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車検・点検・メンテナンス
更新日:2018.07.10 / 掲載日:2018.07.10

W123復活大計画 「エンジンOH計画」Vol.11

ベンツちゃんのレストア計画において、エンジンOHは最重要パートの一つ。ところがヘッドを開けてみると、中は思ったよりも状態がよさそう。「OHはいらないかも……」頭によぎったそんな甘えがメンテの神さまの逆鱗に触れたのか、大きな失敗を引き起こしてしまいました……。

1977年式 幸せの黄色いベンツちゃん復活大計画【Vol.11】 
Mercedes-Benz 300D(W123)ベンツちゃん=Mercedes-Benz 300D(W123)

今月の作業レシピ ●エンジンOH計画その3「ヘッドまわりの整備」●エンジンOH計画 その4「腰下ユニットの点検」
チェーンの伸びは規定値どおりか? 基本中の基本の確認からスタート。整備書に従ってクランクプーリーマークを0度にすると、カムギヤの合いマークがピタリと合った。チェーンの伸びはないと判断する。

ロッカーアームとカム山の位置を確認しながら、外しやすい角度になるように、クランクを回しながら作業を進めた。

カムの雰囲気は日産L型に似ているが、カウンターフローの吸排気の向きは逆になっている。どことなく懐かしい。

整備性はなかなか良好 作業も順調に進んでくれる
チェーンテンショナーを取り外す。チェーンガイド類が後期型仕様であることが少々気になる。以前に修理されたのか?

“逆ネジ”でないことを確認。チェーンに力が加わらないように、カムギヤの穴にエクステンションバーを差し込んでロックを緩める。

難易度の高い作業も 自作のSST工具でスマートに解決
チェーンガイドの固定ピンは、長いボルトと大型のソケット駒を組み合わせた、自作スライディングハンマーで抜き取りに成功。

ヘッドボルトは油断大敵 ナメないよう、丁寧に力を入れる
ヘッドボルトに錆が付着していないか?を心配したが、、意外にもスムーズに緩めることができた。

タイミングチェーンケース側のボルトを緩める時は、ボルトを落とさないよう慎重に進める。

ヘッドの合わせ面に傷がつかないように、力を加えて持ち上げる。ボコッという気持ちのよい音と共に、ヘッドガスケットが剥がれた。

最終局面は案外スムーズ!ヘッドカバー脱着が終了

ホイストを使ってヘッドを持ち上げる。取り忘れた配管があると、ひきちぎってしまう可能性があるので少々怖い。

カムを取り外したのでバルブはすべて閉じているが、燃焼室のノズルは飛び出している。ヘッドホルダーを使って慎重に着地させた。

噴射ポンプの調整が必要だがその方法がかなり厄介だ

 ベンツの5気筒エンジンは比較的シンプルなSOHC構造であるため、クランク角度とカムギヤの合わせマークの確認は簡単だ。ところがディーゼル噴射ポンプの噴射タイミングを示すマークが見当たらない。そこで整備書を確認してみると、噴射ポンプを取り外した状態で、タイミングを仮合わせする必要があるらしい。整備書には、クランクを回しながらノズルをポンプに取り付けて、そのノズルからわずかに“漏れる雫”の間隔を数えながら調整する、と……。正直、そんな面倒な作業はやりたくない(笑)。
 チェーンと各ギヤの組み付け位置さえ変えなければ、噴射ポンプのタイミング調整をしなくてもよいのでは? そう考えることにして作業を進めることにする。

まずは燃焼室側の状態を確認
どのシリンダーもオイルやカーボンの付着は普通。エンジンの異変を示す兆候はなく、想像よりも程度はよさそう。

このエンジンは、バルブスプリングのリテーナー固定ボルトを緩めるだけで、バルブを分解することが可能。

想像以上に状態はよいかも?
バルブシートにも目立った虫食い摩耗は見当たらず、バルブガイドの摩耗もない。ヘッドは清掃だけで再使用できるかも?

軽油を吸気&排気ポートに注入し、バルブの密着状態を点検すると異常なし。バルブシートカット作業は必要なさそう。

ロッカーアームに摩耗を発見
再使用も可能かな?と思った矢先に、ロッカーアームに異常を発見。はっきりした段付き摩耗が……。夢破れたり(涙)。

カム山にも段付き摩耗を確認。そうは問屋が卸さない、ようです。
カム側にも摩耗を発見。1番シリンダーのカム山の右肩部分がフラットになっている。これがアイドル不調の原因かもしれない。

定番箇所に段付き摩耗を発見!急遽中古パーツを手配する

一瞬、研磨も検討したがリスクを考えて断念。素直にネットで見つけた中古カムを個人輸入して、交換することにした。

 エンジントラブルは、バルブシートやバブルガイド、カム系の摩耗など、ヘッドまわりのパーツの劣化が原因になることが多い。開けた瞬間はけっこうキレイねと感じた我がベンツちゃんのエンジンも、ヘッドまわりは鬼門の模様。カムシャフトとロッカーアームに段付き摩耗を発見してしまった。
 この段付き摩耗を解消する方法として最初に考えたのは、カムのリグラインド施工(カムを一回り小さく研磨)。だが、リグラインドを行うと表面加工が削り取られてしまうため、さらに摩耗が進行するリスクがある。さらにロッカーアームとの位置関係が微妙に変わってしまう可能性が高く、ロッカーアームがエンジン回転中に外れてしまう懸念もある。そんな理由から今回は修理を断念。アメリカ・オレゴン州にあるクラシックベンツ専門の中古パーツショップから、中古カムとロッカーアームをセットで個人輸入することにした。
 ちなみにバルブを分解するためには、本来スプリングコンプレッサーを使用しなければならないが、このエンジンはバルブ・ステムの上部にネジが切られており、そこのボルトを緩めれば簡単にスプリングが外れる構造。慎重に分解を進めると、意外にもバルブシートの状態はよいし、バルブガイドの摩耗も少ない。
 アメリカの修理工場では、ヘッド点検のついでに専門のマシンショップにヘッドのリビルド(シート研磨作業)を頼むケースが多いのだが、我がベンツちゃんも、過去にバルブまわりの修理が行われたのかもしれない。

オイルを抜いてクランクプーリーを抜く準備を進める
約8リッター近いディーゼル特有の墨色の廃油。オイルパンの底に金属の粉の有る無しも重要な判断基準になる。

凍結防止剤とは無縁のLA育ちらしく、40年経過したにもかかわらず、ボルトまわりの錆はない。

カムと同様に“逆ネジ”でないことを確認後、クランクボルトを緩める。鉄製ブロックなので少々乱暴な方法でプーリーの回り止めをする。

スペーサーの向きは必ず確認。

プーリーは一般的なウッドラフキーではなく、ピンで位置決めされていた。少々見慣れないエンジン構造だ。

頑強にはまっている難関パート。荒っぽく力を入れて抜き取る

手持ちのプーラーではびくともしないため、くさび方式で抜き取る。アルミ製のタイミングカバーだったら割れたかもしれない。

重要ポイントのクランクケースに到達。ここの状態はどうなのだろう?

下側パンを外すと、1番のコンロッドを外すことができそう。この段階でピストンまわりの点検を行い、腰下のOHが必要か判断することにする。

腰下内部の状態はよさげな印象。ヘッド側だけのOHで十分かも?
 部品が届くまでヘッドまわりは一時中断。腰下の点検を行うことにする。
 クランクボルトまわりの作業性が悪いため、クランクプーリー外しは最初の難関。特にクランクプーリーの六角穴付ボルトをうっかりなめてしまうと、車上作業の続行がきわめて難しくなってしまう。凍結防止剤を散布する地域のクルマは、この六角の穴部分が錆で拡大しているケースも多く、作業の続行が無理と感じたら、潔くエンジンを降ろす作戦に計画を変更したほうがよいかもしれない。
 幸いにも、ベンツちゃんのクランクプーリーのボルトに錆の発生は認められず、クランクプーリーの取り外しはスムーズに成功した。次はいよいよ最大の難関であるオイルパン外し作業に取りかかる。
 このエンジンのオイルパンは上下2分割式の構造を持ち、下側のオイルパンを取り外すと、1番シリンダーのコンロッドが丸見えの状態になる。そこで腰下側の状態を把握するために、1番ピストンを抜き取ってみる。ピストンリングとコンロッドベアリングの状態を見れば、おおよその残存寿命が推測できるので、もし程度がよければ、あえてリスクを冒してオイルパンを外す腰下OHを進める理由はない。またこのエンジンのリヤ・メインシールは、最近では珍しい“芋虫タイプ”の上下分割式なので、オイルパン脱着作業の結果、シールの劣化によるオイル漏れを引き起こす副作用も心配だ。
 ここの見極めは今後のレストアの難易度を大きく左右する。淡い期待かもしれないが、他の部分の状態もよければ、腰下のOHは必要なしという判断になるかも。

まずはオイルポンプを外す

懐かしいポンプの取り付け方法を見ると、AMバイト時代に初めて挑戦したトヨタM型のエンジンOH作業を思い出す。

ピストン系は部品が多い。交換が必要な部品のリストアップを進める

再使用できるかもしれないコンロッドベアリングにはダメージを与えないようにしたい。慎重にピストンを下側から押し上げて取り外す。

コンロッドボルトとベアリングは再使用ができそうだ

コンロッドボルトのベアリングは、ほぼ新品同様。再使用は十分可能だと判断する。オイル管理がよほどよかったのだろう。

ピストンリングは要交換。

ベアリングとは違ってピストンリングのテーパー部の摩耗は進んでおり、フラットになっている箇所もある。ここは交換するべきだろう。

シリンダー上部に段付き摩耗はほとんどなく、クロスハッチ(機械加工の跡)も残っている。ボーリングは必要ないだろう。

部品はチェコの会社から調達。お気に入りのマーレー製を輸入しよう

載せ替え時期や距離こそ不明だが、リベットで張り付けられたラベルから、このエンジンがベンツ純正の修理用エンジンであることが判明。

修理用エンジンのためにリングサイズの選択に悩んだが、マーレー製ピストンとの相性も考えてマーレー製のリングを選択する。

作業前にオイル汚れを徹底的に落とす

OH作業時にクランクケース内部に異物の混入を防ぐために、大手術前の消毒作業を行う。再び目を覚ますことができるのか?

クロスメンバーの上の六角穴付ボルトをなめたらリカバリーが面倒。オイル漏れのおかげで固着していないことは幸いだ。

オイルパンのボルト緩めは絶対に失敗が許されない。

ディップスイッチの叩きすぎは注意

ボルトで固定されているオイルパンのおかげで剛性は確保されているが、車上OHをする場合は、オイルパン装着を難しくする不向きな構造。

パイプを抜こうとハンマーで叩いたらバリが発生しブロックに引っ掛かり抜けなくなった。ヤスリ修正が必要かも。

左右のエンジンマウント取り付けボルトを外し、ブロックをできるだけ高く持ち上げる。ミッションマウントはそのままでOK。

エンジン上げは緊張の一瞬。落としてしまったら一巻の終わり

ベルハウジング下をジャッキで持ち上げる方法もあるが、超ヘビー級ブロックゆえに、エンジンホルダーを使う吊り下げ方式を採用。

思った以上に状態はよかったが念には念を入れて作業続行
 作業途中に見つけたラベルから、ベンツちゃんのエンジンは、メルセデス純正の交換用エンジンであることが判明。交換時期こそ不明だが、ピストンやコンロッドベアリングの状態が予想以上によかったことも納得だ。ここでOH作業はストップするべきか?と思ったが、ピストンリングの摩耗はそれなりに進行しているため、作業続行を決断した。
 エンジンホルダーを使ってブロックを持ち上げオイルパンの脱着を試みると、オイルパンとクランクのカウンターウエイトが当たってしまう。当たらないようクランク角度を調整しながらクランクをクルクル回していたら、知らぬ間にタイミングチェーンがクランクギヤから浮いた状態になってしまい空回り。分解前のチェーンとクランクギヤの位置関係が……。脱着は何とか完了したが、組み付けの際に苦戦することも確定。作業続行の決断を下したことに、後悔しています……。

クランクが邪魔でうまく外れない……

オイルパン内部の仕切り板がクランクのカウンターウエイトにぶつからないように、クランクシャフトを少しずつ回しながら外す。

取り外し作業中にチェーンがずれてしまった。のちに悪影響が出てしまうかも

問題発覚。オイルパンがない状態ではチェーンは簡単にずれるようだ。最初に狙った“チェーン&ギヤ位置を変えない作戦”の意味は……。

次号予告
遠いチェコから届いたピストンリングの組み込み作業に挑みます!

提供元:オートメカニック

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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