故障・修理
更新日:2021.06.10 / 掲載日:2021.06.10

「突然の始動不良」KV型スバルサンバーを救え!

 キャブレターとは空気とガソリンを混ぜてエンジンに送り込む工程を人が感じながら調整するある意味繊細なもの。アクセルコントロールも、その微妙なさじ加減をいつの頃からか電子制御に任せてしまった。旧車がもてはやされる時代だが、鉄の塊のご機嫌伺いをしながら走らせるという「快感」?「ドM」?が必要なのだ。クルマとオハナシしながらアーでもないコーでもないの日々を楽しまないと。

季節の変わり目、ある日突然始動不良になった

 もう自粛も飽きた!と言える位の一年が経過したが、その中でもKV3は毎日使われ、前回で電気周りもリフレッシュして元気満タンだったのだが、ある日突然始動不良になってしまった。いつも通り始動の儀式。アクセルをカパッと踏み込んで離しセルを回すという、キャブ車らしい儀式だが、その日に限っては全く初爆がない。カブらせたかな?と思い、ゆっくりアクセル全開のままセルを回したが、これまた初爆がこないのだ。しばらく全開のままセルを回したが、やはりダメ。

 仕方なくプラグを1本抜いてみた。びっくりするほど真っ黒である。抜いたプラグホールの匂いを嗅いでみると、ガソリン臭はちゃんとある。燃焼室内にガスは来ていると判断して、プラグを全部抜いてみた。

 いやー真っ黒クロスケだわ!

 この車両は毎日片道4kmほど市街地を走っての往復を繰り返しているが、制限速度40km/h以上の道の方が少なく、ほとんどが路地なので、極低回転のみの走行なのだ。CVTなのもあり、回転がそれほど上がるわけでもなく、スルスルと走っているだけなので、車両テスト時に決めた「高速道路もラクラク仕様」の点火時期も災いしていると思われる。そして冬から春への気温上昇は空気密度を低下させるので、電子燃料制御を持たないキャブ車はツライ時期でもあるのだ。

 荒技としてはプラグを全て抜いて、アクセルオフでセルをしばらく回して、シリンダー内部の混合気を飛ばし、プラグは外した状態の無圧縮で火花を飛ばさせるという手もある。

 とりあえずプラグを抜いたので、昔ならのサンドペーパーで電極を磨くところだが、電極に貴金属が使われるようになってからは洗浄しか手がない。パーツクリーナーと歯ブラシでスラッジを落として、ガスコンロで乾燥。とりあえずその間にオートチョークやアイドルアップなどの装置を確認して問題なければプラグを付けてエンジン始動となる。

 今回は市街地走行に合わせて、点火時期を適正値に戻してみた。これでしばらくプラグチェックを行って、まだカブるようであれば点火時期をさらに遅くするか、なんらかの方法で吸入空気を増大させるなどの工夫が必要。旧車は大変だっ!

ガソリン臭がするので燃料は来ている
始動不能からプラグを1本抜いてホールから出る匂いを嗅いでみる。ガソリン臭がしたからちゃんと燃料は来ていると判断できる。

真っ黒!
外したプラグを確認すると、見事に真っ黒だった。貴金属系プラグは自己洗浄能力が高いが、ここまで黒いと着火しないだろう。

低回転でのカブリが顕著に
これは無理やり始動させた後に外したものだが、外周が真っ黒になっている。低回転でのカブリが顕著な証拠だ。特に右端は真っ黒。

プラグ先端は貴金属で研磨ができないため、パーツクリーナーをかけながらできるだけ奥まで歯ブラシで優しくスラッジを落とす。

洗浄剤を乾燥させる
洗浄が終わったら、しっかりとガスレンジで炙ってパーツクリーナーを乾燥させる。このくらいの高温は燃焼室内部より優しい。

カブリの原因は吸入経路全てに関係がある。エアクリーナーの詰まりやキャブレター、アイドルアップ、チョークなどもチェック。

洗浄完了!
比較すればよくわかる洗浄後のプラグ。熱価は純正5番なので、できれば真ん中2本ぐらいの美しい?焼け方が望ましいのだが。

シリンダーヘッドはアルミ。プラグは鉄ということで熱による固着防止のために、少量の銅系グリスを使用。今回はワコーズのTHC。

スキ間確認
気温によってファーストアイドルを決めるワックスペレットだが、完全暖気後でアクセルを押していたら、燃料が濃い証拠。

ワックスペレット
アイドルアップダイヤフラム
燃料が濃くなる原因はエアコンなどのアイドルアップダイヤフラムなども影響する。完全暖気後でどれも影響がないことを確認。

もはや過去の遺物になりつつあるタイミングライト。最近はデジタル式でタコメーター付きが便利。サンバーの場合は別電源を用意。

サンバーのクランクプーリーにある点火タイミング確認場所はタイミングベルトカバーに三角の突起がある場所だ。暗いと見にくい。

わずかに早目
4本線の下から2番目が適正値だが、それを超える(白線が見える)ところまで点火時期を早めておいたのが低回転でカブる原因に。

適正値
デスビの2本固定ネジを緩めて、わずかに回すと適正値に戻すことができる。これでカブリが減少するか解消してくれることを望む。

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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