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故障・修理
更新日:2019.10.01 / 掲載日:2019.10.01

空冷式冷却装置のメリット/デメリット

 エンジンの冷却装置には、おもに空冷式と水冷式とがある。かつては、空冷式冷却装置を用いた空冷エンジンを採用する例もあったが、現在の主流は水冷式冷却装置を用いた水冷エンジンとなっている。 今回は、空冷エンジンのメリット・デメリットから、空冷式冷却装置が廃れてしまった理由を見ていくことにする。

 かつてのホンダ車の設計思想のユニークさは、高回転時エンジンもさることながら、冷却系統にもあったといえよう。たとえば、ホンダ1300の発表会の席上で、本田前社長は、次のようにいい切った。「今日、大勢を占めている水冷エンジン車にしても、最終的にはラジエーターを空気で冷やすわけだ。それなら、いっそのこと空気だけでエンジンを冷やす空冷エンジンのほうが優れているはずだ。また、水冷エンジンは水がなくなると1メートルも走れないが、空冷であれば、なんの心配もなく砂漠を走破することもできる」だが、その後の展開をみると、頑固な空冷主義者であったはずの本田宗一郎氏も、本田車を次々と水冷化していった。たとえば、ホンダ145、シビックといったものがその一例である。

■空冷式冷却装置の概要

 さて、空冷エンジンとは、その名が示すとおり、エンジンを直接的に空気で冷却するタイプで、シリンダー・ヘッドやシリンダー・ブロックのまわりに冷却効果を上げるためのフィンが鋳込まれている。
 このフィンは、空気に接する表面積を広くとるためのもので、ラジエーターのコルゲート・フィンなどと同じ役目を果たしている。 シリンダーやシリンダーヘッドに加えられた熱は、この冷却フィンに伝わり、フィンの表面を流れる空気によって大気中に放散されるわけだ。
 フィンの表面を流れる空気には、クーリング・ファンによって起こされるものと走行風によるものとがある。オートバイの場合は、もっぱら走行風を利用し、4輪車では一般的にクーリング・ファンによる強制空冷が採用されている。また、冷却効果をアップさせるためにフィンのまわりをシュラウド(通風板)でおおったクルマが多い。これは空気の流れを規制してフィン部を流れる空気の流速を速めるための工夫である。

空冷式冷却装置を用いたエンジンのメリット


 空冷エンジンは、水冷エンジンと比べると構造がシンプルで、しかも冷却水の補充というメインティナンス上のわずらわしさもなく、暖機運転の時間を短縮できるというメリットをもっている。また水漏れによるエンジン・トラブルといったことも起こらないので、体質的には水冷エンジンよりも頑丈であるといえる。

空冷式冷却装置を用いたエンジンのデメリット

しかし、騒音の点では非常に不利だ。たとえば、水冷エンジンのようにウォーター・ジャケット内の水によるノイズの減衰作用がないので、どうしてもエンジン音が高くなってしまう。また冷却効率を良くするためにフィンの長さを伸ばし過ぎると、フィンの共振音を防ぎ切れないという矛盾ももっている。
さらに、シリンダーの数が多くなると空冷方式では均一な冷却ができないので、2気筒から4気筒までの小型エンジンにしか使えない。 つまり、水冷方式を採用すれば、どんなに気筒数が多いエンジンでも、冷却水をうまく循環させてやれば、効率的かつ均一な冷却効果が期待できるが、空冷エンジンでは、それが困難なわけだ。
また空冷エンジンは、水冷エンジンよりも高い温度で作動するためバルブやピストンなどのクリアランス(すき間)を大き目にとって、オイルが充分にいきわたるようにしなければならない。公害対策面では、水冷でも空冷でも大差はないようだ。ただし、一般的に水冷エンジンよりも圧縮比が低いので、燃焼ガスの温度も低くNOxの発生量は水冷エンジンよりも少なくなるようだ。

空冷エンジンの一変種 一体式二重空冷方式(DDAC)とは?

 空冷エンジンの一変種に、ホンダ1300が採用していた一体式二重空冷方式(DDAC)があった。二重空冷方式とは、高温が加えられるシリンダーとシリンダー・ヘッドに、ちょうどウォーター・ジャケットと似たような風洞をえぐり、この風洞に高速風を流してエンジンを冷却するタイプのことだ。
 もちろん、シリンダー・ブロックやヘッドの外壁には他の空冷エンジンと同じようなフィンが鋳造されており、走行風によって冷却される。つまり、二重空冷とは内と外の両面から同時にエンジンを冷却することを意味している。この二重空冷方式の目的は、エンジン・ノイズの減少にあった。つまり、冷却風洞内の空気に騒音の減衰効果をもたせてエンジン内に発生する騒音をいくぶんでもシャット・アウトすることを狙ったものだ。

 つぎに、二重空冷方式の冷却風の流れを追ってみよう。
 1. まず、ラジエーター・グリルの右側にある空気取り入れ口から冷たい冷却風がエア・ダクト内に入る。
 2. エア・ダクトに入った冷却風は大型の遠心式ファンで加圧され高速風になる。
 3. 高速風がファン・ケース内のエア・ダクトに入る。
 4. エア・ダクトからシリンダーのエキゾースト側とインテーク側に入った高速風は、シリンダーの内壁を冷却してシリンダーの上部から排出される。またシリンダー・ヘッドの風洞に入り燃焼室の上部を冷却し終えた温風は、インテーク・マニホールドのまわりの風洞に入って吸入混合気を暖めたのち、ヒーターへと抜けるわけだ。

公害規制に破れた一体式二重空冷方式(DDAC)


 本田が、このDDAC方式に見切りをつけて水冷化に踏み切った理由は、公害対策にあったといわれる。HCを減らすには、混合気を温水や温風で温めて気化を促進し完全燃焼させなければならない。
 ところが、DDACエンジンのように混合気を温風(冷却風)で暖めるタイプでは、どうしてもヒート・コントロールがうまくゆかないので、混合気をあまり薄くできない。その結果、水冷エンジンよりもHCの発生量が多くなるわけだ。その点、シビックなどの温水加熱方式(吸気温度自動調整装置)は、ヒート・コントロールが確実なので、混合気を薄くセットできるわけだ。

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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