新車試乗レポート
更新日:2022.03.16 / 掲載日:2022.03.01
新型ノア/ヴォクシー徹底チェック【1】試乗リポート
7年ぶりにフルモデルチェンジした新型ノア&ヴォクシー。事前情報でも凄いと言われていたが、試乗した印象は予想以上だったのだ。
●文:川島茂夫 ●写真:澤田和久
新型ノア/ヴォクシー試乗リポート
ドライバーの負担を低減する
次世代装備が充実
新型ノア&ヴォクシーには、多くの先進機能が採用されているが、今回の試乗でもその恩恵を感じることができた。その代表例として挙げたいのが、走行時の状況(車間距離や路側歩行者、コーナーなど)に応じて、減速や回避操舵を支援するプロアクティブドライビングアシスト(PDA)だ。老婆心機能といった印象も多少はあるが、さまざまなシーンでかなり有り難い。補正の強度は3段階で設定できるが、気に入ったのは最も強いモード。省燃費の丁寧運転とは相性がいい。
都心部では信号の待ち時間を表示するITS機能のチェックもできた。死角になりやすい交差点などでは接近車両警報も便利に思える。慣れた道とはいえ先読みしてくれる注意が嬉しい。
これらドライバーの負担を軽減する機能は、大技かまして唸らせるようなものではない。ただ、細かく介入したり、注意喚起をしてくれるのが、意外なほど心強い。「転ぶ前に杖!」が、自然に備わっていることが、新型ノア&ヴォクシーの優しさだ。
もう一つ、注目したい装備はスライドドア連動のサイドステップ。本来、この手の装備は電動と組み合わせることで相応の価格になるものだが、スライドドアの開閉の力を巧みに利用することで低価格を実現。助手席側パワースライドドア装着全車だと3万3000円高で装着することができる。あれば便利だけどOP価格やグレードの制限で二の足を踏むような装備も現実的価格で狙えるわけだ。
快適重視の優しい乗り心地
ベストは16インチ装着車
肝心の走りの実力だが、全車に共通する長所が乗り心地の良さ。路面うねりや横Gを長めのストロークで往なすタイプで、リヤサスの沈み込みも上手に使い、ロール時の前下がり感も少なめだ。ストローク速度は抑え気味であり、揺れ返しを意識しないで済む。コーナリングや車線変更で横に揺すられる感覚が少ないのは、山岳路や高速の快適性のポイントになる。
さらにタイヤのサイズ違いの差も気になった。16インチホイール(60タイヤ)仕様に比べて、17インチ(55タイヤ)仕様の方が細かな段差に神経質で、車軸周りの振動も目立つ。サスとの相性は16インチ仕様のほうが一枚上手だ。
ハンドリングは前輪周り、特に中立や固定舵角時の据わりがイマイチ。挙動に不安感はなく、好意的に解釈すれば軽快と言えないこともないが、もう少し腰の据わった感覚が欲しい。この辺りはライン制御型LKAやPDAの機能でカバーされるので、運転支援込みの操安設定とも理解できる。
ガソリン車もパワーアップ
ハイブリッド一辺倒にあらず
パワートレーンと駆動方式の組み合わせとしては、ガソリン車のFF、ハイブリッド車のFFと4WDを試乗したが、ガソリン車は必要十分、ハイブリッド車はさらに余裕がプラス、という図式は従来型と同じだ。
しかし、ガソリン車の余力感や加速のキレは明らかに向上している。巡航ギヤの維持力も若干高まったが、ダウンシフトを併用する加速応答性が印象的。変速による回転数の変化は穏やかで、回転上昇自体も抑え気味。悠々とまではいかないまでも、高回転の使用時間は短縮されている。運転感覚も1割くらいトルクアップした感じだ。
ハイブリッド車もかなりパワフルだ。加速反応の良さもあるが、早めにエンジン回転を上げて加速に余裕を持たせた印象が強い。巡航に入ればすぐに回転を抑えてくれる。エンジン回転数の変化が頻繁だと忙しく思えるのだが、その手前で制御するのが絶妙で、ドライブフィールの小気味よさも向上している。
E-Fourは低中速域では後輪モーターを加速や回生で積極的に使う。FF車の制御の巧みさもあり、加減速挙動や操縦性への目立った影響は確認できなかったが、4WD車の燃費低下抑止に効果があるのは、モード燃費を見ても明らかだろう。また、メーター読みのざっくりとした確認では60㎞/h以上では後輪駆動系は作動しなかったが、誘導電動機を使用する簡易型E-Fourに対して、ノア&ヴォクシーが採用した新システムは一般的な雪上走行のほぼ全域で駆動アシストが可能ということになる。
リリースレベルでも「新世代突入」の感を強く思ったが、実際に試乗してみると先進機能も含めて、生活レベルの使い勝手にまで練り込んで実践力を高めていることが分かった。新型ノア&ヴォクシーの登場で、ミニバンのスタンダードの基準が、大きく上に動くのは間違いなさそうだ。
【ハイブリッド】1クラス上の動力性能。走り重視で選ぶのもあり
ヴォクシーハイブリッドS-Z
燃費向上だけが特徴、と思わせないのが新型のハイブリッド車だ。短距離高速走行と頻繁な信号停止も含むメーター読みの燃費は19㎞/ℓ超。これも立派だが、印象に残ったのは加速のキレのよさ。滑らかで力強く、高速加速も良好。1クラス上の余裕を感じられた。燃費だけでなく動的にも上級設定を実感できる走りが楽しめる。
【NA】従来型からジャンプアップ。十分主役を張れる実力車
ノア S-G
1.6t級の車両重量に2ℓNAエンジンは余裕がなく思えるが、それを意識させないように微小踏み増し時の反応の向上や急加速時の加速の過渡特性を巧みに制御。非力感少なく、扱いやすい実践力が強化されている。穏やかな乗り心地やPDAの介助もあり、ドライバーも含めて家族や友人との和みのドライブが楽しめる特性となっていた。