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更新日:2017.12.07 / 掲載日:2017.12.07

【旧車趣味】日産 サニートラック その1

荷物を運べる経済的なトラックとして生まれたサニー・トラックだが、実はいじって遊べるクルマとしても人気が高く、草レースの常連としても有名な存在。良質の個体ともなると、旧車としても大きな注目を集めている。

●取材協力:ドンズギャラリー
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〒252-0816 神奈川県藤沢市遠藤2955-1 
http://www.dons-gallery.com 

 日産初の小型大衆車としてサニーがデビューしたのは1966年2月。当初はボディタイプが2ドアセダンのみであったが、翌年の1967年2月にピックアップトラックが追加された。これが初代のサニー・トラックとなる。2ドアセダン用モノコックボディをベースに、後ろ半分を荷台に変更した、荷台部分が分離していないピックアップトラックで、荷物の積み下ろしを行うアオリ扉は後端部にだけ装備した一方開というスタイルになっている。
 搭載エンジンはサニー用に新開発された水冷直列4気筒OHV988ccのA10型を搭載。最高出力は56ps/6000rpm、最大トルク7.7kgm/3600rpm。トランスミッションは3速マニュアルのコラムのみであった。
当時はまだ一般の庶民が自家用車を持つのは贅沢だった時代。仕事にも使っている商用車を自家用として所有するユーザーも多く、乗用車ライクなバンやピックアップトラックがもてはやされた。ちなみに当時の価格は東京・名古屋・大阪の店頭渡しで36万5000円。
 サニーは1970年1月にフルモデルチェンジされ、それに伴いサニー・トラックもフルモデルチェンジとなった。2代目のサニー・トラックはB110サニーの2ドアセダンがベース。パワーアップした1200ccエンジンの搭載や、ストラット式のフロントサスペンションを採用して、大幅に向上した乗り心地などにより、先代を上回る人気となった。この2代目モデルはその後のサニーがモデルチェンジされてもB110ベースのまま生産が続けられ、変更を繰り返しながら1994年まで生産された。
 1990年代初頭といえばまだバブルの真っ最中。自動車業界も大いに盛り上がり、次々と新型車が発表されていた時代。日本中が好景気に湧いていた印象だが、こんな時代でも一部を除いて若者はビンボーだった。R32やS13、AE92を横目で眺めながら、10数年落ちのB310サニーやTE71でカーライフを楽しんでいたビンボーな若者たちが目をつけたのがサニー・トラックだった。B110をベースにしているので多くのチューニングパーツが流用でき、中古市場では数万円で手に入る。しかもB110より年式が新しい。この時代からサニー・トラックをカスタマイズする文化が生まれ、その流れは現在まで受け継がれている。

●SPEC
1990年式 1200DX 標準ボディ車
全長×全幅×全高:3845×1495×1390mm、ホイールベース:2300mm、トレッド(前/後)1250/1240mm、車両 重量:720kg、乗車定員:2名 ミッション:4速MT、駆動方式:FR、エンジン:1171cc水冷直列4気筒OHV、最大出力:52PS/5400rpm、最大トルク:8.5kg-m/2800rpm、燃料タンク:37L(レギュラー)、サスペンション(前/後):独立懸架ストラット式/半楕円リーフスプリング式、ブレーキ(前/後)ディスク/リーディングトレーリング、タイヤサイズ:155R12-6PRLT、当時販売価格:77万8000円

シャシー&エンジンは モデル末期まで大きな変更なし

 1971年1月、前年のサニーセダン/クーペのモデルチェンジに伴い、サニー・トラックも新型にフルモデルチェンジされた。
 ボディは少しだけ拡大して全長3845mm×全幅1496mm×全高1405mm、ホイールベースも20mm延長して2300mmとなった。搭載されるエンジンはセダンモデルと同様のA12型、水冷直列4気OHVの1171cc。最高出力68ps/6000rpm、最大トルク9.7kgm/3600rpm。
 5ベアリングクランクシャフトやF770ベアリングの採用により、高速走行時の静粛性が向上し、耐久性も大幅に向上している。また、オイルリングの改良によって、オイル消費も抑えているのが特徴だ。組み合わされるトランスミッションは先代モデルと同じ3速コラムマニュアルと4速フロアマニュアルの2タイプ。全速フルシンクロだ。
 当時の資料によれば最高速度は140km/h、登坂能力は0.40tanθ(4速車。3速車は0.35tanθ)となっており、その性能の高さが窺える。ボディタイプは1種類のみ、のちにショートボディーと呼ばれるタイプで、荷台の長さは1565mm、最大積載量は500kgとなっている。グレードは装備の違いにより2タイプ用意され、スタン ダードは39万4000円(4速フロア車。3速コラムは38万9000円)、デラックスは43万5000円(4速フロア車、3速コラムは42万5000円)。
 ロングボディは1973年5月に追加された。ホイールベースは230mm延長し、2分割3ジョイントのプロペラシャフトを採用。これにより高速走行時の振動や騒音を軽減させている。荷台の長さは295mm延長して1860mmとなり、当時はこのクラス最大の広さを誇った。価格は49万9900円(4速フロア・デラックス。3速コラムは45万9900円)。価格はいずれも東京地区標準現金価格。
 サスペンションはフロントに独立懸架式ストラット、リヤには平行半楕円リーフスプリングを採用。トラック専用のショックアブソーバーによって、積載時でも空荷でも乗り心地を向上させている。
 内装は黒を基調として乗用車らしさを強調。シートはバケット形状のセパレートシートを採用し、ドライバーズシートはシートスライドを前後60mm動かすことができた。カーブドガラスの採用で室内が広くなっている。室内幅は1250mmとなり、2人乗りでも窮屈さを感じさせなくなっている。また、このクラスで初めてヒーターファンを利用した強制ベンチレーション・システムを採用。雨天時や高速走行時に窓が開けられない場合でも、ヒーターファンを回すことにより強制的に換気ができる。空気の取り入れはカウルトップの上面と三角窓。排気はボディーサイドで行い、室内の空気は常に新鮮に保たれる。安全面でも先代に比べて充実させ、ダッシュボードは全面を厚いパッドで覆った衝撃吸収構造に、ドアロックをノブ式に変更。ドアハンドルは室内外共に埋め込み式となり、ドアハンドルを引っ掛ける事故を防いでいる。ワイパースピードは2段階となり、さらに高速化。フェンダーミラーをワイパーの拭き取り範囲内になるように位置を変更している。
 その後、ベースとなるサニーはモデルチェンジされるが、サニー・トラックは基本構造やスタイルを変えることなく生産が続けられていた。途中、いくつかの改良が行われているが、大きな変更が行われたのは1989年10月。これまでB110サニーとほぼ同じだった丸目2灯ヘッドライトのグリルを、角型2灯ヘッドライトに横型スリットを組み合わせたシンプルなものに変更になった。これは当時の日産の商用バンであるADバンにイメージを合わせたもの。バンパーはメッキタイプから黒色のペイントタイプに変更された。これまで黒のビニールレザーだったシートはグレーのベロアクロス地とビニールレザーを組み合わせたものに変更され、室内色はグレーに統一されている。
 最も大きな変更は、フロントブレーキがこれまでのドラムからディスクに変更されたこと。さらに積載量に応じて前後輪のブレーキ能力を制御するロードセンシングバルブとブレーキブースターを採用。タイヤは155R12のラジアルに変更され、走行安定性も向上した。グレードはデラックスのみとなり、標準ボディは71万3000円、ロングボディは74万6000円となっている。この時の販売目標台数は月販400台。商用車は乗り潰されてしまうので現存台数はそれほど多くない。なお、このモデル以前の車両はNOx規制に引っかかるので都市部では登録できない。

1989年以降のモデルはヘッドライトが汎用規格の角型2灯となる。グリルは横型のスリットでADバンなどとイメージを共有する。

フェンダーミラーはグレーの樹脂製。これ以前(1978 年以降)のモデルは同じ形状で黒になる

リヤのコンビランプはサイドまで回り込んだ視認性の高いもの。枠は黒。これ以前のモデルは枠がメッキ。

エンジンはB110サニー用のA12型、水冷直列4気筒OHV1171cc。最終型には電子制御キャブレターを装備。O2センサーと三元触媒の採用により、排出ガス性能を向上して昭和63年規制をクリア。タペットカバーはスチール製。従来モデルとはロゴが異なる。ウインドーウォッシャータンクはビニール製の袋にポンプがついたもの。通称カンガルーバッグ。

内装のデザインは基本的に初期モデルから変更はないが、ハンドルやシートなどが最終型のみグレーを基調としたものに変更されている。

ドアの内張もグレーのビニールレザーに変更されている(以前のモデルは黒)。容量は小さいが、ドアポケットが追加されている。

シートの中央はベロアクロス生地となり、手触りがよく、夏でも暑くならない。最終型は、より乗用車ライクになっている。

ラジオは標準装備。選局はアナログ式で受信はAM波のみ。その下にはヒーターのミックスチュアレバーがある。

吊り下げ式クーラーはオプション設定。吹き出し口はここだけなので、助手席の膝がとても冷える。

灰皿下にはベンチレーションのレバーがあり、外気導入のハッチを開け閉めできる。

メーターナセルはB110からの流用なので3連だが、一番左は蓋がしてある。スピードメーターは160km/hまで刻まれている。

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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