTIV-X(180PS/224N・m)以外のエンジンラインナップは、ガソリンが1.5L(111PS/146N・m)と2.0L(156PS/199N・m)、ディーゼルが1.8Lターボ(116PS/275N・m)を用意。ガソリン1.5Lは使い切る楽しみはあるが非力、2.0Lは必要十分だがパワー・トルク共に平均的、1.8Lターボは巡航してしまえば気にならないが実用域のトルクがディーゼルにしては薄い……などなど、どれも決定打に欠けるのも事実だ。そういう意味では、SKYACTIV-Xの全域で滑らか&バランスの取れたパフォーマンスはマツダ3とベストマッチングと言ってもいい。

ちなみに機構的にはSKYACTIV-Gが最も近く、「新形状ピストン」、圧縮着火をサポートする「超高圧燃料噴射システム」、より多くの空気を取り入れる「高応答エアサプライ」、高応答ISGを採用した「24Vマイルドハイブリッドシステム(Mハイブリッド)」、異常燃焼を制御するリアルタイム補正や「筒内圧センサー」などがプラスされている。

【結論】今後の進化・熟成に大きく期待!

現状のSKYACTIV-Xは基本素性の優れた原石で、磨き甲斐のある逸材だ。かつてロータリーエンジンがそうだったように、今後の進化・熟成で大きく化けると思っている。個人的には扱いやすく、動的質感が高く、官能性を備えるユニットなので、ロードスター用などのスポーツカー向けユニットにも発展しそうな気がしている。

提供元:月刊自家用車

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グーネットマガジン編集部

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