故障・修理
更新日:2021.03.24 / 掲載日:2021.03.24
HONDA S600のエンジン全バラ&OH! その5
エンジンオイルの交換を怠ったワケではないのに、エンジン分解すると真っ黒になって出てくるクランクシャフトがある。この汚れの原因は、おもにブローバイガスである。爆発燃焼膨張の際にエンジン内に入った燃焼ガス=ブローバイガスがパーツを真っ黒にするのだ。
内燃機加工の依頼と同時進行で徹底チェックしたいのが、エンジンを構成する各部品のコンディションである。旧いモデルでしかも現存車が少ないので、スペア部品が無い物は当然ながら部品修理を行わなくてはいけない。
冷却水の管理不足で冬場に冷却水が凍結。その影響で冷却水の膨張でウォータージャケットを割ってしまう例も数多い。このS600初期エンジンは、インテイク側ウォータージャケットカバーにクラックが。レッドチェックで発覚した。
セルフスターターモーターの不良以上に、スターターワンウェイユニットにダメージが多いAS-E系エンジン。セルモーターはブラシ残量の点検だけではなく、分解清掃とブラシホルダー内でブラシがスムーズに作動するか確認しよう。
アッパークランクケースにトロコイド式のオイルポンプやパスボディやストレーナーを組み込むが、その駆動方法は何と排気側カムシャフトに刻まれたウォームギヤによって行われる。
このS600初期のAS285Eエンジンには、ブラックペイントされた浅い(容量が少ない)オイルパンが組み込まれていた。このタイプはS500と同様、S600でも初期生産モデルの特徴である。ドレンプラグの位置もS600後期以降とは異なっている。
水冷式を採用したホンダ初のシリーズモデルということもあり、ウォータージャケットが多いシリンダーヘッドには数多くのウォータージャケットカバーや加工後に栓で封じ込められた箇所がある。冷却水関連は要注意!!
シリンダーヘッドの洗浄点検時には、オイル通路への圧縮エアー吹きと同時に、ウォータージャケットへの封じ栓に要注意。メッキされているはずの栓が変色やサビているときには冷却水漏れを疑おう。そんなときには金属充填剤のデプコンで栓の外周を埋めよう。
インナーシムでタペット調整する方法は、レーシングマシンの技術そのもの。このタペットは筒部分がアルミ合金製で摩耗しやすい。激しく摩耗するとメカノイズとなってアイドリング時からカタカタ音が気になってしまう。
インテイクカムシャフトのエンドに組み込まれる点火系のディストリビューター。小さな部品でも完全分解し、摺り合わせをしながら作動性を良くしよう。進角ガバナーの作動性が低下するとエンジンの吹けが悪くなる。
まるでCB72のようなスタータークラッチを採用したAS-E系エンジン。バッテリーコンディションを無視してセルを回すと、スターターが空振りしてロックアップ摺動部分にダメージを与えてしまう。時代が進むにつれ大型ローラーを採用し、最後のS800ではオイル湿式ワンウェイになった。
カバー類の組み付け時やクランクケースにウォーターポンプカバーなどを組み込む際の位置決めとしてダウェルピンが使われているが、サビでボロボロになっているのがほとんど。ピン類は削り出しで新品部品を自作するそうだ。
初期エンジンのカムチェーンテンショナーは、固定スリーブがテンショナーボディに食い込んで残ってしまう例が多い。M7P1.00のボルトジャッキを自作し、同タップでネジを切って引き上げると良いそうだ。引き抜いたスリーブとボルトはユニクロメッキで仕上げられた。