新車試乗レポート
更新日:2021.07.14 / 掲載日:2021.07.05
NISSANの魅力大研究【1】新型ノート オーラ 先行試乗レポート
このところとにかく“日産”の動きが活発だ。旧経営陣による一連の不祥事からの名誉挽回ということもあるのだろうが、それはさておき、矢継ぎ早に発表されたニューモデルたちがとても魅力的なのだ。まずは、新型ノートの上級バージョンとしてさらにプレミアム感を高めたモデル、ノート オーラの先行テストドライブの模様をお届け!
●価格帯:261万300円~295万7900円 ●発表:2021年6月15日 ●問い合わせ先:0120-315232 (日産自動車お客様相談室)
ノート オーラ G レザーエディション(FF)●車両本体価格:269万9400円●ボディカラー:ピュアホワイトパール(3P)/スーパーブラック 2トーン<#XAB>(特別塗装色:7万1500円高)■主要諸元 ノート オーラ G レザーエディション(FF)●全長×全幅×全高(mm): 4045×1735×1525 ●ホイールベース(mm):2580 ●最低地上高(mm):130 ●最小回転半径(m):5.2 ●車両重量(kg):1260 ●パワーユニット:1198cc直3DOHCガソリンエンジン(82PS/10.5kg・m)+モーター(フロント:100kW【136PS】/300N・m【30.6kg・m】) ●トランスミッション:1段固定式 ●使用燃料・タンク容量(L):レギュラー・36 ●WLTCモード総合燃費:27.2km/L ●タイヤ:205/50R17
純電動ならではの爽快な走り。車格感がさらに上がった!
間違いなくクラス最高! ライバルはやはりノート
汎用性と経済効率の高い実用車が1.3L級2BOX車の本筋だが、ノート オーラはそこに分類すべきではない。立ち位置は国産車としては珍しい小さな高級(上質)コンパクトカーだ。シリーズ式ハイブリッドのe-POWERは回生協調型電子制御ブレーキが非採用ということもあってハイブリッド車相対の効率面でアドバンテージは少ないが、走りの車格感の向上で大きな可能性を示した。その象徴的な存在がこのノート オーラだ。 駆動は純電動だが供給される電力のほとんどはエンジンが発電。稼働頻度を抑えてはいるが、急加速では相応にエンジン回転数も高まる。そんな状況でもエンジン音は静かである。効率向上の結果としての排気音圧の減少や駆動系から独立したエンジンレイアウトなど静粛性で有利な面はあるにしても、同クラスのガソリン車はもちろんパラレル式とも段違いの静かさだ。車速変化とエンジン回転数の一致感は希薄なのだが、エンジン騒音そのものが小さいため、総じて気になりにくいのである。 加えてロードノイズ等のその他の騒音も上手く抑制されている。フロントフェンダー内に発泡スチロールの遮音材を挿入するなどノートの騒音対策に加えてノート オーラではルーフライニング等にも遮音材を追加。車外騒音も含めて静粛性が高められている。車外騒音対策の効果を確かめられる試乗ではなかったが、各種騒音をバランスよく低減しているのは理解できた。「騒音はモグラ叩き」と例えられるように、絶対的な音量が低くても部分的に突出していると体感的にはうるさく感じられがち。しかし、ノート オーラは体感騒音が低いのも特徴なのだ。 快適性のもうひとつの要点となる乗り心地も好感触。タイヤサイズをノートから205/50R17にグレードアップしているが、バネ下重量増や低扁平タイヤの難点を上手にカバーし、シャシー全体の剛性感が向上している。もっとも、ノート対比で言えば、ちょっとスポーティになった程度であり、乗り心地を崩さずに低扁平ワイドタイヤ化で外観のグレードアップを図ったと見るべきだろう。 乗り心地のもうひとつの要点は加減速時の挙動の落ち着きである。揺れ返しを抑えた安定感が印象的。とくに4WD車の出来がよく、車軸周りの揺動の抑えもレベルアップしている。一般的に4WD車のほうがトルク変動による挙動が抑えられる傾向にあるが、ノート オーラはその中でも4WDのアドバンテージを強く感じた。 駆動方式の違いによる差異は操安性にも表れる。ともに過剰な回頭を抑えて、僅かに深めの舵角で素直なラインコントロール性を維持するのは同様だが、高速域や加減速を伴う状況では4WD車のほうが操舵追従も収束も良好。なかでもコーナリング中の加速ではFF車は前輪のストレス増に伴い操舵追従性が鈍化するが、4WD車は高い追従性を維持。少しリヤを沈めた挙動が後輪への駆動力の掛かり具合を感じさせるあたり、出来のいいFR車のような感覚だ。 最高出力/最大トルクともに向上したパワートレーンもノート オーラの見所のひとつだが、ノートが低中速域では過剰なくらいの加速性能と洗練されたドライバビリティを有していたこともあり、同速度域でふつうに走らせている時の印象は大きく変わらない。ただ、速度が高まるとパワーアップの恩恵を実感させられる。 テストコース試乗ということで140km/h超までの加速性能を試してみたが、高速域の加速の鈍化が少なく、とくに80km/h以上の領域がパワフル。e-POWER車では高速域の加速性能が難点のひとつだったが、高速道路の制限速度120km/hへの引き上げ等を考慮しても実用性能面での車格感アップのポイントでもある。 ノート オーラ単体の試乗評価は、走行性能のクオリティにおいて現在のコンパクトクラスで間違いなく最高位。EV的走行感覚が云々という先進的イメージではなく、素の実力で評価できる。ダウンサイジングしても良質な走りにこだわりたいと考えるユーザーにとってまさに最良のモデルだ。 ただ、ノート オーラの試乗を終えて、その印象を整理していくと既視感にも似た感覚になる。ノート オーラの好印象の多くはノートの印象と近似的なのだ。高速動力性能の向上など実践力の向上も見られたが、冷静に評価するとその大半はノートにも共通する。ノート オーラの走りの質感の高さはヤリスHVやフィットe:HEVなどのライバルに対する強烈なアピールポイントだが、それはノートでも同じことが言えるのだ。 ノート オーラの評価はノートとのコスパや内外装の嗜好次第。志向や適応用途が被るので両車の選び分けは結構悩ましい。
6月15日にオンライン発表されたノート オーラ。高効率化とパワーアップを果たした第2世代のe-POWERを搭載し、内外装の細部にいたるまで「上質であること」にこだわったコンパクトカーとして登場。日産の”これから”を象徴する注目モデルだ。
4WDでこそ真価を発揮! 新e-POWERの実力
ノート オーラ G FOUR レザーエディション(4WD)●車両本体価格:295万7900円●ボディカラー:ミッドナイトブラック(P) <#GAT>(特別塗装色:3万8500円高)■主要諸元 ノート オーラ G FOUR レザーエディション(4WD)●全長×全幅×全高(mm): 4045×1735×1525 ●ホイールベース(mm):2580 ●最低地上高(mm):130 ●最小回転半径(m):5.2 ●車両重量(kg):1370 ●パワーユニット:1198cc直3DOHCガソリンエンジン(82PS/10.5kg・m)+モーター(フロント:100kW【136PS】/300N・m【30.6kg・m】、リヤ:50kW【68PS】/100N・m【10.2kg・m】) ●トランスミッション:1段固定式 ●使用燃料・タンク容量(L):レギュラー・36 ●WLTCモード総合燃費:22.7km/L ●タイヤ:205/50R17
4WDモデル試乗インプレッション
FRユーザーも満足! ダウンサイザー納得の上質な走りがここに 厳密に言えば車重が増えた分だけ動力性能と燃費が低下しているのだが、走りの質感や操り心地の面ではすべてでFF車を上回っている。乗り味では腰の据わりのよさやシャシー周りの振動抑制、操安面ではコントロール性と安定性の両立点が高まっていた。FRの上級クラスからの乗り換えユーザーにも納得の走りだろう。
136PS/30.6kg・mを発揮! 大幅にパワーUPしたe-POWER
制御により前輪用モーター性能を高めているが、後輪用モーターの出力はノート4WDと同じだ。バッテリー性能も同様のため基本動力性能はFF車とも大差ない。ただ、前後の駆動力配分を細かく制御しているのが大きな見どころ。減速側も含めて状況に応じて一瞬FR状態になるなど、アクセルペダルコントロールに呼応して前後の駆動力配分は常に変化。ベースのFF車に対して乗り心地や操安性の洗練度向上にも大きく寄与している。
軽快な走りのFFモデルも魅力たっぷり!
FFモデル試乗インプレッション
とにかくスムーズ! あらゆるステージでクラスを超えている 静かさとしゃくるようなトルク変動を抑えた加減速時の滑らかさが長所。とくにスナッチング等の揺れが出やすい軽量小型車では滑らかな加減速特性は大きなアドバンテージだ。タウンユースでの操りやすさと高速や山岳路での安心感を高水準で両立しているので、走りの質感のスウィートスポットが広いと評してもいい。
FF & 4WD 主要諸元比較
FFか? 4WDか? ノート オーラ選びの肝は駆動方式にアリ!
キャビンユーティリティや機能装備は並みのレベルだが、良質な走りはクラス随一。タウン&ツーリングを心地よく過ごすためのコンパクトカーを求めるなら最良のモデルのひとつ。ただ、ノートとノート オーラは特徴が被り、FFと4WDで走りの質感に差があるので、ノートシリーズから何を選ぶかはかなり難しい。高速域での余力を求めるならノート オーラを勧めるが、ノートとノート オーラのどちらを選ぶにしても走りのプレミアム性を求めるなら4WD車がいい。コストアップは生活四駆プラスαレベルだが、乗ればFF車の上位モデルを実感するはずだ。
●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之