新車試乗レポート
更新日:2020.06.26 / 掲載日:2020.06.26
新登場! RAV4 PHV 大解剖
’19年の発売から高い人気を誇るRAV4に、プラグインハイブリッド車(PHV)が追加された。2.5LダイナミックフォースエンジンにTHSII、E-Fourといったお家芸を盛り込んだパワートレーンに大容量電池を搭載して外部充電に対応。その走りをプロトタイプ試乗会で体感した。●文:山本シンヤ ●写真:奥隅圭之
TOYOTA RAV4 PHV
●発売日:6月8日●価格:469万~539万円●問い合わせ先:0800-700-7700人気のSUVがPHV化で魅力UP ’19年4月、一時海外専用車だったRAV4がTNGA採用の新型となって国内に凱旋し、一躍人気車となったのは記憶に新しいところ。そのRAV4にプラグインハイブリッドシステムを搭載した最高峰モデルが登場した。大容量電池を含むシステムを搭載しながら室内や荷室の空間はキープ。定評のあるベース車の長所をそのままに、新たな魅力を加えた一台だ。■主要諸元 ※オプションを含まず●全長×全幅×全高(mm):4600×1855×1695●ホイールベース(mm):2690●車両重量(kg):1920●パワーユニット:2487cc直4DOHC直噴(177PS/22.3kg・m)+フロントモーター(134kW/270N・m)+リヤモーター(40kW/121N・m)●トランスミッション:電気式CVT●WLTCモード総合燃費:22.2km/L●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F/R)●サスペンション:マクファーソンストラット式(F)/ダブルウィッシュボーン式(R)●タイヤ:235/55R19

■G
G“Z”
■ブラックトーン
【プロトタイプモデル試乗インプレッション】
環境&給電だけじゃない! 運転の楽しさも最上級だ

TOYOTA RAV4 PHVブラックトーン ●アティチュードブラックマイカ×エモーショナルレッドII ●539万円(+オプションカラー9万9000円)
RAV4は世界で年間100万台近くを販売。今やカムリを超えるトヨタの絶対的なエースの一台である。となると、電動化への影響も大きい……ということから追加設定されたのがプラグインハイブリッドモデルである。6月8日に発売されたモデルだが、タイミングの関係で試乗はプロトタイプ。とはいえこれは“ほぼ”量産モデルと考えていいだろう。クローズドコース(袖ヶ浦フォレストレースウェイ)での走行となったため、日常域だけでなく公道走行では難しい非日常域までチェックすることができた。まずはEVモードで走行。内燃機関と比べると電動化ならではのトルクの立ち上がり、アクセルを踏んだ際のレスポンスや滑らかなフィールは実感するも、電気自動車に多い「内燃機関とは違うでしょ!!」というモリモリ湧き出るドーピング的な力強さではない。モーターのみで0→100km/hを10秒以下で軽々走らせる力強さと瞬発力は備えているが、あくまでもドライバーのペダル操作に合わせて必要なだけ力強さが増していく印象だ。ガソリン車から乗り換えても違和感が小さいはずだ。ちなみにEVモードの航続距離はWLTCモードで95km。多くの家庭の1日の走行距離は100km以下という統計を考えると、日常生活はほぼ“EV”として活用できる……というわけだ。ただ、コイツの本当の凄さはEVモードではなくハイブリッドモードにある。モーターに加えてエンジンパワーがプラスされ、システム出力は何と306PS。0→100km/h加速は6秒と、実はトヨタ車の中ではスープラの次に速い!! アクセル全開での加速は、回せば回すほど力強さが増していき、見た目に似合わない想定外の加速力に思わず「おーっ、速い!!」と声が出てしまったほど。これはEVの皮を被った次世代パフォーマンスユニットと呼びたい。PHV化によりハイブリッド+200kg超の重量となっているため、強化されたシャシーとバッテリー搭載による低重心化、加えて新開発のショックアブソーバーなどを採用。ハンドリングは、重さを感じさせないRAV4シリーズ共通の軽快なハンドリング&フットワークと、逆に重さを活かしたシットリとした乗り味をバランスよく両立させたセットアップだ。ただ、欲を言うともう少しサスペンションやタイヤをオンロードに特化したモデル(GRスポーツ)があってもいいと思う。結論。RAV4 PHVはプラグインハイブリッドの使命である環境性能/給電性能だけに留まらず、ドライビングファンもプラス。つまり、RAV4の魅力を電気の力で加速させたモデルだ。そのマルチなパフォーマンスはRAV4シリーズのフラッグシップに相応しいキャラクターだと思う。
【メカニズム&性能】
ハイブリッドシステムの増強と各部の最適化で好燃費と高性能を両立
基本構造はハイブリッド・E‐Fourと同じだが、PHV用に各部が新開発されている。2.5L直噴NA・ダイナミックフォースエンジンはPHV向けに最適化され、178PS/221N・m→177PS/219N・mに。ハイブリッドシステムはバッテリーの大容量化(ニッケル水素→リチウムイオン/18.1kWh)、フロントモーターの出力アップ(88→134kW)、PCU、DC/DCコンバーターの変更などを実施。システム出力はハイブリッドの222PSに対して306PS、燃費はWLTCモード(総合)で20.6→22.2km/Lを達成している。充電は200Vの普通充電のみで急速充電には対応せず。この辺りは賛否があると思うが、開発サイドは「急速充電よりも、走行中にエンジンで充電する『チャージモード』の方が高効率で待ち時間も不要」と語っている。シャシーはTNGA「GA‐K」プラットフォームだが、ハイブリッド+210kgの重量増に対応するために、北米専売3列シートSUV・ハイランダー用をベースに開発。車両重量や前後バランス、重心などが変更されていることから、サスペンションはPHV専用セットアップを採用。新たに新発想のショックアブソーバー(摺動部に摩擦力を持たせた構造でカローラシリーズにはすでに採用済み)が奢られる。タイヤは18インチ(225/60R18)が基本で、19インチ(235/55R19)はブラックトーン用だ。

■プラグインハイブリッドシステム「Fun to Drive」を追求し、PCU、フロントモーター、充電器、リチウムイオン電池等を新開発。低燃費のみに留まらず、システム最高出力306PSの高性能も達成している。

40kW(54PS)のリヤモーターで後輪を駆動するE-Fourシステムを標準搭載する。

EV走行の利便性を向上させる電池冷却機能付きヒートポンプエアコン。エンジン停止時に省電力での暖房を可能とし、電池冷却機能で効率の良い電池温度を安定して維持できる。
充電ポートは車体右側後部に設置。付属のケーブルにより100Vまたは200Vの普通充電が可能。電池残量ゼロからの満充電時間は100Vで約27時間、200Vで約5時間30分だ。
ヴィークルパワーコネクターにより、充電ポートからAC100Vが使用可能。EV給電モードではエンジン停止状態での給電が可能で、電池残量や給電時間がメーターに表示される。
ボディ剛性を高め、PHV化にともなう重量増に対応

■高剛性ボディ・TNGA「GA-K」TNGAプラットフォーム(GA-K)を採用。大容量リチウムイオン電池は車体中央の床下に搭載され、さらなる低重心化、重量バランスの最適化を追求。優れた操安性を実現する。
■フロントサスペンション
■リヤサスペンション
前後サスはマクファーソンストラット/ダブルウィッシュボーン。ショックアブソーバーは摩擦特性と減衰力特性を最適化。不快な衝撃や振動を抑え、快適な乗り味をもたらす。
●18インチアルミホイール
●19インチアルミホイール
■ホイールPHV専用デザインのアルミホイールを標準装着。ブラックトーンは19インチの切削光輝+ブラック塗装、その他のグレードは18インチの切削光輝+ダークグレーメタリック塗装。
燃費も総合パワーもRAV4の最高峰

【エンジン出力 177PS】【エンジントルク 22.3kg・m】【WLTC 22.2 km/L】【システム出力 302PS】
■2.5L直4直噴ダイナミックフォースエンジンRAV4 ハイブリッドと同じ2487cc直4直噴・A25A-FXS型を搭載。ただしPHV化にあたって最適なチューニングが施され、エンジン単体でのカタログスペックは若干異なる。

セレクトダイヤルでノーマル/エコ/スポーツのモード選択が可能。カラー切替で選択中のモードが一目瞭然。
パワートレーンの違いまとめ

RAV4 PHVはRAV 4ハイブリッドの発展形とも言え、同時にPHVとしてはプリウスPHVに続くモデルでもある。関連する3モデルのパワートレーンを一覧にしたのが左の表で、ハイブリッドとプラグインハイブリッドの電池容量の違いが改めて目を引く。PHV同士で見ると、パフォーマンスなら断然RAV4 PHV、省燃費ならやはりプリウスPHVだ。

モーター走行のEV、エンジン+モーターのHV、自動切替のAUTO EV/HVの3モードを用意。
【エクステリア】

SUVらしいたくましさを感じさせるデザインはRAV4シリーズに共通。エモーショナルレッドIIはPHV専用色、2トーンカラーはブラックトーン専用色だ。
専用のデザイン/仕上げを要所に施し上級感アップ
プラグインハイブリッドはRAV4シリーズの最上級モデルも担っており、ガソリン/ハイブリッドのSUVらしさに加え、プレステージ性がプラスされている。 フロントマスクは専用のフロントグリルや金属調のロアグリル、LEDデイライトなどにより、スポーティさと先進性をアピール。また、RAV4を特徴づけるボディ全周のクラッディングは艶ありブラック塗装を施すことで、フラッグシップらしい質感もプラス。 ボディカラーは各色用意されるが、ボディ下部/ルーフ/ドアミラーをブラックでコーディネートする2トーンボディカラーはブラックトーン専用で、アルミホイールもブラックトーンにのみ19インチが装着される。

〈全長〉4600mm〈ホイールベース〉2690mm
〈全幅〉1855mm〈車重〉1900~1920kg
〈全高〉1690~1695mm〈最低地上高〉195~200mm
エッジの利いたフォルムはベースのRAV4と同じで、車体寸法もRAV4に準じるが、RAV4ハイブリッドとくらべて全高と最低地上高が5mm高く、車重は230kg重くなっている。なお、ガソリン車に設定されるワイルドなイメージのアドベンチャーはPHVには設定されない。

RAV4 タイプ別 見比べ比較
■ RAV4 PHV
バッジ類のほか、専用デザインのグリルやロアモールを装着し、全車のグラッディングとブラックトーンのルーフとドアミラーはアティテュードブラックマイカ塗装に。
■ RAV4
RAV4の標準デザイン車。ガソリン仕様/ハイブリッド仕様がラインアップする。
■ RAV4 アドベンチャー
タフイメージを高めたアドベンチャーはガソリン車のみで、高機能版4WDを標準搭載。
【インテリア&ユーティリティ】
スポーティかつ高級感あるデザイン。ユーティリティは通常のRAV4と同等
本的なデザインはガソリン/ハイブリッドと同じだが、エクステリアと同様にプレステージ性を高めてコーディネート。ブラックのモノトーンを基本にインストパネル/ドアトリム/ステアリング/シフトブーツなど各部にレッドステッチを施す。ややベタだが落ち着きとスポーティさは増している。加えてブラックトーンはヒカリモノ……クリアブルー照明のイルミネーテッドエントリーも装備。シートは全車スポーティシートでブラックトーンとG“Z”はキルティング意匠とレッドリボン加飾、Gはファブリック&レザテックが採用される。ちなみにPHV化で気になる居住性/ラゲッジスペースはハイブリッドと同等と考えていいだろう。

インテリアの基本デザインはRAV4シリーズ共通。メモリー付運転席8ウェイパワーシートと前後席シートヒーターは全車標準。G“Z”とブラックトーンは前席ベンチレーションや助手席パワーシート(4ウェイ)も標準装備する。
■ ブラックトーン
■G
ブラックトーンとG“Z”は上のスポーティフロントシート(合成皮革/パーフォレーション+レッドステッチ付)、Gは右のスポーティフロントシート(合成皮革+レザテック/レッドステッチ付)。レザーシートの設定はない。

大容量リチウムイオン電池は床下に搭載され、後輪駆動はコンパクトなモーターなので、荷室の寸法やアレンジに悪影響はない。AC100V・1500WとDC12V・120Wの電源を標準で備えている。

SUVらしくメカニカルなデザインのセンターコンソール。シフト脇にモードスイッチを配置する。
7インチディスプレイを中央に置く。ブラックトーンのみカラーHUD(ヘッドアップディスプレイ)も装備している。
ブラックトーンは18インチ、他は17インチの応急タイヤがオプションで用意される。
【装備&諸元】


■トヨタセーフティセンストヨタ最新の先進安全・運転支援機能を標準搭載。プリクラッシュセーフティは歩行者(昼夜)や自転車運転者(昼間)を検知対象に加えている。
■デジタルインナーミラー後方カメラの高解像度映像を9.6インチディスプレイに表示。荷物満載時も後方視界を確保。
■ディスプレイオーディオ9インチディスプレイを標準装備。オーディオやスマホ連携のほか、全周囲モニターの表示も。
■パノラマムーンルーフ電動でチルト&スライド。日射を和らげる電動サンシェードや挟み込み防止機能を備える。
まとめ&オススメグレード
PHVならではの満足感を重視して、最上級グレードを
筆者のおススメグレードはブラックトーンだ。価格は539万円と誰もが簡単に買える値段ではないのは重々承知だが、“特別”なRAV4に乗っていると言う歓びを視覚的にも感じさせるエクステリア&インテリアは魅力的。個人的には日常は「ほぼEV」、非日常はスポーツカー顔負けのパフォーマンスを備えた「パワフルハイブリッド」というRAV4 PHVのキャラクターを最も表しているグレードだと思っている。ちなみに補助金(エコカー減税、環境性能割、グリーン化特例、CEV補助金)を活用すると約42万円の優遇があり、残価設定ローンの残価率も高いので、月々の支払いは想像よりもリーズナブルな金額に抑えられるはずだ。
【オススメグレード】ブラックトーン

●価格:539万円
【VS アウトランダーPHEV】どっちが買い? ベストPHV・SUV対決
思想の違いと年代の差が歴然。アウトランダーは次期型期待だ
ライバルといえば、まずアウトランダーPHEVが挙がるだろう。確かに「プラグインハイブリッドのクロスオーバーSUV」というカテゴリーで見ればそうだが、その思想は大きく異なる。最も違うのが「エンジンとモーター、どちらが主か」だ。ざっくり言えばRAV4は「EV航続距離を伸ばしたハイブリッド」、アウトランダーPHEVは「発電用エンジンを搭載したEV(エンジン駆動を使うモードも有)」。EV航続距離(WLTCモード)を見ると、RAV4 PHVの95kmに対してアウトランダーPHEVは57・6kmとなっている。ともにリヤモーターを搭載する「電動四駆」で、どちらも駆動力制御を採用するが、あくまでも「自然な制御」を重視するRAV4 PHVに対し、S‐AWCを活用し「曲げる制御」を積極的に行なうアウトランダーPHEVでは、やはり考え方が大きく異なる。ベースとなるプラットフォームは、最新のRAV4に対してアウトランダーは初代(=2005年)から長年に渡って改良してきたもので、基本性能の差が大きいのも事実。ただ、アウトランダーPHEVは近い将来のフルモデルチェンジでプラットフォームを含めて大きく刷新されると聞いているので、本当の対決はその時までお預けだろう。
TOYOTA RAV4 PHV

●現行型発表日:’20年6月8日 ●価格:469万~539万円
最新基準のマルチな 高性能を求める人に
オン/オフ問わないバランスの良い内外装デザインやパッケージ、普段はEVの経済性や環境性能を実感しながらもアクセルひと踏みでスポーツカー顔負けのパフォーマンスも備えるパワートレインなど、マルチな性能を重視する人におすすめしたい。
MITSUBISHI アウトランダーPHEV

●現行型発表日:’12年12月26日 ●価格:393万9100~529万4300円
PHEVの初代が登場したのは’12年。’18年8月にはバッテリー容量の増加やS-AWCの機能向上などを実施。’19年9月の一部改良ではオーディオ/ナビ等をアップデートした。S-AWCのリニアな制御はモーターならではだ。
電動だからこその フィールを求める人に
内外装や基本性能に古さを感じるものの、モーターを巧みに活用しながら驚きのハンドリングを実現する4輪駆動制御や内燃機関とは明らかに異なるフィーリングなど、電動ならではの次世代感覚をひと足先に味わいたい人ならアウトランダーPHEVだ。


【カスタマイズ】

モデリスタが各種パーツを発売

RAV4 PHEVの発表と同時に、モデリスタブランドの純正カスタマイズパーツが発表・発売された。『URBAN SOLID STRIDER』をコンセプトに、エアロパーツや20インチアルミホイールなどにより、シャープで上質、都会的なアーバンクロススタイルを表現している。