故障・修理
更新日:2019.07.23 / 掲載日:2019.07.23

電子制御サスペンションの仕組み

 予め決められたジオメトリーに沿って動くアームとコイル/ダンパーユニットで構成されるサスペンションだが、これに電子制御を持ち込み、走行状態、路面の状況、乗車定員に合わせた、最適な乗り心地やハンドリング、スタビリティが得られるものも一部のクルマに採用されている。
 制御は大きく3つに分類される。1つはショックアブソーバーの減衰力を走行状態に合わせて調整するもの、2つめがスプリングの代わりにエアチャンバーを採用し、常に一定の車高に保ち、走行性や乗り心地を向上させるもの、そして3つめが油圧を用いてアクティブコントロールするものだ。
 最初にこの分野に電子制御を持ち込んだのはトヨタ。1983年、TEMS(Toyota Electoronic Modurated Suspension)を開発し、ソアラに搭載した。前後のショックアブソーバーの減衰力をマイクロコンピューターによって制御し、ソフトとハードの2段階の減衰力に調整するものだ。調整のモードはオート、スポーツ、ノーマルの3種類があり、オートモードでは路面の状態、走行状況に合わせて、自動的にハードとソフトの切り替えが行われ、常に最適な乗り心地と走行安定性が得られた。またこのモードではアンチスクォート、アンチダイブ、アンチロール機能も働き、運転全域で制御が行われた。
 制御のための情報は車速センサー、ステアリングセンサー、スロットルポジションセンサー、ストップランプスイッチ、ATのニュートラルスタートスイッチから検出した各種のデータで、エレクトロニクス時代に入った1980年代だからできたテクノロジーといえる。また、ハードモードやノーマルモードを任意に選択すると、そのモードに固定され、ドライバーの好みに合った減衰力に固定された。
 減衰力調整のメカニズムは2段切り替え式のオリフィスとオリフィスが装着されているコントロールロッドを回転させるアクチュエーターからなっている。ノーマルモードでは通常の1カ所のオイル通路に加え、アクチュエーターでロータリーバルブを回転させて、もう1カ所の通路を開け、オイル通路の面積を拡大する。これによって減衰力が下がり、乗り心地がソフトになる。ハードモードではそれを閉じ、オイル通路を1カ所にして、減衰力を上げる。
 オートモードではこの2つの制御を常に連続して行うため、反応の早いアクチュエーターが要求される。TEMSでは起電力が小さく、耐久性に優れた直流式モーターを採用し、4個は並列に配置され、マイクロコンピューターの指示によって、わずか0.1秒でロータリーバルブが開閉した。TEMSはその後も進化を続け、現在も多くのトヨタ車に採用されている。
 TEMSと同じような原理を採り入れたショックアブソーバーは他のメーカーでも採用され、1984年、日産がブルーバードマキシマに初搭載したスーパーソニックサスペンションなどがよく知られている。このシステムの大きな特徴は超音波路面ソナーを備えていたことだった。ソナーによって路面と車体の関係を検知し、さらに車速センサー、ステアリングホイール舵角センサー、ストップランプスイッチなどからの情報を合わせ、ソフト、ミディアムとハードの3種の減衰力に自動的に調整された。またマニュアルモードも備え、これを選択するとハードに固定された。その後、日産はソナー方式からTEMSと同系のアクティブダンパーサスペンションへと進化する。
 冨士重工が1984年に開発し、レオーネに搭載したのが電子制御エアサスペンション、エレクトロ・ニューマチック・サスペンションだ。エアサスペンションそのものはサスペンション技術のブレークスルーでもなく、戦後の一部のアメリカ車に採用されたり、大型バスで実用化され、乗用車では初代センチュリーがフロントサスペンションに導入していた。しかし、スバルのそれは4輪全てにということで国産初、乗用4WDに導入したということでは世界初ということになる。

レオーネに採用された国産初の4輪エアサスペンション、エレクトロ・ニューマチック・サスペンション。エアチャンバーとショックアブソーバーからなるユニットが各輪にセットされ、コンプレッサーから圧縮空気が送られる。

エレクトロ・ニューマチック・サスペンションの構成。エアチャンバーへの吸気、排気がリアルタイムで制御され、車両の姿勢を安定させ、乗り心地も向上させる。


 スバルのそれはフロントストラット、リヤトレーリングアームのサスペンションのスプリングをエアチャンバーに替えたものだ。構造そのものは複雑ではないが、エア圧を電子制御することで、スプリングに代わるバネ作用をするだけでなく、ロール、ピッチング制御などのオートレベリング、車高調整ができ、さらにショックアブソーバーには2段階の減衰力可変システムが組み込まれていた。

エレクトロ・ニューマチック・サスペンションのサスペンションAssyの構造。エアチャンバー、ローリングダイアフラム、2段階減衰力切り替えショックアブソーバーからなっている。

オートレベリングは、車高センサーからの情報を基に4個のエアチャンバーの内圧を変えることによって行われた。たとえば、一輪に大きくパンプする力が入ると、瞬時にエア圧を低めてショックを吸収するとともに、車高の変化を抑制する。さらにタイムラグなしにエア圧を高め、次の入力に備える。このように乗り心地だけでなく、ロール、ダイブ、スクォートまで4輪全ての動きが電子制御された。
 エアチャンバーの内圧を変えることで車高が簡単に調整できることから、プッシュボタン式の車高調整機能も組み込まれた。前輪が30mm、後輪が35mmの間で、ローとハイの2段階の切り替えが可能で、悪路走行時に高く、舗装路では低く設定することによって4WDの機能をさらに活用できた。
 システムの構成はエアコンプレッサー、リザーブタンク、エアドライヤー、各サスペンションチャンバー、吸気ソレノイドバルブ、排気ソレノイドバルブ、制御バルブ、車高センサー、プレッシャーコントロールスイッチなどからなっていた。
 エアサスペンションはその後、レガシィにも引き継がれ、また他のメーカーではセルシオ、クラウン、シーマ、セドリックなどの高級車にも採用されていく。

最初のTEMSの減衰力切り替えアクチュエーター。ロータリーバルブを回転させるためにコンパクトな直流モーターが用いられた。ノーマル、スポーツ、オートの3モードがあり、減衰力はハードとソフトの2段階に切り替えられた。

TEMSのアクチュエーターはその後、2組の電磁石と永久磁石で構成される。通電状態を切り替えることで、30°5段階回転させることができた。

インフィニティQ45、シーマに採用された油圧アクティブサスペンションの概要。前後Gセンサー、上下Gセンサー、車高センサー、車速センサーからの情報を基に、各輪のアクチュエーターに送る油圧が制御され、最適な姿勢が保たれた。


 油圧を用いたアクティブサスペンションも開発された。代表的なものは1989年に日産がインフィニティQ45に搭載したアクティブ油圧サスペンション。各輪にアクチュエーターを配し、高圧ポンプによって油圧が伝えられる。油圧は電子制御され、走行状態に応じた最適な車高、減衰特性が与えられる。この種のサスペンションではシトロエンのハイドロニューマチックがパイオニアとして知られているが、日産のそれはエレクトロニクスを介入させ、あらゆる領域できめ細かく制御するものだった。
 システムの構成はオイルポンプ、ポンプアキュムレーター、バルブユニット、メインアキュムレーター、圧力制御ユニット、アクチュエーターからなり、それを動かすための情報収集のために車高センサー、横Gセンサー、前後Gセンサー、上下Gセンサーが装着された。この方式の特徴は補助コイルスプリングを備えていたことで、これによってシステム全体の油圧を下げることができ、エネルギーロスを防いでいた。
 主な制御はロール、ピッチング、バウンス、車高の4種だが、大きな特徴はロール制御にあった。フロントのロール剛性を上げると、サスペンションの形式にかかわらずアンダーステアとなり、反対にリヤのそれを上げるとオーバーステアとなる。この特性を利用し、その時々の走行状態に応じて、常に車両が安定する方向へとロール剛性が制御されたことだ。
 油圧アクティブサスペンションは、その後日産の最上級モデル、プレジデントやシーマにも搭載されたが、プレビュー制御という新しい制御が加えられた。前輪が凹凸を通過した時に、そのデータを上下Gセンサーで収集し、後輪が凹凸を通過する時に、その凹凸をしなやかに通過するように油圧アクチュエーターの圧力を調整した。
 油圧アクティブサスペンションはこの他、1989年にトヨタ・セリカにもオプション設定されている。

最新電子制御ショックアブソーバーの仕組み

ピエゾTEMSの構造。ショックアブソーバーのロッドに伝わる路面からの情報をピエゾセンサーで検知し、電磁ソレノイドアクチュエーターで減衰力切り替えバルブを制御した。

ピエゾセンサーのブロックダイヤグラム。各センサーからの信号を基に路面状況を瞬時に判断し、アクチュエーターに制御信号を送る。

TEMSの進化
 2段切り替え式で、セクターギヤを介して直流モーターでショックアブソーバーのコントロールロッドを回した初期のTEMSは、その後も開発が続けられ、アクチュエーターはより精密な制御ができるコントロールロッドと同軸のソレノイドに替わり、さらにピエゾ式センサーを用いたピエゾTEMSへと進化する。
 初期のTEMSは主に車速センサー、ステアリングセンサーからの情報を基に減衰力を制御したが、ピエゾTEMSではショックアブソーバーのロッドにピエゾ素子を用いたセンサーを内蔵し、ショックアブソーバーに入る路面からの力を検知し、それに合わせて最適な減衰力となるように調整された。アクチュエーターも大きく変更された。ピストンロッドを回す方式ではなく、フューエルインジェクターのそれのような電磁ソレノイド式となり、より精密な制御が可能となった。
 TEMSはさらにコントロールロッドの制御にステップモーターを採り入れ、ピエゾセンサーの代わりに上下Gセンサーを採用するなどし、多段制御を行うようになり、スカイフックTEMS、H∞TEMSと名前を変えた。

HインフィニティTEMSの制御内容。ハード、ソフトという画一的な制御ではなく、こづごつ感、バネ下制振、あおり制御など、走行状況に応じて、きめ細かく減衰力が調整される。

アクチュエーターはモーター、電磁ソレノイドと進化し、HインフィニティTEMSでは18°16段階に回転させられるステップモーターが採用された。

AVSの構成パーツ。各ショックアブソーバーにステップモーター式のアクチュエーターがセットされ、その作動の情報を得るためにGセンサー、ステアリングセンサー、車速センサーなどが設けられている。


 このように制御の精度を上げるためにTEMSの構成も変わってきた。ピストンロッドを回すアクチュエーターは16段階に動作するステップモーターが導入され、メインとなるセンサーには車体の上下加速度を検出する上下Gセンサーが採用され、車体の前後に装着される。この他にステアリングセンサー、車輪速センサー、エンジン回転数センサー、ストップランプスイッチが設けられる。

 減衰力の制御は以下のように、8つの項目で行われる。

あおり制御
 H∞理論が取り入れられた制御項目で、バネ上の共振を抑えるのに十分な減衰力を確保しながら、滑らかな乗り心地が得られる制振性能も付加された。あおりが小さい場合は一定時間だけ減衰力を高めることで対処できるが、あおりが大きくなった場合、減衰力を大きくしたままだと乗り心地が悪化する。そこで、乗り心地とのバランスを考えて、車体の上下加速度をGセンサーで検知し、減衰力を4輪独立して制御する。

バネ下制振制御
 車輪速センサーによってバネ下が共振していることを検知すると減衰力を適度に高め、共振を抑えながら、乗り心地の低下も防ぐ。

アンチスクワット制御
 エンジン回転数からの情報を基に、加速時の車両の後部の沈み込みを早期に検知し、減衰力を高め、その動きを規制し、車両姿勢を安定させる。
 アンチダイブ制御
 車輪速度信号とストップランプスイッチからの情報を基に、減速の状態を把握し、予想される姿勢変化に合わせて減衰力を調整し、ノーズダイブを抑えたり、ダイブ速度を穏やかに調整する。

ゴツゴツ感制御
 荒れた路面を走行すると、バネ上共振とバネ下共振の間にゴツゴツ感を発生する周波数が発生する。それを抑えるために減衰力をやや抑えながら、乗り心地をフラットに保つ。
車速感応制御
 速度に応じて最適な減衰力が求められるが、車速感応制御では、車輪速度センサーからの情報を基に、走行速度に合わせて乗り心地と安定性を両立させる最適な減衰力に調整される。

仮想ロールダンパー制御
 コーナリング中の車両の外側に仮想のショックアブソーバーを設定し、それの伸び側、縮み側の減衰力を調整することによって、ロールを抑えながら、重心の位置がなるべく動かないように制御され。これによってタイヤの接地性が向上し、ステアリングレスポンスも向上する。

VSC強調制御
 車両安定システムであるVSCと強調させて減衰力を調整する。スキッドコントロールコンピューターからの情報を基に、車両の姿勢が不安定になり始めると減衰力を高め、よりVSCの効果が発揮されやすくする。

AVS
 HインフィニティTEMSの発展型としてクラウンやレクサスに採用されたのがAVS(Adaptive Variable Suspension system)だ。HインフィニティTEMSとの一番の相異は、減衰力の調整が9段になったことと、カーナビとの強調制御が取り入れられたこと。制御のパターンは基本的にHインフィニティTEMSに準じている。

オイルの代わりに鉄粒子を含んだ化学合成の炭化水素系流体が封入されたマグネチックライド。ピストン内部にある電磁コイルに送る電流を制御することによって流体が繊維状に整列し、粘性が変化する。粘性を連続的に変化させることで幅広い範囲で減衰力の調整が可能になる。


 制御は、速度に応じて徐々に減衰力を上げていく車速可能制御、アンチダイブ制御、アンチクスワット制御、ロール制御の他にロールとピッチ方向の動きを抑制するあおり制御、さらにゴツゴツ感制御も加えられた。
 VSCの装着車が多くなっているが、AVSはVSCとも協調して、減衰力を制御する。スキッドコンピューターからの信号により、クルマの滑りの状態、路面の摩擦係数などを計算し、減衰力をその状況に最適なものにリアルタイムで調整する。またプリクラッシュセーフティ装着車では、衝突が避けられないとコンピューターが判断すると、減衰力を上げ、急ブレーキによるノーズダイブを抑制する。
 現代のエレクトロニクスは数年前までは考えられなかった機構を可能にしている。それがカーナビとショックアブソーバーの減衰力調整を強調させるシステムだ。トヨタではNAVI・AI-AVSとネーミングし、HDDカーナビ搭載車にこのシステムを設定している。
 コーナープレビュー制御では、カーナビが受信した車両前方の道路情報を基に、そのコーナーで発生する横向き加速度を推定し、コーナーに入る直前に減衰力を適正な値に調整する。これによってステアリングのレスポンスが高まり、コーナリング中のロールも抑えられ、車両の姿勢も安定する。 段差学習制御は、高速道路の走行時に路面の段差を上下Gセンサーで検出し、その段差の位置をカーナビに記憶させる。2回目にその場所を通過する時、カーナビに学習させた情報を基に、通過直前に減衰力をソフトにし、段差からのショックを低減する。

ボーズが研究したのが、スプリングとショックアブソーバーの代わりに直立したリニアモーター(電磁式アクチュエーター)を使う方式。電磁力で走行中の車体を支え、姿勢を制御するというものだ。電磁力は反応速度が速く、様々なストロークに素早く対応できる。


 電子制御減衰力調整ショックアブソーバーはトヨタだけでなく、世界のスポーティ車や上級車のトレンドになっていて、VWパサートCCにはダイナミックドライブコントロール、メルセデスCクラス・ステーションワゴンにはアジリティコントロール、アウディはドライブセレクトシステムが設定された。BMWのそれはエレクトロニックダンパーコントロール、ニッサンGT-Rのそれはビルシュタインダンプトロニックという。いずれにも共通しているのはノーマル、コーンフォート、スポーツというように、複数の減衰力をドライバーが任意に選択でき、そのモード中で、自動的に最適な減衰力に調整されることだ。

マグネチックライド
 GMが開発し、最初にキャデラックSTSに採用したのがマグネティック・ライド・コントロール。TEMSに代表される減衰力調整システムは、オイル通路の面積を可変することによって行われるが、このシステムには磁気流体感応技術が使われている。
 ショックアブソーバー内には鉄粒子を含んだ化学合成の炭化水素系流体が封入され、システムが作動すると、鉄粒子が磁化して繊維状に整列する。これによって流体の粘性が変化する。ピストン内部にある電磁コイルに送る電流を制御することによって、流体の粘性を連続的に変化させ、路面状況や運転状況に合わせて、幅広い範囲で減衰力の調整が可能になる。
 走行状態のセンシングはホイールとボディに付けられたセンサーによって1/1000秒単位という、短い周期で行われるため、優れたレスポンスが得られ、乗り心地やハンドリングを向上させるだけでなく、急加速、急ブレーキ時にも減衰力を調整して車高を安定させるという働きをする。
 サスペンションそのものを電磁化する試みも行われている。音響メーカーのボーズが取り組んだもので、フロントはストラット、リヤはマルチリンク。ここまでは普通のサスペンションの構成だが、スプリングとショックアブソーバーの代わりに直立したリニアモーター(電磁式アクチュエーター)がセットされ、電磁力で走行中の車体を支え、姿勢を制御するというものだ。
 これまで開発されたアクティブサスペンションのほとんどが油圧式や空圧式だったが、それらに比べ、電磁力は反応速度が速い。速いストローク、遅いストローク、大きなストローク、小さいストロークに瞬時に対応できるというのが大きな特徴だ。直進走行中はソフトな乗り心地、コーナリングではロールを抑える、発進ではスクゥォートを抑えるといったアクティブコントロールも可能になる。
 電磁式は、省エネルギーでもメリットを発揮する。油圧式や空圧式はコンプレッサー駆動のためにエンジンパワーを少なからず消費するが、これは電力消費のみならず、サスペンションが押し上げられる時は回生発電まで行うのだ。
 いずれも2004年に現れたもので、磁気と電磁を応用する2つの新しいテクノロジーは、サスペンション技術のブレークスルーでもあったが、マグネチックライドはGMの他にアウディの一部車種に用いられているだけである。

油圧サスペンション
 かつては高級車に採用されていた油圧サスペンションだが、ショックアブソーバーの電子制御の進化によって、あらゆる走行状況で最適な姿勢や乗り心地が得られるようになると姿を消していった。最後までこだわったシトロエンは、先代のC5に搭載していた。
 シトロエンのそれは厳密には電子制御油圧アクティブサスペンションではなく、サスペンションシリンダーに高圧フルードをポンプによって供給する。タイヤの位置変化はシリンダー・フルード・アキュムレーターへと伝えられ、アキュムレーター内の窒素ガスがスプリングの役割を果たし、アキュムレーター内への狭いオイル通路がショックアブソーバーの役割を担っている。
 アキュムレーターは各輪にセットされる他、メイン、サブが設けられ、サブへの回路を切り替えることによって、ソフトとハードの2種の減衰力が選択できる。またサスペンションシリンダーへのフルード供給量を増加することで車高の調整も可能で、低、ノーマル、高の3段階に設定できる。複雑なシステムのように思われがちなシトロエンのハイドロニューマチックサスペンションだが、意外にシンプルな構成だ。

エアサスペンション
 スプリングの代わりにエアチャンバーを用いたのがエアサスペンション。冒頭で、4輪への導入としては国産初のスバル・レオーネについて触れた。レオーネのそれはチャンバーのエア圧をリアルタイムで制御し、常に車高を一定に保ち、コーナリング時や制動、加速時でも車体の姿勢を制御し、優れた走行安定性を発揮させた。しかし、その後に続いたエアサスペンションの多くは複雑なエア圧の制御は行わず、単にスプリングの代わりとしているものが多い。その理由はショックアブソーバーの進化にある。TEMSのように、電子制御で減衰力を何段階にも調整できるようになると、エア圧に頼らず、ロールやノーズダイブ、スクォートなどの姿勢変化を精密に制御できるからだ。
 エアサスペンションは、クラウンを始めシーマ、セドリックなどの上級セダンやランドクルーザー、レンジローバーなどの重量級の4WDに採用されてきたが、あくまで少数派であって、近年でもマジェスタ、レクサス、ジャガー、メルセデスSクラス、VWトゥアレグなど、限られた車種に採用されていたにすぎない。
 エアチャンバー、伸縮するダイアフラム、エアコンプレッサー、圧縮空気の水分を吸収するドライヤー、吸/排ソレノイドバルブから構成され、制御系としてハイトコントロールセンサー、Gセンサー、ステアリングセンサー、サスペンションコントロールアクチュエーターなとで構成されている。
 アクティブサスペンションはあくまでエア圧や油圧の制御でサスペンションのストロークや硬さ、柔らかさを調整するが、トヨタの場合、エアサスペンションと組み合わされるショックアブソーバーはTEMS、あるいはAVSと同じ構造で、主に減衰力の制御によって姿勢の安定や乗り心地の向上を図っている。このため、アクティブサスペンションではなく、セミアクティブサスペンションと呼称されている。

VWトゥアレグのエアサスペンション。スプリングの代わりにエアチャンバーを用いるということでは、どのメーカーも構造は共通している。

マジェスタに採用されたエアサスペンションの構造。エアチャンバー、伸縮するダイアフラム、9段階に減衰力を調整できる単筒式のショックアブソーバーで構成される。

マジェスタに採用されたエアサスペンション。スプリングの代わりにエアチャンバーを持つが、基本レイアウトはハイマウントアッパーアーム式のダブルウィッシュボーン。

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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