故障・修理
更新日:2020.10.19 / 掲載日:2020.10.19

車のスタビライザーとは?効果と仕組み、交換方法も解説!

車のスタビライザーとは?効果と仕組み、交換方法も解説!

車のスタビライザーとは、簡単に説明すると「車の乗り心地を維持したまま左右の傾きを解消するパーツ」のことをいいます。
しかし、「もっと詳しく知りたい」「もっとわかりやすく教えてほしい」と、感じる方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、車のスタビライザーを効果・仕組み・交換方法に分けて、一つずつ順番にご紹介していきます。
「車のスタビライザーは本当に必要なのか」と疑問に感じている方も、ぜひ参考にしてみてください。

車のスタビライザーとは?

「車のスタビライザーとは何か?」という疑問を、言葉の意味と効果の2つの側面から解説していきます。

スタビライザーの意味

スタビライザーは英語に変換すると「stabilizer」と表し、和訳すると「安定させるもの」という意味があります。車だけではなく、以下のような身近な場所でも、スタビライザーという言葉は使われています。

・スマートフォンやカメラを安定させる機材(別名:ジンバル)
・航空機の飛行を安定させる装置(安定翼)
・船舶が航行を安定させる横揺れ抑制装置

本体(スマートフォン・カメラ・航空機・船舶など)の安定を確保するために取り付けている機材・装置・部品などのことを、スタビライザーと呼んでいます。

上記の流れから読み解くと、車のスタビライザーも「車体の何かを安定させるもの」として使われていると予想できます。
では、車のスタビライザーは車体の何を安定させているのでしょうか?

その答えは、車体の傾き(ロール)です。
車のスタビライザーとは、サスペンションとサスペンションの間をつなぐ棒状のパーツを指しています。

車のスタビライザーが担う具体的な役割や効果について、以下で確認していきましょう。

スタビライザーの効果

車はカーブを曲がると、左右どちらかにロールが生じ、車体の安定性が失われます。 カーブに限らず、横風を受けた場合も風圧で車が傾き、安定性を失ってしまうリスクがあります。

車の安定性を向上させるためには、ロールの問題を解消しなければなりません。
解決策の一つとして、サスペンションを固めるという案も出てくるのですが、乗り心地を考えると得策ではありません。

そもそもサスペンションは、車体と車輪をつなぐだけではなく、路面からの衝撃・振動を吸収し、乗り心地の良さを支える役割も担っています。
もし仮にサスペンションを固めてロールを解消したとしても、車の縦揺れが激しくなり乗り心地は悪化していくでしょう。

そこで登場するのが、車のスタビライザーです。
スタビライザーには、サスペンションを固めることなく、乗り心地を維持したままロール問題を解消する効果があります。

車のスタビライザーはカーブを曲がるときだけではなく、高速道路上での安定したレーンチェンジ(車線変更)にも役立っています。
安定性と乗り心地の両者を確保するなら、車のスタビライザーは安易には無視できないパーツだといえます。

スタビライザーの仕組みは?

スタビライザーの仕組みは?

「車のスタビライザーはロールを抑制する」とお伝えしましたが、どのような仕組みで効果を発揮しているのでしょうか?
スタビライザーの形状や材質、パーツ内の名称をご紹介します。

スタビライザーの構造

車のスタビライザーは、コの字型・Uの字型の金属製バネパイプで、左右のサスペンションを連結する形で取り付けられています。
金属製のパイプと聞くと硬くて頑丈なイメージですが、スタビライザーはねじれやすいという特徴があります。

では、左右で独立して動くサスペンションとスタビライザーの関係性を見ていていきましょう。

サスペンションは、左右が独立していても直進状態であれば規則的な動きをします。そのため、スタビライザーがねじれやすい材質でも走行に支障はありません。

しかし、カーブを曲がるときは、左右のサスペンションが不規則な動きとなり、どちらかが大きく上下すると同時にロール・横揺れが発生します。

スタビライザーは左右のサスペンションを連結するように装着されているため、片方のサスペンションが大きく上下に動いた力を使って、もう一方のサスペンションも連動させるような働きをします。これにより、ロール・横揺れを抑制できます。

さらに詳しく見ていくと、以下のようになります。

1. サスペンションが大きく上下する
2. スタビライザーがねじれる
3. スタビライザーがもとの形状に戻ろうとする
4. 3.による反動によってロールを抑制する

なぜスタビライザーがねじれやすい性質を持っているのかが、おわかり頂けたのではないでしょうか。

スタビライザーのポイントは、「左右方向(ロール方向)にしか効果がない」という点です。サスペンションを固めることでもロールは抑制できますが、それだと縦方向(ピッチング方向)にも作用してしまいます。
その点、スタビライザーは左右にのみ働くので、直進時の乗り心地を犠牲にすることなくカーブでの安定性のみを獲得することが可能なのです。

スタビライザーのロッド・リンク・ブッシュについて

スタビライザーの本体は大きく3つのパーツに区別でき、それぞれに名称があります。
本記事の後半ではスタビライザーの交換方法も解説しているので、何がどの部分を指しているのか判別できるよう、事前に確認しておきましょう。

スタビライザーロッド(バー)

・サスペンションに接続している部分
・ロールの抑制をしている、ねじれが生じる場所
・アンチロールバー、スウェイバー、スタビバーなど、別の呼び方もある

スタビライザーリンク

・サスペンションとスタビライザーをつなぐ、ロッドの部分
・両端がボールジョイントになっていて、内部にはグリスが満たされている
・グリスの漏れを防ぐためにブーツで覆われているが、破れることがある

スタビライザーブッシュ

・スタビライザーを車体に固定するゴム部品
・経年劣化でひび割れする可能性もある

スタビライザーはいらない?

スタビライザーはいらない?

車体のロールを防ぐスタビライザーですが、装着は義務化されていないため、未装着で走行していても違反行為には該当しません。
そのため、スタビライザーを装着するか否かは、運転する人によって変わってきます。

しかし、初めてスタビライザーの存在を知った人からすれば、「必要なのか、不必要なのか」の判断に迷うでしょう。
スタビライザーを装着するうえでどのようなデメリットを感じるのか、判断材料の一つとして以下の情報を参考にしてみてください。

スタビライザーのデメリット

車のスタビライザーは、悪路の走行時にデメリットが目立つといわれています。

カーブを曲がる際の安定性は優れていますが、悪路になるとスタビライザーの反動(バネ作用)が大きくなり、サスペンションの衝撃吸収機能が低下する可能性があるためです。

もう少しわかりやすくいうと、「サスペンションがなるべく動いたほうが好ましい状況」には適さないというイメージです。悪路での凹凸をいなす能力が低下するので、路面追従性が悪くなり、走破性が低下してしまいます。

また、振り子のような揺れ(ワンダリング)が生じやすくなるため、走破性はもちろん乗り心地にも悪影響をおよぼすリスクがあります。

スタビライザーは取り外すことも可能

スタビライザーは装着していなくても法に触れるリスクがないため、車検も未装着の状態で問題なく通せます。

実際に安価なグレード車だと、スタビライザーがもともと付いていないタイプも存在しています。
もし、スタビライザーを取り付けてみて「不要だな」と感じるのであれば、いつでも好きなタイミングで外してしまっても大丈夫です。

ただし、スタビライザーを取り外す際は「スタビライザーリンクも含めて全撤去できているか」を、十分に確認しましょう。スタビライザーを外せていても、スタビライザーリンクが残っていれば車検に通せません。

また、以下のような点が確認できる場合は、同じく車検に通せませんので、スタビライザーを付けたまま車検に出す場合も注意が必要です。

・スタビライザーのグリス漏れ
・スタビライザーのブーツ破れ
・スタビライザーのゴム部品のひび割れ

上記は思わぬトラブルに発展しやすい状態なので、車検時に限らず、異変がないか定期的に確認するのが望ましいでしょう。

スタビライザーの交換方法

スタビライザーの交換方法

スタビライザーが劣化すると、交換作業が必要です。業者に依頼するのが一番手っ取り早い方法ですが、コストを考えるとDIYでの交換方法も気になるのではないでしょうか?

スタビライザーには性能をより高める強化品も販売されているので、ぜひ交換作業を機におすすめアイテムも確認してみてください。

スタビライザーには強化品がある

純正品よりもねじれに対する強度を高めた、強化スタビライザーと呼ばれるアフターパーツが販売されています。
純正品と比べて乗り心地への影響が少なく、車体のロール抑制力にも優れているのが魅力です。

スタビライザーは、セッティング方法によって以下のような修正にも対応できます。

アンダーステアの修正

一定のハンドル角で旋回・加速すると、車がコーナーの外側に膨らんでしまう状態(アンダーステア)が気になる場合は、フロントのスタビライザーを弱く、リヤのスタビライザーを強くすると解消できます。

オーバーステアの修正

一定のハンドル角で旋回・加速すると、車がコーナーの内側に切り込んでしまう状態(オーバーステア)が気になる場合は、気になる状態に合わせて以下のように調整すると解消できます。

・進入時のオーバーステアが気になる場合は、フロントのスタビライザーを強くする
・立ち上がりのオーバーステアが気になる場合は、リヤのスタビライザーを強くする

初期レスポンスの向上

スタビライザーのレスポンスが気になる場合は、リヤのスタビライザーを強くすると向上が見込めます。

プッシュアンダーの修正

前輪が曲がろうとしているのに、後輪から押し出す力が強く、外側に膨らんでしまう状態(プッシュアンダー)が気になる場合は、フロントとリヤのスタビライザーを弱くすると解消できます。

他にも、強化ショックアブソーバーやローダウンスプリングなど、組み合わせるアイテムによって異なる効果を得られるのもポイントです。

スタビライザーの交換方法について

スタビライザーに明確な交換時期はありませんが、本体の劣化(ブーツ破れ・ゴム部品のひび割れ、異音など)や車体の傾き(ロール)に違和感がある場合は、早めに対応するのがおすすめです。

スタビライザーの部品自体は比較的シンプルなので、セルフ交換でも対応できます。
しかし、車種によって交換の難易度が変わってくるので、スタビライザー交換が自分でもできるのか、事前に流れを把握しておくとよいでしょう。

具体的なスタビライザーの交換方法は以下のとおりです。

1. 車体をジャッキで持ち上げてタイヤを外す
2. スタビライザーリンクとスタビライザーブッシュを取り外す
3. スタビライザー本体を外す
4. 取り外した逆手順でスタビライザーを装着する

「意外と簡単に終えられそう」と感じる方も多いと思いますが、リヤ・フロント両方の交換となると、作業終了まで数時間以上は必要だと考えておきましょう。

セルフ交換では、スタビライザー本体に加えて、工具をそろえる手間と費用が発生します。
もし、交換作業に不安を感じるのなら、カー用品店やチューニングショップなどの専門店へ依頼するのがおすすめです。

業者に交換依頼する場合は、一般的に工賃も含めてスタビライザー1本(リヤorフロント)で20,000円以上、2本(リヤ&フロント)で40,000円 以上が相場になってきます。
なお、交換する際にクロスメンバーの上側をスタビライザーが通っている場合は、クロスメンバーを取り外す必要があるのでさらに工賃が高くなる可能性があります。

まとめ

スタビライザーは、車体の傾き(ロール)を抑制させる頼もしいパーツです。
ねじれやすい鉄パイプを装着することで、コーナリング中に起こるサスペンションの大きな上下運動を抑制できます。

コーナリングの不安定感を心配している方は、ぜひ注目してほしいパーツです。
ただし、道の状態が悪ければ、スタビライザーが原因で乗り心地に影響が出る可能性もあります。

車検に通る範囲内であれば、必要に応じて取り外すことも可能ですので、ぜひ本記事を参考にスタビライザーの装着・交換を検討してみてください。

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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