新車試乗レポート
更新日:2022.03.17 / 掲載日:2022.01.10
新型ロッキー/ライズ一刀両断
e-SMART HYBRIDの走り&燃費を速攻チェック!!


クラス初のストロングハイブリッドを搭載し、新たな魅力を加えたロッキー/ライズ。
話題のe-SMART HYBRIDはもちろん、気になる新開発ガソリンエンジンも含めて公道試乗!
新型ロッキー/ライズの実力に多角的に迫ってみた。
●文:川島茂夫 ●写真:澤田和久
圧倒的コスパのHV、実力判定!!
HVもいいけど価格が…
そんな人に“刺さる”一台
車種数も含めてSUVの中でも伸び代と注目度が高いのがコンパクトSUVだ。ただし、上級クラスとはコンセプトが少々異なるのでその理解も必要になる。先日のMCでガソリンとハイブリッドの新パワートレーンを導入したロッキー&ライズはそんなコンパクトSUVを代表するモデルである。
SUVならではの高い全高を活かしたボクシーなデザインによって得たキャビンは、ひと回り大きなクラスと同等の広さを備え、タウンカーとしての経済性や取り回しと合わせて日常用途とレジャー用途を高水準で両立。アウトドア趣味向けというより、実用性重視の経済的コンパクトカーなのだ。
ハイブリッド車の導入でも費用対効果を追求して高効率の新型エンジンの採用と多様なモデルに展開しやすいエンジン発電+電動駆動のシリーズ式を採用した。同時にFFガソリン車を新エンジンに代替。ハイブリッド車は上級設定となるが、コンパクトSUVでは手頃な価格設定とし、経済的な実用車としての魅力を損なうことなく、先進的エコ性能を加えている。ハイブリッド車は欲しいが、必要な実用性に対して価格のハードルが高いと考えているユーザーには特に注目に値するモデルだ。

ロッキーとライズの違いは?
デザイン違いと考えてOK
違いはフロントバンパー〜フェンダー、バッジ類、内装の配色程度。装備にも特段の差はなく、選び分けは顔の好みで大丈夫だ。


公道試乗&燃費
e-SMART HYBRIDは実用域の弱点を上手にカバー
乗り味はガソリン車より1クラス上の落ち着きがある
ガソリン車はキャラ踏襲
HVはより大人向けだ
ロッキー&ライズは1ℓ3気筒ターボ+CVTでデビューした。コンパクトサイズやSUVを付加価値としてか、走りの志向は小気味よい運転感覚でまとめられている。シティランナバウトといった感じだ。ターボ車はMC後も4WD車専用でラインナップに残っているが、興味深いのは1ℓターボからNA1.2ℓになったFF車だ。発進時の蹴り出しや踏み増しの初期加速を誇張気味にした特性はターボ車とよく似ている。ユーザーの志向に合わせた特性なので対象ユーザーが同じであれば同系統の味付けになるのも当然。高回転加速の切れはターボ車に及ばず、巡航時の微妙なアクセル操作への反応が向上しているなどの違いがあるがよく似た特性である。
これに対して新たに追加されたハイブリッド車は志向がちょっと異なっている。電動ならではの即応性と連続感のあるトルクの立ち上げで、低中速域の加速や余裕はガソリン車を上回り、1.5ℓ級と比較しても遜色ない。油圧協調制御ブレーキ非装着のためエンブレ回生強化のSペダルを採用するが、緩減速のコントロールも比較的容易。加減速制御はペダルコントロールに忠実であり、洗練されたドライバビリティを示した。
ただし、高速域の急加速は苦手。巡航や緩加速での扱いや余力感は高速まで安定しているのだが、そこから深く踏み込んだ加速の上乗せが80㎞/hを超える辺りから鈍っていってしまう。逆に言えば、実用域ではシリーズ式や電気自動車ではありがちな難点を上手にカバーしているわけだ。
エンジンの稼働時間は長い。発進停止が頻繁な都市部はともかく、巡航がメインになると、大半はエンジン稼働走行になる。電気自動車感は損なわれるが、エンジン音も穏やかであり、バッテリー容量を抑えながら燃費とドライバビリティを高めた結果だろう。
パワーフィールと同様にフットワークもしなやか系で、ガソリン車に比べると切れ味や軽快感は控えめ。忙しさを感じさせるような挙動や反応が少なく、1クラス上のモデルを思わせる落ち着きがあった。ドライバビリティも合わせてツーリング適性を高めた大人っぽい味付けと言ってもいいだろう。
ハイブリッド車を追加してもロッキー&ライズの適応用途は大きく変わっていないが、走りの洗練感を高めたハイブリッド車の登場により、長距離用途や志向的な適応範囲が拡大された。もちろん、最上級グレード限定だがACC(全車速型)が装備されるのも、タウン&ツーリング両立狙いのユーザーには魅力的なモデルである。

主要諸元(ライズ Z・FF) ●全長×全幅×全高(mm):3995×1695×1620 ●ホイールベース(㎜):2525 ●車両重量(㎏):980 ●パワーユニット:1196㏄直列3気筒DOHC(87PS/11.5㎏・m) ●変速機形式:CVT ●WLTCモード総合燃費:20.7㎞/ℓ ●燃料タンク容量(ℓ):36 ●使用燃料:無鉛レギュラーガソリン●ブレーキ前/後:ベンチレーテッドディスク/リーディングトレーリング ●サスペンション前/後:マクファーソンストラット式/トーションビーム式 ●タイヤ:195/60R17

主要諸元(ロッキー プレミアムG HEV) ●全長×全幅×全高(mm):3995×1695×1620 ●ホイールベース(㎜):2525 ●車両重量(㎏):1070 ●パワーユニット:交流同期モーター(78kW/170N・m)[106PS/17.3㎏・m] ●発電用エンジン:1196㏄直列3気筒DOHC(82PS/10.7㎏・m) ●WLTCモード総合燃費:28.0㎞/ℓ ●燃料タンク容量(ℓ):33 ●使用燃料:無鉛レギュラーガソリン ●ブレーキ前/後:ベンチレーテッドディスク/リーディング・トレーリング ●サスペンション前/後:マクファーソンストラット式/トーションビーム式●タイヤ:195/60R17







車載燃費計参考燃費:23.7㎞/ℓ(ロッキー プレミアムG HEV)


好条件でなくとも
立派な数字を記録
高速と山岳路中心で、しかも合間に撮影も含む約280㎞。燃費にはあまりいい環境ではないが、それでも車載計の示した数値は23.7㎞/ℓ。やはり車速が低いほど伸びる傾向にあるが、山岳登坂もストレスなく走らせてこの燃費はタウン&レジャー向けと言えよう。
4WD車は1ℓターボを継続
ターボエンジンは出足を強調
悪路対応力もそれなりにある
落ち着きとか洗練感には乏しいのだが、発進等でのダッシュの利いた加速と切れ味いい軽快感はホットハッチと言わないまでもスポーティな運転感覚である。4WDシステムは電子制御カップリングを採用。本格悪路走行向けではないが、アプローチアングルなどの有利な寸法諸元もあって、コンパクトSUV相対では多少は悪路に強いほうだ。


デザイン
従来イメージを踏襲
ダイハツからシリーズ式ハイブリッド車の初登場となるも、ガソリン車との外観上の違いはグリルの造形や車名エンブレム色、「e-SMART HYBRID」のバッジ類などわずか。ボディカラーにHV専用色はない一方、ロッキー専用の赤、ライズ専用の青はこれまで通り。









装備/機能
ダイハツ最新仕様に
ダイハツの最新仕様ステレオカメラを採用するスマアシ(スマートアシスト)は、夜間歩行者検知など機能を拡充。電動パーキングブレーキを新採用し、旋回時の内輪をわずかに制動してラインを安定させるCTA(コーナリングトレースアシスト)を搭載している。




結論/まとめ
HVは上位クラスからの
移行でも満足度が高い
e-SMART HYBRIDの発表とともに、軽乗用への本格ハイブリッド車投入も表明された。本格ハイブリッドを軽乗用に採用するのは技術的には難しくないだろうが、価格面でも納得できる範囲に抑えるとのこと。その尖兵ともなるのがロッキー/ライズ。つまり、ローコスト設計が特徴だ。ちなみにヤリスクロスのガソリン車とハイブリッド車の価格差は約37万円、ロッキー&ライズは約29万円。WLTC総合モードによるガソリン車対比の燃費改善率はヤリスクロスに及ばないが、燃費値は同等。これでACC/LKA標準装着車が約235万円だ。価格差を燃費で取り戻すのは実質不可能だが、時代性も考慮して本格ハイブリッド車を狙っているなら、かなり魅力的なコスパである。
特にダウンサイザーは見逃せない。キャビンスペースから、元々ダウンサイザー適性は高かったが、ハイブリッドの採用と走りの洗練感の向上から、上級クラスから移行するユーザーに馴染みやすくなっている。走りの味わいはガソリン車とハイブリッド車の2系統構成と考えてもよく、走りの好みで選び分けられるのも見所。ハイブリッド車はガソリン車の上位車種的位置付けでもある。