新車試乗レポート
更新日:2022.02.16 / 掲載日:2022.02.15
【試乗レポート 日産 ノート/オーラ】氷上でわかったe-POWERの4WD性能と走りの個性

文と写真●ユニット・コンパス
ノートが売れている。日産にとって久しぶりの新型車だということに加え、その出来の良さが市場に認められ、2021年の年間販売台数は9万台以上。乗用車部門のランキングでも5位と健闘している。その大きな魅力が電動パワートレイン「e-POWER」と多彩なラインナップにあることは疑いがないだろう。
今回、日産による氷上コースを使っての試乗会に参加、改めてノートシリーズを同一条件で試乗することができた。e-POWERがどのようなメリットをもたらすのか、そしてノートシリーズがどのような走りの個性を持っているのかを改めて検証することができたのでお伝えしたい。

氷上でテストドライブをするメリットは、クルマの走行性能を安全かつわかりやすく体験できることにある。大雨や雪道などのすべりやすい路面で、クルマがどのようにドライバーを手助けするのかを疑似体験できる貴重な機会なのだ。そして、滑りやすい路面は、クルマが持つ走りのキャラクター、とくにハンドリング性能を剥き出しにする。出来不出来はもちろん、開発チームがどういう意図を持ってセッティングを施したのかを、まるで虫眼鏡で覗き込むようにして観察することができるわけだ。そんなステージを用意するということは、日産がそれだけノートのe-POWERとセッティングに自信を持っているからなのだろう。
【オーラ 2WDモデル】コンパクトカーならではの小気味いい走りが魅力

まずは2WDのオーラから。オーラはノートの上級モデルではあるが、走りのキャラクターとしては概ね同じ方向性にあるという。2WD(前輪駆動)のコンパクトモデルという多くのひとびとが選ぶスタンダードカーだけあって、走りのキャラクターは間口が広く、誰が運転しても扱いやすいと思える味付けになっている。その上で印象的だったのが軽快感。ハンドルの動きに対してクルマがスッと向きを変えるので、多くのひとが運転しやすいと感じるはずだ。
運転しやすさといえばe-POWERの恩恵も確かに大きい。アクセルペダルのON・OFFで加減速をコントロールできる「ワンペダル」なので、スピードを落としたいとアクセルから力を緩めれば、クルマがスムーズに減速に転じる。そのときの動きがなめらかなのでクルマの姿勢が安定するし、前輪にしっかりと荷重がかかるのでハンドルが効きやすい。
クルマの車重をなめらかにコントロールしタイヤの力を引き出すことは雪道を安全に走る極意なのだが、e-POWERはそれを自然とうながしてくれる。安心感があって、なおかつ思いどおりに動くことが爽快感につながる。ここはノートシリーズの全モデルに共通する美点だった。
【ノート 4WDモデル】あらゆるシーンで安心感を提供する頭のいい4WDシステム

続いては「e-POWER 4WD」を搭載するノート(4WD)。後輪用に50kW(68馬力)のモーターを搭載するe-POWER 4WDシステムは、路面状況に応じて前後の駆動力・減速力を緻密にコントロールするのが特徴。前輪がスリップしてから後輪が作動するのではなく、つねに4輪に力を伝えているタイプで、発進時からすぐに2WDとの違いを感じることができる。ラフにアクセルを操作したときに、2WDでは一瞬スリップを感じたのに対して4WDは何事もなかったかのようにクルマがスッと前に出るのだ。今回はテストできなかったが、雪の登り坂などではきっと心強いだろう。
さらに違うのが減速性能で、2WDと同じようにアクセルを離すとあきらかに短い距離で停止する。日産の実験によれば、アイスバーン路面で時速40kmで停止までの距離を比べた場合、4WDは約40%短い距離で停止することになったという。さらに車両姿勢も異なる。2WDが前のめりになるのに対して4WDではよりフラット傾向で、視線の動きも少ないからより安心感がある。
なによりもコーナリングとそこからの脱出がいい。前後の駆動力を自在に調整するe-POWERのおかげで、頭のなかにイメージしたラインに沿ってクルマが走ってくれる。
【オーラ 4WDモデル】安心感をキープした上でクルマを操る楽しさも提供してくれる

オーラ(4WD)は、乗り味がしっとりと上質で静粛性に優れているため、大人っぽい印象を持つかもしれないが、じつは走りの楽しさでもノートを上まわる。20馬力アップしたフロントモーターと幅広くなったトレッドで、コーナリングの限界と自由度がさらにアップしている。氷上ではパワー差は吸収されてしまうが、それでも腰の座ったハンドリングは魅力的。当然、ドライ路面では爽快感に差がつくだろう。たとえばコーナー出口付近では、アクセル操作に敏感に反応し、後輪がクルマを前に押し出すFRマシンのような感覚も味わわせてくれるのだ。これは氷上だけでなく、普通の一般道での試乗会でも同じような感想を味わうことができた。ドライビングを積極的に楽しむタイプのドライバーには、ぜひオーラの4WDモデルを試してもらいたい。
【ノート オーテッククロスオーバー 4WDモデル】単なるSUV風味では終わらないドライバー志向のフットワーク

意外な伏兵だったのが、オーテックが手掛けたノート オーテッククロスオーバー(4WD)。25mm高められた車高を持つSUVテイストのモデルなのだが、じつはこれが走らせても面白い。
ノートシリーズの走りは、他社のコンパクトカーと比較すると全体を通じてドライバーに操る余地を残してくれている傾向があるのだが、オーテッククロスオーバーではそれがさらに拡大されている。
これはクローズドコースだからこそ試せた話ではあるが、荷重移動を適切に行えばコーナーで慣性ドリフトのような形で向きを変えることまでできてしまう。もちろん、車両は状況をモニタリングしていて最終的に横滑り防止装置が働きスピンは回避される。ドライバーが意図しているのか、意図していないのかを見極めるのが上手という表現がふさわしいのかもしれない。つまり、オーテックが目指すのは、安全性や利便性を確保した上で、より運転を積極的に楽しめるクルマなのだ。
【オーラ NISMO 2WDモデル】ドライバーを熱くさせる電動化時代のスマート・ホットハッチ

最後に残ったオーラ NISMO(2WD)は、言うまでもなくシリーズ最高峰のドライバーズカーだ。
ステアリングから伝わってくる情報の質や量が段違いで、なおかつ余計な振動はカットされているため、ドライバーは路面状況を冷静かつ的確に判断できるのがまずひとつ。さらにサスペンションは、ハードでありながらも終始動きタイヤを路面に押しつけ続けるため、グリップ力が急激に変化することもない。専用セッティングされたe-POWERも塩梅が絶妙だ。アクセル操作への反応はいいのに、クルマの動きに過敏なところがなく、まさに思いどおり。ツルツルのミラーバーンと凸凹の圧雪が猫の目の様に目まぐるしく変わる氷上コースであっても、最後まで楽しみながら運転することができた。
まるでFR車のような動きを味わえるe-POWER 4WDも魅力的だったが、運転好きにオススメしたいのは、2WDならではのすっきりとした乗り味をさらに磨き上げたオーラ NISMO。欧州製ホットハッチにも負けない逸品だとおもう。
半日にわたり氷上で試乗を行っての実感だが、e-POWERとe-POWER 4WDの魅力は制御の介入があくまでも自然なところにある。いずれのシーンでもクルマが勝手に動くような不自然さがなく、ドライバーの意思を読み取るように動いてくれるのだ。そしてモデルごとに走りのキャラクターをしっかりと作り込んでいるところにも日産のこだわりを感じた。単なるデザインや装備違いではなく、それぞれが独自に走りの世界観を持っていて、それをドライバーが実感できるというのはとても嬉しいこと。従来モデルから乗り換えたユーザーは進化に感動し、より大きなクルマから乗り換えても満足できるクルマ、それがノートシリーズなのだ。