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パーツ取付・交換
更新日:2017.12.20 / 掲載日:2017.12.20

ハコスカDIYメンテ ミッションを分解(2017.12.20)

5速MTのOHも今回で完結!シンクロナイザーリングやベアリングなども揃い、組み立てから実走行テストまでを実施。正しいポルシェシンクロの使い方も教わったので、当分は安心してシフトできそうだ。

1972年式GC10スカイラインGT-X。今回はミッションの組み立て編。走行テストまでやるのが目的。

STEP1 操作系のスムーズさを狙ってチューニング。シンクロ部品にはWPC処理を実施

 前回、新品のシンクロナイザーリングが手に入ったことで、ローギヤのギヤ鳴り解消へのメドがたって一安心だったが、今回はいよいよ組み立て作業に移る。ローのシンクロ以外の程度はよい部類と思っていたので、できるだけローコストで済ませ、ベアリングも再使用するつもりだったが、ベアリングを外してボール部の油分を洗い流してから回してみると、シャー音が目立つことが分かった。オイルが入っていると、すき間が埋まるので分からなかったが、粘り気を取るとテキメンに荒れた感じが伝わってくる。ボールベアリングは汎用品が多用されているので、この際すべてを交換することにしたが、これを機にベアリングをシールタイプに替えることにした。もともとは開放式なので、ギヤオイルで潤滑されるが、そこには摩耗粉が混ざるので、ベアリングの寿命を縮める要因となる。シールタイプは内部での潤滑なので、それだけ摩耗を遅らせられるのだ。ただし、シールが接触して抵抗が増えるので、シールにも用途に合わせた種類がある。同じサイズのを3~4種買って比較すると、金属シールか片シールタイプの抵抗が少ないので、それらを中心に使ってみた。
 ボールベアリングは一つ600円台からあり、コスト的には大きな負担とならないし、汎用品のために在庫切れの心配も少ないのがよいところ。

シンクロ3組とシフトフォークにWPC処理

シンクロ3組(1-2、3-4、5-R)とシフトフォークにWPC処理。バリ取り、オイル保持性向上、トリートメント効果による耐久性向上などの効果がある。

5-R用はスプライン型。

1-2、3-4用は三角形のハブがスリーブの3か所の溝をスライド。

ドライでも動きは滑らか!

シンクロリングは0.2mm摩耗していた

シンクロナイザーリングの寸法チェック。

新品は厚みが3.99mm。

摩耗したローギヤ用は3.77mmなので、0.2mm以上減っている。

パーツは徹底的にクリーニング

塗装剥がしで古い液体ガスケットを剥がす。

油汚れは灯油とシンナーの混合液で洗浄。

フロントケースのセルモーター取り付け部のメネジが破損しているので、タップを通して切り直す。ヘリサートを入れなくても済む程度に直った。

STEP2 パーツの交換はエンジンより難しいところもあり! アダプタープレートに戻すのがかなりの難作業

 トランスミッションはエンジンに比べると簡単な構造に見えるが、OHの難易度ではこちらのほうが難しいところがある。ベアリングやギヤをシャフトに組み込む際は圧入で行うことが多いので、油圧プレスやドリフトなどの当て物が必要となるし、傾けてこじったりすることのないように注意しなくてはならない。日産純正品としては、組み付け用の作業スタンドやドリフト類が用意されている(いた)が、それらを全部揃えているわけでないので、一部の手順はマニュアル通りにいかないところもある。
 このミッションでは、ポルシェタイプシンクロの組み付けが独特だ。ワーナータイプとちがって、分厚いサークリップでシンクロ部品を押さえているのだが、このクリップを脱着するプライヤーに剛性がないと、クリップに負けてしまうのだ。
 本体の組み立てでは、アダプタープレートへ3本のシャフトを組み付けるのに手こずった。本来はカウンターシャフトのドリブンギヤが外れた状態になっていて、メインとカウンターの2本をアダプタープレートに圧入してからメインドライブギヤを組み込むが、今回はドリブンギヤが外せなかったので、3本同時に組むしかなかった。分解時はさほどではなかったが、組み付けではメインシャフト上にある回り止めのボールを落とさないようにしながら、平行するメインとカウンターの2つのシャフトを少しずつ圧入しなければならなかった。そこをクリアすれば、あとはシフトフォーク部を組んで、ケースと合体させるだけとなるが、そこでも意外な落とし穴があった。

シンクロ系は厚いサークリップの装着が大変!

シンクロナイザーのスラストブロックやアンカーブロックをギヤに載せる。

新品のシンクロナイザーリングを被せてサークリップを組み付けるが、この時結束バンドでリングを縮めておくと組みやすい。

サークリップが適切に収まったのを確認。

こちらはメインドライブギヤ。サークリップが硬いのでホールド機能のあるプライヤーとドライバーで組み付け。

メインシャフトと間にあるローラーベアリングにグリースを塗って組む。

ベアリングをプレスとドリフト(パイプ状の当て物)を使って圧入する。傾いたり、無理していないかを確認しながら組む。

フロントカバーのオイルシールをドライバーでこじって外す。

適当な径の当て物を使って新しいオイルシールを手で圧入する。

メインシャフト上にはスペーサーの回り止めボールがあるので忘れず入れる。

カウンター、メインドライブギヤを一緒にして、アダプタープレートに入れる。

ナットの締め付け。

ナットのカシメをタガネで行なってロック。

ギヤをすべて組んだ状態。クラッチディスクからの入力でメインドライブギヤを駆動し、直結となる4速以外ではカウンターシャフトからメインシャフト上のギヤへ動力が伝わる。

シフトフォークは5-R側から取り付け、フォークロッドを差し込む。

チェックボールとスプリングを入れる。

1-2と3-4のシフトロッドは長さが同じなので、間違えないようにして組む。確認と位置決めのためにフラットポンチをシフトフォークとロッド間に差し込んで仮組み確認。

ケースの組み立て。フロントケースに液体ガスケットを塗る。

アダプタープレートをフロントケースに合わせて、ソフトハンマーで叩いて落ち着かせる。

リヤのエクステンションハウジングを被せる。ところがシフトレバーがうまく組めないので再度分解。

STEP3 リヤミッションケースの組み付け

STEP3 リヤミッションケースの組み付け

 アダプタープレートにリヤエクステンションを取り付ける時には、シフトレバーからのロッドとシフトフォーク側のロッドのセレクター部を噛み合わせる作業を同時に行う。方法はシフトレバーが付く部分を右にひねりながらリヤエクステンションを被せるというもの。この際には、リバースセレクトプランジャーが外されているので、シフトレバーは本来の動作範囲を超えて回すことができ、リヤエクステンションハウジングが固定された状態でレバーを戻すと、本来の位置に戻ってシフト操作ができる。
 そうやって、リヤエクステンションを組んでから、シフト操作をやってみるのだが、前後に少し動かせるもののゲートの選択ができない。つまり、シフトレバーが本来の動きをせず、1-2速の操作が半分しかできないうえに、3-4や5-R側に動かせない。接合面には液体ガスケットを塗っているので、再度塗布が必要で、ここでも余計な手間がかかるので再組み立ては極力避けたいところ。
 そこで、リヤエクステンションの入れ方がよくないのかと思って、再度試すがシフトレバーの動きはよくならない。
 今度は、プロペラシャフト側から覗いてみると、セレクト部にシフトレバーが入っていないのが分かった。もう一度分解してみると、シフトフォークのロッドにセレクター部を固定するスロッテッドピンが2mmほど突き出していて、そこに干渉したような跡があるのを発見。これを叩き込んでからリヤエクステンションを被せると、今度は簡単にレバーが動かせるようになった。当時はほとんど手組みだったようなので、このようなバラつきがあったのだろう。

分解していないセレクト部のピンが突き出して干渉していた!

するとフォークロッドの1-2速のセレクターを固定するスプリットピンが僅かに突き出していて、ここに干渉していた。

フラットポンチで叩き込んで平らに。

フロントリテーナーの組み付け。フロントカバー部。メインドライブギヤを手前に引き、ベアリングの溝にサークリップを入れる。

ガスケットを挟んで取り付ける。

シフトレバー部はブッシュを新品に!

リバースセレクトプラグのプランジャーとスプリングを入れてフタを付ける。

ロッド部にオイルを少し差しておく。

シフトレバーの古いブッシュを抜く。

新しいブッシュを圧入。

完成。

メインシャフト後端フランジの組み付け。エクステンションシャフトの後ろからベアリングを入れる。この後の世代では、プロペラシャフトの差込部が滑り軸受になる。

オイルシールを圧入する。

フランジの取り付けはスプライン部を合わせて組み付ける。

回り止めをしながらロックナットを締め付ける。

割りピン穴とナットの切り欠きを合わせる。

完了。

バックアップランプの取り付け。パッキンが付かないので薄くシーラーを塗る。

スピードメーターのドリブンギヤを差し込む。向きがあるので合わせておく。

フロントカバーのピボット部にグリースを塗る。

レリーズベアリングは再使用だが、すき間からギヤオイルを少し差しておく。

取り付け。

ついに完成!

OH前。

これで完成! 新品ぽく見える。シフトレバーは、このように垂直になり、素直な位置関係ということが分かる(搭載作業時は外す)。左は作業前の汚れた状態。

エンジンのフライホイールは摩擦面が荒れていたので、サンドペーパーで軽く研磨した。

メインドライブシャフトの先端が差し込まれる部分にグリースを塗る。

クラッチディスクのスプリングにモリブデンスプレーを少し入れる。

カバーのダイヤフラムスプリングの支点部にもモリブデンを少しだけ入れる。

センター出しして組み付け。マジックペンにテープを巻いたものをツールにしている。

バックアップランプスイッチの作動をチェック。リバースにすると導通あり。

このMTはリヤフランジがあるので、単体でオイルを入れても後ろから漏れないため、搭載前に注入を済ませておく。

プロペラシャフトのスプライン部に給脂。

ミッションジャッキでミッションを上げていく。

搭載。

クラッチレリーズを取り付けるが、プランジャーにグリースを塗る。

デフオイルの交換。ドレンが固い!

ドレンプラグ穴に指を入れて古いオイルをかき出す。

パーキングブレーキワイヤーはむき出しなので給脂。サビが進行すると腐食して切れることもあるらしい。

デフオイルを新品にする。

走行テスト

エンジンをかけてクラッチを断続しながら、内部のオイルをかき上げさせる。異音を聴診器でチェック。

ローは完全復活だが、取り扱いにはコツがいる

 トランスミッションの組み付け作業からは、当時のことをよく知る石川さんに来てもらって、他の部分の調整もしながら進めていく。石川さんは、70年代からSCCN(旧スポーツカーオブニッサン)のメンバーとなって、レースやラリーのドライバーやナビ、メカニックやレースオフィシャルまで、いろんなモータースポーツを経験している方。昔はミッションもよく壊れたそうで、特に3分割式のほうはトラブルが多かったとか。
 ミッションの搭載では、クラッチの細かな部分への給脂など、作動をスムーズにする小ワザを披露してもらいながら作業を進めていった。
 そしてテストドライブ。このミッションFS5C71Bは、コンペティションのCが示すように街乗りには向いていないタイプ。フェアレディZにはよくても、ファミリーカーとしてのハコスカにはよさが出にくいという。そんなこともあって通常使用でもちょっとしたコツがいる。
 まずローギヤは片方向にしかシンクロ作用が起こらないので、発進時のニュートラルからのシフトではギヤ鳴りしやすい。それを防ぐために、一旦2速(シンクロは両方向に作用する)に入れてギヤの回転を止めてからローにシフトするとよいのだ。また、シフトダウンする時は、ダブルクラッチをつかってシンクロへの負担を軽減してやるとなおよい。
 さらに選択しゅう動式のリバースへの操作でも、一旦2速に入れてからリバースにすればギヤ鳴りは起こらない。
 走行テストを行ってみると、各ギヤともスムーズにシフトできるし、シフトダウンであれば1速へのシンクロは十分に作用する。それまでは、ローにするとシフトレバーが弾かれるようなこともあってヒヤヒヤしていたが、今回は安心してシフトできるし、ドライビングのリズムも取れるようになった。


提供元:オートメカニック


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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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