新車試乗レポート
更新日:2021.03.03 / 掲載日:2021.03.03
【試乗レポート レクサス UX300e】ブランド初のEVは出足が凄い!

レクサス UX300e
文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス
レクサスが自身初となるEVを本格導入した。UXをベースにしたUX300eである。“本格導入”と書いたのは、実は2020年に135台で限定発売したから。公式ウェブサイトで購入希望の申し込みを受け付け、抽選で販売を行った。
限定車からレギュラーで販売するモデルに移行したのは、ちゃんと理由がある。それはリチウムイオンバッテリーの供給問題。それが安定化したことで今回のレギュラー化に至ったと聞いている。購入から納車までの期間を長くしたくないという会社の方針に沿った計画だ。
ということで、カタログモデルとなった新型UX300eをテストドライブした。都内をグルグルまわったり、高速道路で鎌倉、湘南エリアへ足を伸ばしたりした。
UX300eのガソリンモデルとの違い

レクサス UX300e エクステリア
クルマの特徴は完全なEVであることで、フロントのモーターが前輪を駆って走る。言うなればFF。バッテリーを床下に並べ重心を低く設定するなどの工夫が施されている。鋼鉄製アンダーフレームの採用など、補強もしっかり行っているようだ。そのため車両重量はスタンダードモデルと比べると当然重くなる。お借りした300e バージョンLのスペック表では1800kgと記載されていた。ガソリンエンジンのUX 200 バージョンLが1500kgだからその差は歴然だ。価格はUX300e バージョンLで635万円。ハイブリッドを積むUX250h バージョンLが518万4000円だから、その差額は約117万円となる。

レクサス UX300e エクステリア

レクサス UX300e パワートレイン
レクサス UX300e インテリア
レクサス UX300e フロントシート
レクサス UX300e リアシート
レクサス UX300e ラゲッジルーム
レクサス UX300e ラゲッジルーム
レクサス UX300e ラゲッジルーム
従来のレクサス車から乗り換えても違和感のないフィーリング

ガソリン車と比較して300kgの重さを感じさせない俊敏な走りを披露する
だが、走り出すと正直それを感じさせない。モーターの出力がグイッと立ち上がりそのままシームレスに加速する。EVならではの加速が300kgの増加を帳消ししている。悪くない。ただ、高速道路の合流車線などで遠慮なく踏み込むと、合流はスムーズだが若干のトルクステアが発生する。FFの大排気量車のような挙動だ。個人的には許容範囲だが、気になる方もいらっしゃるかも。
それはともかく、バッテリーを極力低い位置に置いた車体の挙動は安定していて、コーナーも路面に吸い付くよう滑らかに走る。ロールを消すことでキャビンはフラットに保たれ安心感があるのがいい。また、連続するコーナーでステアリングを左右に切り続けても乱れることはない。嫌な揺り返しは感じられなかった。
回生はステアリング上のパドルで行う。4段階で変化させることでエンジンブレーキのような効果を発揮する。ETCゲートの手前で何度か使うと、イメージしていたように減速してくれた。EV試乗が増えたことでこちらとしても効率的に使うことができるようになった。
前述したように減速後からの加速は得意の領域で、リスタートはスムーズ。ガソリン車よりはるかに早く元の速度域に回復する。レクサス的にはガソリン車から乗り換えても違和感のないような味付けを目指しているようだが、そこは明らかに異なる。が、UX300eの直後IS300h、つまり、2.5リッター直4ガソリンユニットとモーターを組み合わせたハイブリッド車に乗ったら、その加速フィーリングは今回のEVに近いものだった。だとすると、目標はいいところまで来ているのかもしれない。
自動車ジャーナリストの九島辰也氏
レクサス UX300e 急速充電ポート
レクサス UX300e 普通充電ポート
充電システムは200Vに加えて急速充電にも対応

レクサス UX300eには、走行と急速充電を繰り返しても電池がオーバーヒートしないよう冷却システムが備わる
最後に実用性だが、自宅の200Vをデフォルトにサービスエリアでの急速充電もトライした。車体右に200V、左に急速充電のアダプターというように分かれているので、わかりやすい。操作もシンプルでストレスはないだろう。普通充電の充電時間は、車両付属のケーブルを使うと約14時間。30Aの普通充電器(スタンド)を使った場合は約7時間30分。
出掛けにケーブルを収納すると手が汚れてしまうが、コロナ禍でもありウェットティッシュを鞄に入れているのでそれを使えばOKだ。とはいえ、いつか非接触充電になって欲しいと感じた。疲れて帰ってきてケーブルを出すのは面倒だからね。充電状況は専用のアプリでチェック。残りのパーセンテージや時間がわかる。今回はオーナーになった気分でそれもダウンロードして試した。
先日ボルボが2030年に全モデルをEVにすると発表した。加速するヨーロッパメーカーのEV化。各国で諸事情があるだろうが、インフラを含め大きな視野でその動向を見ていく必要があるのを痛烈に感じる今日この頃である。
レクサス UX300e バージョンL
■全長×全幅×全高:4495×1840×1540mm
■ホイールベース:2640mm
■トレッド前/後:1550/1550mm
■一充電走行距離(WLTCモード):367km
■車両重量:1800kg
■モーター最高出力:203ps
■モーター最大トルク:30.5kgm
■サスペンション前/後:ストラット/ダブルウィッシュボーン
■ブレーキ前後:Vディスク
■タイヤ前後:225/50R18