新車試乗レポート
更新日:2019.09.18 / 掲載日:2019.09.18
MAZDA マツダ3 公道300kmロングドライブリポート
公道300kmロング ドライブリポート

●文/川島茂夫 ●写真/編集部
正式発売から約2か月、ようやくリアルワールドでマツダ3の実力を試せる日が訪れた。試乗車はスカイアクティブXではなかったが、1.8Lディーゼルターボ車は最も売れている仕様だけに、その実力を計るにはちょうどいい。300kmドライブで分かった、真の実力は如何に?
マツダ3 ファストバック XD Lパッケージ 4WD

価格:315万1200円
全長×全幅×全高(mm):4460×1795×1440●ホイールベース(mm):2725●車両重量(kg):1470●パワーユニット:1756cc直4DOHCディーゼルターボ(116PS/27.5kg・m)●トランスミッション:6速AT●WLTCモード総合燃費:18.8km/L●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)/ディスク(R)●タイヤ:215/45R18

試乗した1.8Lディーゼルターボ車は116PS/27.5kg・mを発揮。先代モデルで設定されていた、最大トルクが40kg・m超えしていた2.2Lディーゼルターボのパワフルさは無いが、比較的高い回転域までパワーが伴う特性により、新たな走りの魅力を引き出している。域までパワーが伴う特性により、新たな走りの魅力を引き出している。
ACC&LKAはやや敏感 疲労軽減効果は薄めの印象
猛暑の報道が続く中、お盆期間の試乗となった。どこへ向かってもクルマは多く、高速で長距離ツーリングとか爽快な山岳路走行とか、マツダ車が得意とする状況は望めそうもない。やや渋滞が少なそうという理由もあって、房総エリアへと向うことにした。
この時期の高速道路は、渋滞がなくても平均車速が下がりやすく、加減速の変化も頻度も高くなる。「ならばACCだ!」である。燃費が悪化するので燃費計測を兼ねる際はACCを使わないことにしているが、今回は単独試乗でということなので、ACCの性能を一緒にチェックすることにした。
やはり混雑した道路ではACCにも厳しい。システムの読みの深さが反映されるのだが、マツダ3のACCはけっこう刹那的。設定速度や車間距離の維持精度が高いとも言えるが、前車が抜けた時や遅い集団に引っ掛かった時の加減速が強め。しっかり制御されるのだが、ちょっとドキドキしてしまうこともあった。
もうひとつの高速走行の強い味方、LKAも「ほどほど」の効果。LKAの操舵支援(半自動操舵)は55km/h未満では走行ライン制御、それ以上の速度域では逸脱防止という設定。混雑した状況ではこの切り換え速度を跨ぐような流れになってしまう。さらに高速域での車線逸脱予防の修正に入るのは区分線を踏むかどうかのタイミング。
ケアレスミスを防ぐには効果的だが、高速巡航中の疲労軽減効果は低めである。マツダ曰く「運転はドライバーが主体となるべき」との思想から、こういった制御となったそうだ。
走りの味付けは発想通り ファン・トゥ・ドライブ
マツダは、GVCを筆頭にドライバーの技量にかかわらずキレイな走りができる技術や制御の導入にはとても積極的だ。運転を意識しない運転しやすさと言い換えてもいい。マツダ3は操る手応えにこだわった味付けが強く、いわゆるファン・トゥ・ドライブを楽しむ味付けが強い。
操舵感覚は適度な重みを持ち、中立から定常舵角まで大きく変化しない。横Gに対しても同様であり、回頭感やラインに乗せやすい。その半面、直進中は中立の維持を意識的にする必要があり、神経質ではないが両手で保持する正しい運転姿勢と相性がいい。
操縦性は前輪の接地性と前後輪のグリップバランスの安定を主とし、横Gの加減による操縦感覚の変化は少ない。横Gが大きくかかるコーナリングでも操りやすく、思い通りのラインに乗せていける。無意識の集中力の高まりもあるのだろうが、ワインディング路のほうが気楽に思えたほどだ。
乗り心地は硬め。荒々しい突き上げや粗雑な振動は抑制されているが、スポーティを実感させる硬さがあり、これもファン・トゥ・ドライブを意識させるポイントだ。
新型から1.8Lとなったディーゼルターボは意外と広い回転域を使う。大トルクで巡航ギヤの維持範囲を広くするより、早めのダウンシフトにより加速の伸びやかさを演出した制御だ。高い許容回転数と滑らかな高回転はマツダのディーゼルユニットの特徴のひとつであり、これも操る手応えやリズミカルな運転感覚でも気分を高めてくれる。運転感覚で言えば、従来型の2.2LDターボ車より1.5LDターボ車に近い。


今回は横浜を起点に房総・九十九里エリアを目指すルートをチョイス。往路は首都高速湾岸線と東関東自動車道、東金道路で高速道路主体のテスト。九十九里付近からは一般道路をしばらく走り、その後、東京アクアライン経由で横浜に戻った。道中、渋滞に頻繁に巻き込まれるなど、燃費的には厳しい状況でもあった。

XD Lパッケージ(4WD)のWLTCモードの燃費総合:18.8km/L、市街地モード:15.7km/L、郊外モード:18.6km/L、高速道路モード:20.7km/L
START
7:00 横浜駅 付近
渋滞の影響を避けるたけにスタート時間は早めの7時に設定。横浜駅周辺はクルマも少なく、これなら大丈夫かも?と思ったのだが……。
7:45 首都高速 湾岸線 東扇島 付近
首都高湾岸線に入ったところで混雑が激しくなってきた。当初は東京アクアラインを渡ることも考えていたが、この時間ですでにうみほたる渋滞が発生。やはり甘くはない。
9:55 道の駅 みのりの郷 東金
結局、渋滞はディズニーランドのお膝元である舞浜付近まで続いていた。そこからはスムーズな行程だったが、想定していた時間より1時間以上遅くなってしまった。
11:00 九十九里有料道路 真亀PA
東金付近からは一般道を走る。九十九里浜は、有名観光地だけに海水浴客も多い。クルマの流れもゴー&ストップが頻繁で燃費面への影響が気になったが、案外悪くない数値だった。
13:40 いすみ鉄道 大多喜駅
当初は勝浦から木更津に抜ける山岳ルートを考えていたが、予定よりも時間がかかっていたためルート変更。山岳勾配が穏やかな大多喜経由で帰路につくことになった。
14:10 高滝湖 付近
風光明媚な高滝湖周辺は行楽客でいっぱい。アクアラインまで一般道路走りたかったが、クルマの混雑を考えて断念。最寄りの市原鶴舞ICから圏央道に乗ることにした。
GOAL
14:50 東京アクアライン付近
朝は大混雑だった東京アクアラインだが、木更津方面からという理由もあってスムーズな流れ。マツダ3のツーリング性能を測るにはもってこいのシチュエーションだ。
16:10 横浜 本牧 付近
もう少し市街路を走りたいという理由もあって横浜市街をしばらく走ることに。やはり休日の横浜は渋滞も厳しく、アイドリングストップも頻繁にかかる。燃費も一気に……。
16:40 横浜 元町 付近
目標としていた走行距離300kmを超えた横浜元町付近でゴール。途中、昼休憩を1時間ほど挟んだが、約7時間に及ぶテストドライブをなんとか終了することができた。
過酷な道路環境を苦にしない燃費性能はかなり優秀だ
公道での初の試乗ということで、道中は色々な機能をチェックしながら走らせた。当然、燃費には悪影響が出る運転もしばしば。しかも3名乗車で、猛暑でエアコン負荷も大きい。そんな理由もあって燃費はかなり厳しい数値になるかとも予想したが、301.7kmの平均燃費は20・33km/L。最良は高滝湖PAからアクアライン経由の横浜ICまでの区間で25・23km/L。最悪は信号停止も頻繁な元町界隈の市街地走行で12.33km/L。市街地や渋滞に弱いように見えるが、低速や発進停止の負荷よりもエアコン負荷の影響が大きいのだろう。
試乗を終えての印象は、マツダ3の持ち味は心地よいスポーティ感覚にある。加速やコーナリングの爽快さは、先代モデルとなるアクセラ・スポーツからかなり進歩している。操る手応えはゆったり気分のツーリングと相容れない部分もあるのだが、例えばロードスターのオーナーだったドライバーが、そのファン・トゥ・ドライブやテイストの犠牲を少なく実用性を求めるならば、マツダ3は格好の存在だろう。内外装デザインも含めてスポーティ&スペシャリティ志向が強いコンパクトカーだ。