新車試乗レポート
更新日:2019.10.25 / 掲載日:2019.10.25
【試乗レポート・マツダ マツダ2】デミオが世界基準のネーミングに。仕様変更でレベルアップ

MAZDA2
文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス
突然の車名変更で「デミオ」から改名した「マツダ2」。日本では馴染みのないネーミングだが、じつは海外向けは従来から「マツダ2」と名付けられていて、意外なことに「デミオ」と呼ばれていたのは日本国内のみ。「マツダ3」のようにフルモデルチェンジと同時でもなく基本設計はそのままの商品改良で車名を変えることに驚いたが、「マツダ2」という世界統一車名にしたと考えればわかりやすい。
余談だが、これまで日本で「マツダ2」ではなく「デミオ」だった理由についてマツダによると「日本では、日本車で数字の車名だとお客様にはしっくりこないと考えていた」とのこと。「アルファベット名の日本車が販売ランキングの上位にも入るようになった昨今なら、数字の車名も日本の消費者にも受け入れてもらえる状況になったと判断した」という。
MAZDA2はフラッグシップのMAZDA6に近い「大人顔」に変身

MAZDA2
そんなマツダ2、デミオからの変化でわかりやすいポイントがエクステリアだ。とくにフロントは一目瞭然で、バンパー下部を左右に貫くラインをはじめとし「マツダ6」に近い雰囲気になった。部品的にはヘッドライト、グリル、バンパーが新しいデザインで、フロントグリルは左右に広がり、ヘッドライトは上下が薄くなってシャープな顔つきへ、そして「シグネチャーウイング」と呼ばれるグリルの下から左右へ伸びてヘッドライトへ向かう飾りもより強調されている。
いっぽうでリヤスタイルはコンビネーションランプの内部デザイン(わかりやすいポイントはバックランプがLED化されたこと)とバンパー形状(“Sパッケージ”や“Lパッケージ”は下部にクロームの飾りも入る)が変更点だ。
また、足元は“Lパッケージ”用の16インチアルミホイール(他グレードの一部にもオプション設定)も新デザインを採用。光が当たると輝く高輝度塗装仕上げのこのホイールは、5本スポークをモチーフとしていないことがマツダとしては珍しい。
MAZDA2のインテリアはカラーコーディネートが大幅に変更

MAZDA2
インテリアは形状的な変更はないものの、カラーコーディネートが大幅に変わった。「Lパッケージ」にはブルーグレー/オフブラックのレザー、「プロアクティブSパッケージ」にはネイビーブルー/ブルーブラックのクロス、「プロアクティブ」にはブラウン/ブラックのクロスを新たに採用し、新しい空間を作り出している(「15S」と「15MB」はブラックを継承)。デミオの内装色はブラックやホワイトと分かりやすい色だったが、マツダ2のインテリアは深みを感じさせる。そして、グレードごとに異なるカラーコーディネートとしているのが新しいところだ。
多くのコンパクトカーはカジュアルな雰囲気や無難な雰囲気のインテリアカラーを備えることが多い。しかしマツダ2は、好き嫌いが分かれるかもしれないほどの個性的なコーディネートとしたことは注目すべきポイントだろう。
フロントシートは骨格から変更したMAZDA2。内部構造から刷新

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見た目では従来との違いが感じられないフロントシートも、単にポジションメモリー付きの電動調整機構が組み込まれただけではなく、じつは進化している。内部構造を変え、骨格をしっかり立たせて保持することを重視したのだ。骨盤を立たせるために背もたれにサポートを追加し、あわせて座面後方には骨盤を抑えるプレートを、座面前部はワイヤーの追加や座面構造のバネ同士のつながりを強固にし、着座位置が前にズレないように保持性能を強めている。実際に座ってみると違いはすぐに分かり、マツダ2はデミオよりも身体を包み込む感覚が強い。
マツダはドライバーに対してフットレストとアクセルペダルが左右対称になるレイアウトとし、コンパクトカーでは珍しくアクセルペダルをオルガン式と呼ばれる支点を下にするタイプとするなど運転環境の最適化に強いこだわりを持つメーカー。今回のシートの進化で、運転環境がさらに磨かれたのである。
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マツダコネクトがスマホに連携。Gベクタリングコントロールも導入

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機能装備としては車両に搭載する「マツダコネクト」と呼ぶディスプレイオーディオ(別売の地図データをセットすればナビとして使える)がスマホ連携機能のApple CarPlayやAndroid Autoに対応し、自動防眩ルームミラーも設定。エンジン関係では、減速時のエネルギーで充電して電気として活用することで実用燃費を向上する「i-ELOOP」と呼ぶシステムを従来のディーゼルエンジンだけでなくガソリンエンジンにも展開している。
そのうえレーダークルーズコントロールの作動範囲を、従来は速度が約30km/hまで落ちると機能を解除していたが、マツダ2では車速0km/hの状態(その先の停止保持はドライバーのブレーキ操作が必要)まで広げ、車線の中央を走るようにハンドル操作をアシストするレーンキープアシストシステムを設定。そして夜間に対向車や先行車両部分の光だけをカットしそれ以外の場所をハイビームで明るくするアダブティブヘッドライトの制御を細かくするなど先進安全支援システムも大幅に進化している。 もちろん、サスペンションの改良や「Gベクタリングコントロール」と呼ぶハンドル操作に応じてエンジンを制御して走りを安定させる機能へのブレーキ連携の追加など操縦安定性もさらに熟成された。
乗り心地はデミオ時代から大人っぽく進化。静粛性も上がった

MAZDA2
今回の車名変更に伴う大幅改良のポイントは、見える部分だけではなく、機能性、運転環境、安全性、快適性、走行性能、そして静粛性(天井の吸音性能を約35%も高めた!)と幅広い。注目すべきは、デミオからの進化が単なる車名変更に留まらず、全面的に商品力を引き上げていることだろう。そして、そこから感じるのは、マツダのクルマ作りに関する真摯な姿勢だ。
そんな真摯な姿勢は、乗ってみてより実感した。まず感じたのは、乗り心地と静粛性が高まっていること。乗り心地は従来モデルに対して突き上げ時のゴツゴツした感じが緩和され、落ち着きが増していた。乗り味は、どっしりと構えた、より車体の大きなクルマのような感覚に近づいた印象だ。 さらに従来の「デミオ」と新しい「マツダ2」を乗り比べて気が付いたのはハンドルの操舵感。軽快感が強かったデミオに対し、マツダ2はハンドルの手ごたえもその反応も、安定感を強める味付けへとシフトしていた。
変わったのは名前だけではない。上級モデルに通じる「マツダらしさ」を備えたMAZDA2

MAZDA2
そんな変化について開発者に尋ねてみたところ「デミオではコンパクトカーであることを考えて軽快さを表現していましたが、MAZDA2では“車体サイズは小さいけれど上級車種と同じマツダらしさ”を感じられるように仕上げました」という。
そう言われてみると、落ち着きを増した乗り味だけでなく、スポーティから上質感へと変化した外観デザインも、上級モデルかと思うようなインテリアコーディネートも、すべてが1本の線で繋がっているのだと納得できた。
「デミオ」から「MAZDA2」への変化は、単に商品力の向上に留まらず、クルマのキャラクターまでもシフトしたのだった。
マツダ MAZDA2 XDプロアクティブ Sパッケージ(6速AT)
全長×全幅×全高 4065×1695×1525mm
ホイールベース 2570mm
トレッド前・後 1495/1480mm
車両重量 1150kg
エンジン 直4DOHCディーゼルターボ
総排気量 1498cc
最高出力 105ps/4000rpm
最大トルク25.5kgm/1500-2500rpm
サスペンション前/後 ストラット/トーションビーム
ブレーキ前/後 Vディスク/ドラム
タイヤ前・後 185/65R16