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吸排気系修理・整備[2019.06.25 UP]

ターボとスーパーチャージャーの違いと比較

エンジンのダウンサイジングがトレンドとなっており、小排気量エンジンのパワーを補っているのが過給器です。過給器にもターボチャージャーとスーパーチャージャーの2種があるので、ここではそれぞれの違いについて紹介します。

ターボチャージャー

排気マニホールド側に排気の流速で回るタ ービンを設け、同軸上に吸入空気を圧縮す るコンプレッサーを設置。圧縮された吸入 空気は大気圧以上となり、高い酸素濃度を 実現し、エンジン出力がアップする。

スーパーチャージャー

空気を圧縮するコンプレッサーがエンジンサイドに設けられている。コンプレッ サーの駆動源はクランクシャフト。ベル トによってその回転が伝えられ、吸入空 気を圧縮する。圧縮され高温になった空 気はインタークーラーで冷却される。


 ガソリンエンジンもディーゼルエンジンも空気と燃料を適切な値で混合し、それを燃焼させてクランクシャフトを回すエネルギーを取り出している。ガソリンエンジンの理想的な空気と燃料の質量比は14.7:1といわれているが、吸入する空気の量が少なければこの比率に従って燃料の量も抑えられる。逆に空気量が多ければ、燃料の量も増量でき、結果として出力はアップする。
 しかし、吸入する力には限りがある。ピストンが吸入行程でシリンダー内で下がり、そこに負圧が発生し、吸気管内から大気圧に押された空気が進入する。出力を上げるにはエンジンを高回転化するという方法もあるが、排気量を増やすのが一番容易な方法だ。
 エンジン容積を増やさず、コンパクトなまま出力を上げる方法も開発された。吸入する大気に圧力を加えたらどうだろうか。吸入空気の酸素濃度が上がり、それに見合った量の燃料を供給できる。そうして考案されたのが過給技術なのだ。
 過給には排気のエネルギーを利用するターボチャージャーと、クランクシャフトの回転を動力とするスーパーチャージャーの2タイプがあり、用途に合わせて使い分けられている。またその二つの過給器を同時に備え、回転域によって使い分けるエンジンも実用化されている。

ターボとスーパーチャージャーの駆動源の違いについて

ターボチャージャーの駆動源

カタツムリ形のハウジングの 中に回転軸を同じくする一対 の風車のようなベーンが入っ ている。小さいほうは排気の 流速で回転するタービン、大 きいほうはタービンの回転軸 に回されるコンプレッサー で、吸入空気を圧縮する。

スーパーチャージャーの駆動源

クランクシャフトの回転がベルトによって伝えられ、コンプレッサー ローターが稼働する。ターボチャージャーのタービン回転数が約10 万回転にも達するのに対し、こちらはわずかに増速されるだけだ。

ターボチャージャーは排気のエネルギーで、スーパーチャージャーはクランクシャフトの回転で駆動。

 空気を圧縮するためにはコンプレッサーを用いるが、それは外部からの力に頼って回転させなければならない。スーパーチャージャーはクランクシャフトの回転を駆動源としてベルトによってコンプレッサーに伝える。エンジンが回り出せば同時にコンプレッサーも回り出す。アイドリング時や過給が不要の時はコンプレッサーの負荷が燃費や出力に悪影響を及ぼすので、断続する電磁クラッチを備えている。
 コンプレッサーの回転は想像するほど高くはない。クランクシャフトからの増速比は1.3前後。しかし効率のよいコンプレッサーによって、充分な過給が行われる。
 ターボチャージャーはスーパーチャージャーより原理はシンプルだ。排気のエネルギーで回る風車のようなタービンを設け、同軸上に空気を圧縮する、これも風車のようなコンプレッサーを設けている。しかしクランクシャフトの回転トルクと排気のエネルギーには大きな違いがある。このためターボチャージャーは排気の流れに抵抗を与えないような設定が行われているが、それで充分な過給を行うために、10数万回転から20万回転という自動車の機械部品としては最高の回転数となっている。

二つの過給装置は戦闘機のメカニズム

国産車ではセドリックが初。スーパーチャージャーはトヨタが初採用。

 過給の技術は産業機械や戦闘機で用いられていたが、ターボチャージャーを最初に自動車に取り入れたのはシボレー・コルベア。その後BMWが1973年に2002に採用し、ポルシェも続いた。量販乗用車に最初にターボチャージャーを取り入れたのはサーブ。1976年、セダンのサーブ99に採用されたそれは実用域での過給を重視したもので、現在の実用ターボの元祖ともいえる。国産車では1979年、セドリックに初めて採用された。
 スーパーチャージャーの歴史はもっと古い。こちらも戦闘機が最初だが、1921年にメルセデスが採用し、モータースポーツでめざましい速さを見せる。それを契機にGPカーの多くがスーパーチャージャーエンジンへと移行した。
 GPカーのレギュレーションの変更によってスーパーチャージャーの時代は終わりを告げたが、今につながるスーパーチャージャーカーを送り出したのがランチア。1982年、「トレビ」と「ラリー」の市販を開始した。
 同じ頃、日本でもスーパーチャージャー搭載車が発売された。1985年、トヨタはルーツ式を開発し、クラウン、マーク2、MR2などに搭載した。

実用ターボのパイオニア、サーブ99。高回転域では過給圧を逃がすウエストゲートバルブを採用し、実用域での過給を重視した。

ターボとスーパーチャージャーの過給の仕組み

ターボとスーパーチャージャーの過給の仕組み

タービンで回された軸によってコンプレッサーのベーンも回転し、空気を圧送する。タービンには、エンジンの低回転から反応するもの、中回転から効果を表すものなど、様々な特性があり、クルマの性格に合わせて使い分けられてきた。

ひねった三角形のパイプを組み合わせたような3葉スパイラル型スーパーチャージャー。ローターの回転によって空気を絞り込むように圧縮する。最近のVWエンジンに採用されている。ハウジングの中に1対のローターを内蔵したルーツ型コンプレッサー。互いに回転することで空気を圧縮する。スーパーチャージャーの初期から用いられてきた原型ともいえる。

ハウジングの中に1対のローターを内蔵したルーツ型コンプレッサー。互いに回転することで空気を圧縮する。スーパーチャージャーの初期から用いられてきた原型ともいえる。

ターボチャージャーはベーン状のコンプレッサーで過給。スーパーチャージャーは空気を押し込んで圧縮。


 扇風機が回り出すと風を前方に送り出す。空気力学的には送り出すのではなく、羽根の部分と前方に圧力差が発生し、圧力の低い部分に風が流れていくといったほうが正確だろう。
 ターボチャージャーも同様にハウジングの中に羽根を内蔵し、タービンの回転に伴って回転し、空気に圧力を与える。空気の流れはインテーク→エアクリーナー→ターボチャージャー→スロットルボディ→エアチャンバー→インテークバルブという経路を通るが、もう一つ、通常のエンジンにはないパーツが挿入される。それがインタークーラーだ。圧縮されて温度が上がることで空気密度が低くなるのを抑えることと、吸入温度を下げ、ノッキングを防止する意味もある。最大過給圧力は様々だが、軽自動車用で0.5kgm/cm2、高性能車で0.8kgm/cm2前後に設定される。
 スーパーチャージャーは上図のような3葉ローター式、2葉ルーツ式の他に大きなネジ山をもったボルトを組み合わせたようなリショルム式が代表的なものだ。いずれも空気を取り入れ、圧縮する。強いトルクで駆動できるため、ターボチャージャーのコンプレッサーより効率は高い。圧縮圧力は0.5kgm/cm2前後となっている。

ターボとスーパーチャージャーの出力特性の比較

最新ターボチャージャーエンジンの性能曲線。かつてのターボは中回転から一気に力がわき出したが、現在のターボは低回転域から最大トルクを発生し、それが持続する。

スーパーチャージャーとターボチャージャーを搭載した1.4リットルエンジンの出力特性。回り出してすぐに高いトルクを発生する。小排気量でも充分実用になることが分かる。

エンジンが回り出せばすぐに過給が始まるスーパーチャージャー。ターボチャージャーはタイムラグがある。

 エンジンの回転と直結しているスーパーチャージャーのコンプレッサーは、エンジンが回り出せばタイムラグなしに過給を開始する。このため大きな排気量のエンジンでなくても低回転からトルクに富み、扱いやすい特性を持っている。右上の性能曲線はスーパーチャージャーとターボチャージャーの二つを備えたエンジンのものだが、低・中回転域ではスーパーチャージャーの過給によって瞬時に最大トルクまで立ち上がっている。
 対してターボチャージャーは排気のエネルギーを利用するため、排気流速が遅い低回転では過給の度合いは低く、さらに過給が始まるまでにタイムラグを生じる。しかし排気流速が高まる中回転域以上では過給の効率が高まり、素晴らしい動力性能を発揮する。数十万回転にもなるタービンのエネルギーは高く、そのままでは過給圧が上昇を続け、エンジンを破壊してしまう。そのために過給圧が限度に達したら圧力を解放するウエストゲートバルブが備えられている。
 最近のターボチャージャーはそのような特性を嫌い、タービンに工夫を凝らし、左上図に示した性能曲線のように回転全域でタイムラグなしに稼働するように設計されている。

進化するターボチャージャー
各ベーンの角度を変え、流速を可変制御する可変ジオメトリーターボ。

日産が1985年に開発したフラップ式の可変ターボチャージャー

タービン側だけでなく、コンプレッサー側にも可変ジオメトリーを採用した三菱のVD/VGターボ。

大、小二つのターボチャージャーを装着し、回転域で使い分けるシーケンシャルターボ。

レスポンスを速く…その要求に応えたメカニズム

 初期のターボチャージャーは低回転域では反応が鈍く、排気の流速が高まる高回転域でいきなり反応するという扱いにくいものだった。サーブは初めてウエストゲートバルブを導入し、低・中回転で効果を出し、高回転域では過給圧を抜くという手法を一般的なものにした。
 その後もターボの改良は進む。タービンハウジングの入り口にフラップを設け、低・中回転域ではそれを閉じ気味にして排気の流速を高め、高速域では全開にして排気エネルギーを最大に活用する。そのシステムは現在ではベーンの角度を可変する可変ジオメトリーへと進化している。
 同じような効果を求めたものに、タービンへの通路を狭いものと広いものの2本立てとし、回転領域によって切り替える「ツインスクロール」型も開発された。
 大・小二つのターボチャージャーを搭載する手法も採られている。低・中回転域では反応の速い小さなほうを稼働させ、高回転域では大きいほうを稼働させる。このシステムの発展形として、パラレルシーケンシャルターボも実用化されている。小さなターボチャージャーを二つ装着し、低・中回転では一つだけ稼働させ、高回転域では二つ稼働させる仕組みだ。

ハイブリッド過給も登場

ターボチャージャーとスーパーチャージャーの二つを組み合わせ、欠点を補い、長所を引き出すVWのツインチャージャー。

低回転域ではスーパーチャージャー、中回転域以上ではターボチャージャーが稼働する。

スーパーチャージャーとターボチャージャーのいいとこ取りのVW TSI

 低・中回転域で効果を示すスーパーチャージャーと高回転域が得意なターボチャージャーを組み合わせた過給システムもある。最初の例はWRCでの勝利を目的としたランチア。日産もかつてマーチに搭載した。いずれもスーパーパフォーマンスを追求したもので、実用車の範疇からは外れていた。
 しかし最近のVWがラインナップの多くで進めているのがパワーユニットのダウンサイジング。2リットル以上のエンジンで動かしていたクルマをもっと小さいエンジンに置き換えようというものだ。小さいエンジンでも充分な出力を発生させるためには過給は必須で、ターボチャージャーとスーパーチャージャーの二つを装着し、エンジンの回転域によって使い分けている。
 VWの1.4リットルツインチャージャーエンジンは、約2トンのシャランを、まるで3リットルエンジン搭載車ででもあるかのように走らせる。

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