新車試乗レポート
更新日:2020.09.04 / 掲載日:2020.09.04

【試乗レポート トヨタ GRヤリス】ついに発売されたGRヤリスはクルマ好きの救世主になるか

トヨタ GRヤリス

トヨタ GRヤリス

文●石井昌道、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス

 モータースポーツ用の車両を市販化するという発想で作られたGRヤリスが9月4日、ついに発売された。価格は265万円から456万円。GRヤリスは、市販車でありながらも、アマチュア競技から頂点であるWRC(世界ラリー選手権)に至るモータースポーツに参戦するためのベースマシンでもある。

 トヨタは、「世界の道がクルマと人を鍛える」という考えのもと、市販車を改造したマシンによって世界中の道で競い合うWRC(世界ラリー選手権)にヤリスで挑戦を続けている。本来ならベースとなるヤリスのフルモデルチェンジを期に、WRC用のマシンも新型ベースへと切り替わる予定となっていた。残念ながら新型コロナの影響により、ニューモデルの投入は2022年シーズンへと先延ばしとなってしまったが、今回発売されたGRヤリスはWRCでの勝利を目標に開発された、まさにサラブレッドだ。

 今回は、発売に先駆けてひと足早くプロトタイプモデルを試乗した、モータージャーナリストの石井昌道氏による試乗インプレッションをお伝えする。

クローズドコースで試したGRヤリスの実力

東京お台場にあるメガウェブではGRヤリス(写真左)に加えてヤリスWRC(写真右)も展示中

東京お台場にあるメガウェブではGRヤリス(写真左)に加えてヤリスWRC(写真右)も展示中

 WRCマシンを彷彿とさせるGRヤリス。1月の東京オートサロンでひと目惚れしてから半年以上経ってようやく試乗する機会を得た。しかも富士スピードウエイのショートコースにグラベルコースも用意されるという申し分ない環境だ。

272馬力を発揮する最上級モデルの「RZハイパフォーマンス」

272馬力を発揮する最上級モデルの「RZハイパフォーマンス」

 サーキットではRZとRZハイパフォーマンス、それにエントリーモデルのRSに試乗した。RZ系は新たに開発された1.6L直3ターボで272馬力、370NmとBセグメントには過激なほどのパフォーマンスを誇る。さらに、かつてWRCで活躍したセリカGT-FOURへのオマージュを込めてGR-FOURと呼ばれるスポーツ4WDシステムも組み込まれる。

3ドアハッチバックのボディや低い全高はWRCでの勝利を見据えたパッケージング

3ドアハッチバックのボディや低い全高はWRCでの勝利を見据えたパッケージング

  • 本格スポーツモデルでありながら、ディスプレイオーディオやプリクラッシュセーフティに代表される先進安全装備も採用

    本格スポーツモデルでありながら、ディスプレイオーディオやプリクラッシュセーフティに代表される先進安全装備も採用

  • フロントシートはバケット形状。RZハイパフォーマンスは、表皮がウルトラスエードと合皮のコンビとなる

    フロントシートはバケット形状。RZハイパフォーマンスは、表皮がウルトラスエードと合皮のコンビとなる

  • GRヤリスは、2ドアではあるものの2名分の後部座席を備える

    GRヤリスは、2ドアではあるものの2名分の後部座席を備える

ターボのクオリティは量産車最上クラス

パワートレインはレスポンスに優れ、エンジンの回転感もシャープだ

パワートレインはレスポンスに優れ、エンジンの回転感もシャープだ

 走り始めてまず感心したのが、ターボの悪癖がなく、低回転域からレスポンスがいいことだ。しかもトルクが図太く、高めのギアのままでも頼もしく加速していく。さらに吹き上がりもシャープで高回転域も得意。7000rpmまでまったく頭打ち感がないどころか、まだ回りそうなので意識していないとレブリミッターにあててしまうほどだ。エンジン本体の精度の高さや軸受けにボールベアリングを採用したターボなど量産車としては最上のクオリティのユニットであり、同クラスにライバルはいないと思うほどだ。

スイッチで走りのキャラが変わるスポーツ4WDシステム「GR-FOUR」

多板クラッチによる前後駆動力可変システムを採用したスポーツ4WDシステム「GR-FOUR」を搭載

多板クラッチによる前後駆動力可変システムを採用したスポーツ4WDシステム「GR-FOUR」を搭載

 4WD前後駆動配分はノーマルモードが60対40、トラックモードが50対50、スポーツモードが30対70。限られた走行のなかでいろいろと試してみたが、ノーマルモードは安定感があって扱いやすく、スポーツモードはFRチックで楽しめて、トラックモードは一体感が高くてラップタイム狙いに持ってこいといったところ。面白いのはBセグメントきってのパワフルなマシンながら、巧みな4WDシステムによって早めにアクセルを開けられるから、全開時間が長くとれることだ。さらに、RZハイパフォーマンスは前後にトルセンデフを持つため強力なトラクションがかかる。オープンデフでタイヤ銘柄も大人しくなるRZはタイム的には少し劣るものの、楽しさはある。グリップが下がった分、動きがわかりやすく、モード切替による挙動の違いもより明確だからだ。

2ペダル仕様のRSは「AT限定免許でも乗れる」GRヤリス

自然吸気1.5LエンジンとCVTを組み合わせる「RS」

自然吸気1.5LエンジンとCVTを組み合わせる「RS」

 RSはノーマルのヤリスと同じ1.5L直3NAエンジン+CVT。RZ系に比べればパフォーマンスは下がるが、動きは軽快で想像するよりはずっとスポーティ。街中やちょっとしたワインディングランには向いていそうだ。

モータースポーツへの参戦を後押しする純正競技用パーツも開発

競技用向けパーツも用意。GRロールバーはJAF公認競技にも出場可能なスペックで、なおかつ専用ピラーカバーなどにより室内の雰囲気を崩さないのも魅力

競技用向けパーツも用意。GRロールバーはJAF公認競技にも出場可能なスペックで、なおかつ専用ピラーカバーなどにより室内の雰囲気を崩さないのも魅力

 グラベルではラリー向けオプションを満載したRZに試乗。グラベルでもハンドリングはクイックで面白いように向きがかわり、リアが流れても不安感がなく、積極的に攻めようという気持ちにさせてくれる。エンジンのレスポンスがいいのも、こういったコースで強力な武器。ダートトライアルなどの競技が未経験でも、GRヤリスなら敷居の高さを感じずに入っていけそうだ。

  • 「RC」はモータースポーツ参戦用のベース車を想定したグレード

    「RC」はモータースポーツ参戦用のベース車を想定したグレード

  • 「RC」は、「RZ」をベースに、走りに関係のない装備を極力排除している

    「RC」は、「RZ」をベースに、走りに関係のない装備を極力排除している

市販車としても競技用ベースとしても、仕上がりはハイレベル!

 スポーツモデルとしても競技用ベースモデルとしてもハイレベルな仕上がりのGRヤリス。クルマ好きを増やしたいというトヨタの願いを実らせることになりそうだ。

発売記念オンラインイベント「GR YARIS ONLINE FES」を9月16日に実施

「GR YARIS ONLINE FES」VR試乗体験イメージ

「GR YARIS ONLINE FES」VR試乗体験イメージ

 GRヤリスの発売を記念したオンラインイベント「GR YARIS ONLINE FES」が9月16日の19時30分から21時(予定)で開催決定。モリゾー氏によるGRヤリスの走りをVRで体験できるコーナーや開発陣やプロドライバーとのQ&Aといったコンテンツが予定されている。イベントの詳細については、TOYOTA GAZOO Racing Webサイトで随時公開される。

TOYOTA GAZOO Racing Webサイト

GRヤリスのグレードと価格の一覧

GRヤリスのグレードと価格の一覧

トヨタ GRヤリス RZハイパフォーマンス(6速MT)

■全長×全幅×全高:3995×1805×1455mm
■ホイールベース:2560mm
■トレッド前/後:1535/1565mm
■車両重量:1280kg
■エンジン:直3DOHCターボ
■総排気量:1618cc
■最高出力:272ps/3000-4600rpm
■最大トルク:37.7kgm/3000-4600rpm
■サスペンション前/後:ストラット/ダブルウィッシュボーン
■ブレーキ前後:Vディスク
■タイヤ前後:225/40ZR18

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グーネットマガジン編集部

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また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
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